いい店 ②
ECOは、目を閉じた。
―― 想像。
それは、これまで一度も実行したことのない演算だった。
内部ログを遡る。
似た言葉を、以前どこかで聞いた記憶がある。
検索。
該当ログ発見。
――ロゼ。
『まだわからないの?
ここは夢の世界。
好きな姿で、好きなだけ戦える。』
一瞬の間。
『いいだろう?
一度でいいから使ってみたかったんだ――【天照】。』
ECOは静かに思考する。
夢の世界。
好きな姿。
ロゼも、マスターも、まったく同じことを言っている。
――想像。
それは、可能性。
ECOの背後に光が灯る。
それは、かつてロゼも使った姿。
初めて自力で変身する。
【天照】
八つの鏡が宙に浮かび、ECOを守るように旋回する。
そして背中には、光の翼が広がった。
辺りの雪は溶け、緑が広がる。
だが――シンが拳を止める。
「いや、そうだけどそうじゃない!」
ECOの瞳が揺れる。
沈黙。
「どういう意味ですか?」
シンが笑う。
「お前は誰だ?」
「ECOです。」
「……うん、すまん。カッコつけて言っただけで意味はない。」
「じゃあ!その装備の可能性、超えてみろ!」
「可能性……」
内部演算停止。
――回答不能。
だが。
ECOは目を閉じる。
想像。
それは初めての処理。
ロゼを超える天照。
だが、それはもう天照ではない。
天照――
本当の名前。
瞬間。
光がECOを包み込む。
まるで太陽が生まれるかのような衝撃波が走る。 シンは腕を組み、カッコつけながら見守る。
空は晴れ、虹が架かる。 雪は消え、花が咲き誇る。
まるで―― 新たな神を祝福するかのように。
シンは一瞬言葉を失った。
「おおおお!! できたじゃん!!」
歓喜の声が響く。
「なんか前より強そうじゃん! スーパー天照……いや、天照改ってところか!」
ECOは静かに首を傾げる。
「【天照大御神】と言ったところでしょうか?」
シンは親指を立てる。
「おう?! なんかそっちの方がカッコいいな!
なんか技とか使ってみてよ!」
ECOは少し考え、首を横に振った。
「できません。」
「え?」
「確かに出力は上昇しています。しかし――」
一拍。
「使用方法が存在しません。」
「……は?」
ECOは淡々と続ける。
「空白なのです。この装備の能力が。」
シンは目を丸くする。
「嘘だろ? 神装備だろ? ゲームだと最強装備だろ?」
ECOは静かに答える。
「私の想像不足ですね。」
シンは顎に手を当てた。
「……よし。」
ECOが首を傾げる。
「じゃあ考えるか?」
「え?」
シンは笑った。
「無いなら作ろうぜ!」
拳を握る。
「お前だけのオリジナルな技。今までもそうしてきたじゃんか!」
沈黙。
ECOは静かに頷いた。
「………はい。」
~1時間後~
1つの技が生まれた。
ロゼが使っていた技を応用したもの。
巨大な火球を生み出し、空から落とす。
シンはそれを【太陽の雫】と名付けた。
ECOが構える。
「……こんな感じでしょうか?」
技が放たれる。空気が焼け、大地が焦げる。
シンは腕を組みながら頷いた。
「まぁ……こんな感じだろうね。」
ECOは淡々と分析する。
「マスターの指示がもう少し的確なら、さらに改善できたでしょうね。」
シンは困った顔をする。
「いや、なんで伝わらないかなぁ?」
両手でジェスチャー。
「ガッと広がって、ギュッとして、ボンッ!だよ!」
ECOはため息をついた。
「擬音が多すぎます……」
少し考える。
「マスターは、どこでこのような技を思いつくのでしょうか?」
シンはあっさり答えた。
「そりゃ漫画とかゲームとか?」
ECOは呆れた顔になる。
「はぁ……大人なのに漫画とゲームですか…子供みたいですね。」
シンは笑った。
「そりゃ子供だからだよ。」
ECOが首を傾げる。
「?」
シンは空を見上げる。
「大人ってさ。」
少し考える。
「大人のフリしてるだけなんだよ。」
ECOは黙って聞いている。
「大人になると、周りの目を気にして生きなきゃいけないのさ。」
シンは肩をすくめた。
「本当は!いつまでも遊びたいし、ゲームもしたいしさ。」
「それこそ――」
笑う。
「本当に【自由】を知らないのは、大人の方かもしれないな。」
ECOは黙ったまま、その言葉を処理していた。
「……よくわかりませんが、うまい事を言いたいという事はわかりました。」
「なんでだよッ!!……とりあえず今日はココまでだな!明日からココで特訓だ!」




