犬とオカマが吠える夜 前編
店内のテレビ。
画面の向こうでは、やたらテンションの高いアナウンサーが笑顔を貼り付けていた。
アナウンサーは超ハイテンションで語る。
「みなさ~ん! 今ネットで大注目の《レトロブーム》ってご存知ですか~!?
なんと!最新鋭の御子じゃなく、あえて旧型を使う人が急増してるんですっ!」
テロップには《密かに話題沸騰?! レトロブーム特集》
BGMは無駄に軽快なポップがながれている。
画面はリサイクルショップ前に並ぶ行列へ切り替わる。
「瞬間で決着つくより楽しめるんすよ」
「旧型の方が味があるんですよ~」
「ボロボロになりながらも戦う姿、推せます!」
インタビューを受ける客たちは、どこか誇らしげ。
アナウンサーはさらにヒートアップし
「そ・し・て!!このブームの火付け役が……このかたっ!
“ガラクタ御子”こと――ECO選手~~!」
テロップにはSNSトレンドがズラズラと並ぶ。
> #ガラクタの逆襲
#ECOかわいい
#居酒屋からの挑戦
#唐揚げ無双
#弟がかわいい
#謎のオカマ
スマホ画面にはコメントが流れる。
『え、ECOがかわいすぎ』
『ガラクタで居酒屋出身でG2とかもう主人公だろw』
『唐揚げ食ってる常連の方が気になる』
『オカマが一番目立ってた件』
――スタジオのアナウンサーが爽やかに笑って締めた。
「以上、御子特集でした~!」
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◆居酒屋「深夜の世界」
「……唐揚げ食ってる常連の方が気になるってなんだよ! 俺か!? 俺なのか!?」
資さんが唐揚げを握りしめたまま立ち上がる。
「シンちゃん~♡ ついにテレビに出たわよ! 売上爆上がり間違いなしよ♡」
みっちゃんは涙ぐみ、グラスを高く掲げた。
シンは胸を張って叫ぶ。
「よっしゃぁ! ついに俺たちの時代だ! 客が増えて、店も大繁盛間違いなしだぁぁ!」
――その瞬間、戸が開く。
「ここだ!ここ!! テレビの居酒屋!」
スマホを片手に、新規の客たちが勢いよく飛び込んでくる。
シンは満面の笑みで叫んだ。
「いらっしゃいませぇぇぇーーッッ!」
だが客たちは店内を見回し、顔を曇らせる。
「うわ、満席……」「常連でぎっちぎちじゃん……」
「すみません、ECOちゃんと写真だけ撮らせてもらえます?」
「……あ、はい」
俺はECOに相談し、ECOは淡々と頷いた。
「……承知しました。肖像権料は唐揚げ1皿分です」
「誰がそんなシステム作ったんだよ!」
シンのツッコミで店中が爆笑。
資さんが「俺もECOちゃんと写真撮る!」と割り込むが____
「……不快です」
即座に切り捨てられ、資さんは崩れ落ちた。
みっちゃんは勝手にECOの横でポーズを決める。
「ほら♡ 私の方がSNS映えするでしょ♡」
のちに写真が「#謎のオカマ」でバズる。
シュウまで巻き込まれ、なぜか「#居酒屋の弟君かわいい」がトレンド入り。
シュウ「あ、兄?!僕はどうしたらいい?!」
耳まで真っ赤。
撮影会は遅くまで続き、
新規客たちは満足そうにスマホを片手に帰っていく。
「いや~入れなかったけど、写真撮れたし満足!」
ECOは冷静に総括。
「マスター。席が常連で埋まっているため、新規客は受け入れ不可能です。
合理的に見て、売上増加は見込めません」
「なんでだよおおおおお!」
シンが絶叫。
みっちゃんはECOの肩を抱いてにこやかに言う。
「シンちゃん♡でもテレビ映った時点で勝ちよ♡」
唐揚げの香りと笑い声が、夜の町にいつまでも響いていた。




