光って、騒いで、踊って、上へ──卑怯と言うまい。
◆ 朝:公式アリーナ 天草の直感
人だかりの向こうで、シンと天草はこそこそと観察していた。
「ん~~~……あの子、ECOちゃんの相性良さそ~」
シンは眉をひそめる。
「根拠は?」
天草は胸を張り、親指を自分に向けて言い放つ。
「──ないッ!!」
「ないんかいッ!!」
天草はそのまま突撃し、見知らぬ御子使いに声をかけはじめた。
「ごめんね~!ちょっとあの子と試合してみない?
大丈夫大丈夫、痛くしないから~!」
「いや、危ない勧誘みたいになってんぞ!!」
しかし相手は案外ノリが良く、あっさり試合成立。
そして──また勝つ。
しかもスムーズに。
「見た!? 見た!? ね!? 僕の直感当たったよ♪」
「マジで意味が分からん……なんなんだその能力……」
“勝率”がじわじわ上がっていく。
“勝利数枠”が少しづつ近づいていく。
だが試合をする毎に天草は女性ファンに見つかり、あっという間に騒ぎに。
「あ!あれ天草様じゃない!?」
「キャー!!初めて生で見た!?ってか隣の男…誰?」
騒ぎを聞きつけた人達が群がりはじめると
天草はシンの手を取り、走る
「アハハハ!!逃げろシン君っ!!次のアリーナへ全力ダッ〜〜シュ!!」
後日、週刊誌の記事に掲載されていた。
『天草、お忍びデート!?相手はまさかの男性──!』
『天草&雷。後輩育成計画始動!?謎の新人とは?』
……どう考えても、俺のせいだ。
でも天草は気にしない。
むしろ嬉しそうだ。
「いや~~人気者は辛いなぁ♪」
「せめて変装しろよ!!
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◆ 昼:流水寺邸 流水寺の特訓
道場に連れてこられたシン。
流水寺が腕を組んで言った。
「さてシン殿。“ビットを動かす”とはどういう事か、わかるでござるか?」
「えっと……ECOの援護が……できる?」
「そうである!!
ビットを動かすとは、ビットを動かせるという事でござる!!」
「意味!意味がわからん!!」
流水寺はで続ける。
「つまり、2つ動かせるなら4ついける。
4ついけるなら8ついける。
8ついけるなら──16個いける!」
「お前だけだ変態!!」
「照れるでござる!!(にこっ)」
「褒めてねぇ!!」
こうして“流水寺流・超感覚ビット操作塾”が開幕した。
地獄のように厳しいが、
操作精度は確実に上がっていく。
「シン殿!意識が切れているでござる!集中!」
「む、無理!!脳がおかしくなりそう!!!」
「慣れでござる慣れ!!!」
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◆ 夜:『深夜の世界』──ECO&シンPR撮影会
撮影用ライトがあちらこちらに反射し、店内が妙にキラキラしている。
居酒屋なのに、今だけは完全に撮影スタジオだ。
天草笑いを堪えるように声がを張る。
「は~~い!本日の主役2名入りまーす♪」
その声に合わせて出てきたのは──メイド服のECO
そして……なぜか同じメイド服のシン
「この唐揚げ、一つ75円で販売しています。 皆さん……こちらの唐揚げ……高いと思いますか……?」
スカートの裾をつまんで震えながら喋るシンと
無表情のECOの姿に
店内に、理性を捨てた笑いが爆発する。
天草は床を転げ回り、
ハルカは呼吸困難になり椅子から落ちた。
「馬鹿だ!!!バカがいるネ!!!」
「あら~~♡シンさん♡そっちに目覚めたのね♡」
「シン……お前がどこへ向かおうと……俺は応援する……」
「似合っているでござるよ!!」
「黙れぇ!!! 人気枠のためなんだよ!!
俺自身の人気も必要なんだよ!!!
ECOだけが人気あっても…意味ねぇんだよ!!
仕方なくやってんだから笑うな!!」
店は大爆笑。
しかし撮影は、なぜか大成功してしまった。
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投稿後──一本のメッセージが届いた。
スマホが震える。
画面には、見覚えのある名前。
『ミュウ☆』
メッセージを開く。
『ECOちゃーん!ミュウだよ☆
動画見たよ☆ シンちゃん、表情が硬すぎ☆
明日、特訓しに行くからね~~!!』
「……え?明日?……マジで来るの?本当に?」
ECOは淡々とうなずいた。
『ミュウ様は有言実行です』
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◆ 翌日──ミュウの“表情&ポーズ講座”
開店前に現れたミュウは、初手からテンションMAX。
「シンちゃ~ん!!昨日の動画みたよぉ☆
あれはね~~“顔が死んでる”っていうの!」
「いや、生きた心地はしないだろ……」
「はいまずこのポーズ☆
腰をキュッとひねって、手はこう!
☆キラッ☆って感じで!!」
「こ、こう……?」
「ちがーう!!そこは魂を込めるのッ☆もっとこう、
『どぉも~☆シンで~す♡』って顔!!」
「それは社会的に死ぬ」
ECOも横で真面目な顔をして指導に加わる。
『マスター。ミュウ様の指導は合理的です。
コレはチャンスなのです。』
「合理的って言うな!!!」
ミュウは笑いながら手を叩いた。
「でもね、シンちゃん。
やればできる子なんだよ☆もうちょっとだけ頑張ろ?」
その言葉に、店の全員が静かにうなずいた。
「そうだぞ!もう一度“キラッ”とやれ!」
「ネー!やるネ!見せるネ!」
「シン…君の勇姿を…俺は忘れないぜ…」
「お前ら絶対楽しんでるだろ!!」
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しかし、反響は──想像以上だった。
SNSにはコメントが溢れた。
《ECOちゃんのメイド最高!》
《シン店長かわいいってどういうこと??》
《あの表情、じわじわくるwww》
《推しマーク作った♡》
ファンタグまで誕生してしまう。
シンはスマホを握りしめ、遠い目をした。
(…………俺、本当にこれでいいのかな……嗚呼ああ!!!思い出したら発狂しそう)
しかし戸惑うシンの肩に、ミュウがぽんと手を置く。
「大丈夫。人気って“武器”だよ、シンちゃん。
あなたはそのままで、強くなれるんだから☆」
ECOも横で静かに言う。
『マスター。
あなたの人気上昇は、大神楽につながります。
……誇ってください』
「いや“誇る”の方向性がおかしくない!?」
仲間の応援と笑いに囲まれながら、
シンの“人気枠”への道が静かに動き出していた。




