『優しい世界編』
「いぇぇぇーーーい!!! と言う訳で、G2勝利で200万円ゲットォォォ!!!」
居酒屋「深夜の世界」は今日も大騒ぎだった。
初のG2公式戦で勝利を果たし、見事賞金200万円を獲得。
営業後、いつものメンバーが集まり、テーブルの上は酒とおつまみの山。
「いや~めでたいなぁ〜シンさーんじゃんじゃん持ってきて〜」
「はいよ〜お待ち〜!!」
大盛況である。
「じゃあぁあ、今夜の議題はこれだぁあ!」
マサさんがジョッキを掲げ、ドンと机を叩く。
「200万円の!使い道会議ッ!!!」
「「「カンパーーーイ!!!」」」
ジョッキの音が響く。
テンションは店の外まで響いていた。
◆シンの案
「……屋根の修繕に使おう」
一瞬の沈黙。
「「うわ~おもんない!!!」」
全員が即ツッコミ。
「だいたい300万からだろ?200万なんてベニヤ貼って終わっちまうだろ??」
みっちゃんが頬をふくらませる。
「夢がないのよぉ~シンちゃん♡ どうせならパーッと使いましょ♡」
ECOが冷静に分析する。
「合理的な案です。構造崩壊のリスクが減少し__」
客はECOの口を押さえた。
「……ECOちゃん、フォローすんなって!」
「事実を述べただけです」
「くっ……合理ロボめぇ……」
◆みっちゃんの案
「じゃあ!全員でハワイ行きましょ♡」
「ハワイ!?」
「そうよ♡ ビーチで日焼けして、ECOちゃんは水着デビュー♡」
その場にいた誰もがECOに視線を向け、様々な妄想をした。
ECOが即答。
「拒否します。防水加工ですが、海水は金属を腐食させます」
「腐食してもカワイイわよぉ♡」
「理解不能です」
資さんが頭をかく。
「ってか…パスポート持ってねぇ」
「「俺も」」
この場にいた全員が持っていなかった。
◆資さんの案
「よっしゃ!毎日格安でうどんを提供してやるから200万くれ!!!」
「「おいおいッ!!」」
ECOが即座に電卓を叩く。
「資さん屋の最安値のうどんが一食300円。
換算で、約6666杯分。
一日三食で消費するには18年かかります」
「……計算すんな!!」
◆福ちゃん案
「老後のために貯金じゃな……」
「「現実派ーーってか?!おめー後が無いだろ?!」」
「そんな悲しい事言うなよ!」
「そうか…ワシもそろそろ終活でも始めんとなぁ」
福ちゃんが笑って盃を傾ける。
「まぁ、わしにはもう店しか残っとらんしのぅ
最後に出ていった息子達に合いたかったのぅ…」
店がしんみりしかけた瞬間――
「じゃあ今のうちに飲もーぜ!!!」
マサさんの一声で再びカオスに戻った。
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◆シュウの案
その喧騒の中で、シュウが小さく呟いた。
「……兄、車椅子、買い直したいって言ったら…怒る…?」
一瞬、店が静まり返る。
ECOが小さく口を開いた。
「それは……素敵な使い道だと思います」
「あ、あぁ最新のやつ買えるんじゃないか?ほら、坂道アシスト付きだったり、その…ターボ付きのやつ峠攻めれるぞ!?」
みっちゃんが感極まってハンカチを取り出す。
「やだ……泣けるじゃない……♡」
……しかし。
「よし!車椅子を新調して、残りは装備だ!」
「合理的です」
「「賛成ーーッ!!!」」
夜も更け、机の上は空のジョッキとツマミの残骸で埋まっていた。
シンは顔を真っ赤にして笑っている。
「結局、意見がまとまらねぇし、200万なんて、すぐなくなるな………ところで誰が幹事?お会計まだだったよな?」
「「え?シンさんの奢りだって聞いた」」
「なんでそんな時だけ揃うんだよ?!え?!俺持ち?!会計30万は超えてるんだけど?!」
店内はまた、笑い声に包まれた。
後日、シュウの車椅子に150万を使い、美味しいものを食べて200万は使い切った。




