外伝.『天草&流水寺の悪巧み』
流水寺邸の縁側に並んで座る、二つの影。
腕を組み、夜空を見上げる流水寺。
胡坐をかき、スマホ片手にニヤニヤしている天草。
「……で? 天草殿。
先ほどから“悪い顔”をしておられるが、何を企んでいるのでござる?」
「え~? そんな顔してる~?」
「うむ。実に悪い顔でござるよ」
天草は肩をすくめ、画面をスワイプする。
「いやさ~、今日のECOちゃん見た~?
雷ちゃんの渾身の一撃を躱したんだよ〜? 」
「たしかに…」
流水寺が、間を置いて口を開く。
「…本気でシン殿を“上”に引き上げるつもりでござるか?」
天草は即答だった。
「うん♪」
迷いも、照れもない。
「だってさぁ。
あの人――“下”で腐るタイプじゃないもん」
「……ふむ、それは確かにでござるな…
もう戦えないとされた初期型をここまで仕上げてくるとは……驚かされる毎日でござる。」
流水寺は顎に手を当てる。
「料理も、神楽も、どちらも中途半端だと悩んでいる。
だが――」
「結局、両方やるしかない人だよね~?
どっちか捨てたら、多分あの人、壊れる。 と思うんだ~」
天草が笑う。
流水寺は小さく息を吐いた。
「全くでござる……ガラスなハートのクセに強がって、誰かの為にと…平気で自分に嘘をつく…面倒な男でござる」
そう言いながら、口元はどこか楽しげだった。
流水寺は静かに頷く。
「シン殿は今、“迷っている”状態。
料理も神楽も、どちらも半歩手前」
「うんうん。
だからさ――引き上げるなら今なんだよね~」
天草の声が、いつもより少し低くなる。
「上位に必要なのって、実力だけじゃないでしょ?」
「……“舞台”でござるな」
「そ♪勝てる相手、映える試合、話題になる試合」
天草はニッと笑った。
「全部、用意してあげればいい」
「……随分と卑怯な手でござるな」
「え? 卑怯?」
天草は首をかしげる。
「だってさ~
勝つために“勝ちやすい場所”を選ぶのって、普通じゃない?」
流水寺は一瞬黙り、ふっと笑った。
「……確かに。
それを“戦略”と言う世間は言うでござる」
「でしょ~?」
天草は指を折りながら言う。
「まず~対戦相手は僕が選ぶ」
「直感、でござるな」
「そ! “ECOちゃんと噛み合う子”だけ!」
「ほうほう!それは勝率が上がるぅ!!」
「その2、流水寺くんは練習相手」
「……これはこれは…嫌われる覚悟が要るでござるな」
「大丈夫大丈夫。
きつくても、シン君は折れないよ♪多分だけど~」
「鍛えるからには容赦はしないでござる」
「その3 話題を作って人気枠を獲得~シン君にコスプレさせられ動画を投稿させようよ〜」
「……シン殿の尊厳は?」
「必要?」
「……無い…でござるな!」
「「ふ…ふふ……あははは~」」
二人は同時に頷いた。
天草は縁側に寝転び、夜空を指差す。
「勝って、叩いて、光って、話題になる!あの“天ノ原”のように
さ~て、どこまで上がるかなぁ、シン君」
流水寺は静かに盃を口に運ぶ。
「……一つだけ確認するでござる」
「なに?」
「これは“利用”ではないでござるな?」
天草は少しだけ真面目な顔になった。
「うん。“信じてるからこそ”だよ」
「……なら、問題ないな!!」
二人は顔を見合わせ、同時に笑った。




