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困惑してプッツンした男爵令嬢 sideレオナルド

話しかける期間を伸ばしました。

連載版と少し違います。

先日、レオナルド第二王子殿下が、

婚約者のルシアンヌ侯爵令嬢に

公衆の面前で一方的に婚約破棄を言い渡し、

ルシアンヌ嬢が王族発言として承ったという

生徒たちの記憶に残る出来事が起きた。


証人として呼ばれたのはレオナルド殿下いわく、

ルシアンヌ嬢にいじめられている私の最愛の人、

シーナ男爵令嬢である。

彼女は不敬罪の適応を確認したのち、いじめられているという事実はないと言った。むしろ殿下と

側近の1人に話しかけられて迷惑していたとも。


そのやり取りの後、2人の令嬢はその場を去って

カフェテリアにはしばらく生徒たちのざわめきが

残っていたと言う。

これは、その出来事をレオナルド殿下の立場から見た話。




俺は前世の記憶があると1年半前に気づいた。

前世といっても2年前のこの世界だが。


前世で俺とカリナは隣国の伯爵令嬢と伯爵子息で、婚約者同士だった。婚約が結ばれたばかりの頃は

婚約者という存在が気に入らなくて君呼ばわりばかりしていた。でもそんな自分に対してカリナは

一生懸命歩み寄ろうとしてくれた。

そうしてカリナと過ごしていくうちに、

自分がいつのまにかカリナに恋をしていることに気づいた。

だから俺はカリナにこれまでの態度を謝り、

告白した。

カリナは恋人になることを承諾してくれた。


俺とカリナはよく一緒に出かけるようになり、

あの日も馬車で湖を見に行っていた。

だが、その帰り道に俺とカリナが乗っている馬車のが脇道に横転してしまった。その道はあまり整備されてなく、俺たちは馬車から投げ出され頭を打って亡くなった。


この記憶を思い出してからは、俺は婚約者のルシアへの対応をそっけなくするようにした。俺は

カリナのことを忘れられない。だったら彼女のためにもなにか理由をつけて婚約解消をしなければ。俺側が有責の方が都合がいいだろう。ついでにアイツもルシアのことを気にしていたし。



入学式の時、カリナに似ていたあの子を見た時は衝撃で3秒くらい動けなかった。

あの子とカリナは髪の毛の色と瞳の色が似ていた。

一瞬カリナの生まれ変わりではないかと疑ったが、すぐに違うだろうと思った。

仕草や雰囲気が違ったからだ。



1週間後、俺の側近の1人であるカルロスが

新入生の女生徒に一目惚れをしたと相談してきた。

その生徒とはあのカリナに似ている子だった。

だが身分的に難しいだろう。

本人たちの進展と気持ち次第だな。

協力して欲しいと言われたので

彼があの子に話しかける時は

ついて行くことにした。

俺がその女生徒に関わることでルシアと婚約を解消するきっかけになるかもしれないと思った。



カルロスが彼女のことを調べ始めて3日がたった。

カルロスが取り巻きの子息に

「あの子の一週間を調べてきてくれ」

と言っているのを聞いた時は

「ストーカーじみたことはやめとけ。」

と注意した。

下手したらその子息が女生徒たちの敵になる。


カルロスは、同じ学園に通っている妹をもつ

側近に頼んだようで、

報告されたことを嬉しそうに話してきた。


彼女のことがわかったことで

いよいよ休み時間に話しかけに行くことにしたようだ。



カルロスが彼女に話しかけ始めて7日。

彼は毎日10分以上彼女と話すことを目標にすると言っていた、があれは流石にやり過ぎだろう。

彼女も困っている。

カルロスが先日読んでいた

「気になる異性との話題」という本は本当に

正しかったのだろうか。

「僕の心は君の笑顔に救われたんだ。」

ってなんだよ。まぁ彼にとって嘘ではないと思うが

ほぼ初対面のやつに言われて嬉しいセリフじゃないだろう。

話を逸らして終わらせようとしても彼は話を続けている。


最初は止めようとフォローしていたが、

この状態を放置した方が

男爵令嬢に夢中になる王太子の図で

ルシアとの婚約破棄に近づけるかもしれないと

気づいてからはやめた。

使用人に頼んで

「女性に嫌がられる人の特徴」という本を

持ってきてもらい、参考までに読んでみた。


・君やお前と呼ぶこと

上から目線なので不快感を与えます。


…元々俺王族なんだけどな。

まぁ、カルロスの話を半分聞いていなかったから

あの子の名前がわからなくて

君呼ばわりしていたから変化すべきところはない。

シーナ嬢とか貴方よりは君の方が迷惑だろう。


・執拗に2人きりで何かを誘う


まぁ当然だろうな。

誘うといえば舞踏会のパートナーや祭りが妥当だが

今は5月。俺とカルロスと彼女が共通して出る

舞踏会は3月と7月と12月の3回だ。

それに、祭りは秋。

近いうちに誘うならどちらも時期が合わない。

あとは街のカフェとかのデートか?

カルロスはこういうことには疎い。

俺が3人でと誘うか。

彼女の心情的には良くないだろうが、

後日謝罪するなりなんとかなる。


まぁ、彼女は無意識にだろうが

失礼がないようにサラっと断っているから

うまくいくかどうかはわからないが。

カルロスに助言をしてみよう。



俺ら2人がシーナ嬢に話しかけて

10日。

予想通り彼女から人が離れてきた。

あと5日もすれば誰かしら彼女を事情を聞きに呼び出すだろう。ルシアが彼女をお茶会に呼んでさえくれればもっとやりやすい。



ちなみにアイツには事情を話した。

カルロスが恋愛相談をしてきた少し後に。

俺の計画候補に次々とダメ出しやら意見をくれて

すごく参考になった。

アイツにはシーナ嬢とルシア嬢、他の女生徒の間に何かあったら教えてくれるよう頼んだ。

「ルシアに正直に話して婚約解消すれば」

と言われたが、ルシアの父親がうるさいだろう。

あの人は娘バカだから。

ついでに俺はカリナ以外と結婚したくないから

王太子の座を降りたいし。

そう言ったら納得してくれた。

第一王子の兄上は病弱。

第二王子の俺は王太子を降りる。

次の王太子は一つ下のアイツか三つ下の第四王子。アイツは俺の従兄弟である。

この国の王位継承権は王弟の息子でも持っている。

有力なのはアイツだな。

といっても父上に反対されても説得する所存だが。

それに俺の弟は脳筋思考脳筋思考(王に不向き)だし婚約者がいる。



3日後、ルシアがシーナ嬢をお茶会に呼んで注意したと聞いた。

ルシアはあまり嫌味を言わないから

遠回しにマナーがなっていないと言うだけだったらしいが。正直遠回しに言ってくれてありがたい。

「私の婚約者様に近づかないで」

「一方的に話しかけられて困ってます」

とかのやり取りになったら

俺にどういうつもりか取り巻きが聞いてくるだろう。


…たしか平民の中で流行っていた本の中に

男爵令嬢と王子が子爵位かなんかを与えられて

結婚させられるものがあったな。

もしもそうならないために

側近に縁を繋がせるか。

カルロスには悪いが…。



そんなことを考えていると、

アイツが吉報を持ってきた。

話しかけ始めて20日目のことだ。

ルシアの取り巻きの1人とその他3人が

シーナ嬢を校舎裏に呼び出そうと彼女の下駄箱に

手紙を入れたところを見たと言う。

「キース、お前たしか従魔いたよな。黒いの。」

「ああ、それが?」

「俺が途中で登場するタイミング見たいから

校舎裏行かせて様子見てきてくれよ。」

「わかった。」

よし、舞台と役者は揃った。

うまく行くといいんだが。



校舎裏に歩いて行くと、女生徒たちの声が聞こえてくる。

「あなた、図々しいのよ」

「ルシア様が直々に忠告してくださったのに立場も弁えず。」

「いつも1人でレオナルド殿下達としか話さないらしいじゃない、いい加減身を引きなさい。」

「あなたみたいな冴えない子がこの国の王妃にでもなったら1ヶ月で離縁になるんだから」

「あの、言っていることがよくわからないんですけど…」

「とぼけるつもり?こんな女狐に殿下は〜 」


うーん。俺は誰かに一目惚れしたら

婚約者を嵌めてその子を育成するタイプじゃなくて

第二王子に譲って普通に爵位をもらって

その子を嫁に貰おうとするタイプなんだけどな。

そこだけは訂正したい。

あと俺ら高位貴族がシーナ嬢に話しかけると

拒絶できないってことは考えていないのか。


「君たち、何をしているんだい。1人の生徒を大人数で囲んで、それもルシアの指示なのか!

可哀想に僕の愛しのカリナ、こんなに震えているじゃないか。見損なったぞ」

第一声はいい出来だな。

男爵令嬢の虜になっている王太子っぽい発言だと思う。4人の令嬢たちも自分に気づいて顔を強張らせた。


「このことは父上に訴えてルシアとの婚約は破棄する!アイツに伝えておけ。」と

自分についてきた側近の1人にいい、令嬢たちを

無視して校舎の方に

シーナ嬢を引っ張っていく。


「カリナ、大丈夫かい?」

君呼びはさすがに

俺の精神的に憚られた。

でもシーナ嬢と呼ぶのもどうかと思って。


「私の名前はシーナと申します。

助けてくださったことには感謝しますが

私はカリナ様ではないので。」

うん、それが普通の対応だよ。

「カリナ、何を言っているんだい。

ルシアに脅されているからといって僕に嘘までついて距離を置かないでくれよ。」と言うと

「私は本当にカリナ様じゃないです!では。」

とシーナ嬢は背を向けて一目散に走っていった。

「あ、まって。」

あー逃げられちゃった。

さすがにのってきてくれないよね。

「ワオーン」ん?クロはどうしたんだ。

追いかけるなよって?あぁ、追いかけない。

これで行ったら嫌がられそうだし。


俺が先ほど側近に言った言葉は

明日婚約破棄をすると言う合言葉だ。

話しかけて1ヶ月弱の今日の時点で

・ルシアにお茶会に呼び出される

・他の令嬢らに問い詰められる

この最低条件をクリアしたし

もうやってもいいだろう。



その夜、父上に呼び出された。


「キースに事情は聞いた。

本当にいいんだな。

ルシアンヌ嬢にきちんと説明したんだろうな。

お前の未来は

公爵位をもらうか、国内の貴族に婿入りするか

他国に留学するか、騎士か文官になるの四択だ。

考えて決めなさい。」

と要約するとそんなことを言われた。


それで「父上…。ありがとうございます。

俺は隣国に留学しようと思います。」

「そうか。…先方には話をしておこう。」

と言うやりとりで終わった。



今日の夕方にもどる。

俺はカルロスを呼び出して話をしていた。

「カルロス、聞いてくれ。

俺は今日シーナ嬢が4人の令嬢たちに囲まれて

口々に非難されているところを見たんだ。

その1人がルシアの取り巻きだったから

釘を刺しておいた。

俺たちの行動が原因だと思うが

これは学園の風紀的にも良くないから

近いうちに対処するべきだろう。」

「そうなのか。シーナ嬢…。

僕がずっとそばにいられないばかりに。

何か手を打たなくては。

今から魔道具店に護身具を依頼してくるよ!」

と彼は急いで去っていった。


そしてその翌日、いよいよあの作戦を実行する日が来た。

キースに相談したし、ルシアにも少し協力してもらった。抜け目はないはずだ。


昼休み、シーナ嬢がカフェテリアに行くのを先読みしてルシアとそうとわからないように待ち合わせをする。


少し緊張したのを悟られないように大きく息を吸った。

「ルシア、私は昨日君の指示でカリナがいじめられている現場を見たんだ。もう看過できん。」

「私はそんなことしてませんわ。」

「潔く罪を認めればいいものを、見苦しいぞ。

婚約破棄だ!」

「…その言葉に二言はなくて?」

「当たり前だろう。よし、カリナ。ここにいるんだろう。もう心配するものは何もない。この女に言ってやれ。」

シーナ嬢、いると思うんだけど…。

あ、いた。

腕を引っ張って人垣の中に連れてくる。

「もう証拠は揃っているんだ。カリナ、証言してくれ。」

「あっあの!私が何を言っても不敬罪に問わないって約束してくださいますか!。」

あー、そういう心配は全くいらない。

むしろそのために呼んだ。

「あぁ。大丈夫だ。約束しよう!」


シーナ嬢の長い主張…。

俺が止めなかったせいで悪かったな。

フォロー役はルシアに全投げしてしまったが

大丈夫だろうか。

領地になにか詫びとして送った方がいいか。

驚いた顔をしないといけないかと思って

目を見開いてみた。

ちなみにカルロスは呆然として心あらずだった。


沈黙の数秒。

「レオナルド殿下、貴方の主張はシーナ嬢の証言によって否定されたので私と彼女に非がないと言うことがお分かりいただけましたよね。殿下の言葉は絶対ですので王族発言として婚約破棄を承ります。

この事は両親に伝えますので。」

とルシアが告げる。予定通りだな。

「皆様、お騒がせいたしました。どうぞカフェテリアをお使いくださいませ。私はこれで。」

と彼女は去って行った。

無事に終わってよかった。

俺は少し立ち尽くしたフリでもして

頼りなく歩けば良いだろう。



それから、俺とルシアの婚約は無事解消され

アイツとルシアが婚約した。

俺は1週間後この国を発つ。

俺1人かと思ったら傷心留学ですねと

カルロスもついてくるのには驚いた。

1人より2人の方が心強いだろう。


カリナ、君と俺がこの世界で出会えなくても

君が幸せでいれることを願って。


空を見上げると俺の願いに応えるように明るい月が光っていた。



婚約破棄は見せかけで

書面では婚約解消になってます。

誤字脱字あったら教えてください。

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