居酒屋流の修行 其の三 切って叩いて出来上がり。
「よっしゃぁー!今日も特訓だッ!! まずはキャベツを千切り! 料理もできて、一石二鳥だ!」 シンが腕を組み、威勢よくまな板の上にキャベツを置いた。
ECOは日本刀モデルを装備し、無表情のままキャベツを凝視する。
……1分、2分、まったく動かない。
「お〜い、ECOさんや……? いつまで見つめてんだ? 切るんだぞ……?」
次の瞬間――スパァンッ!
鋭い一閃。キャベツは真っ二つに裂け、さらに下のまな板までもきれいに両断されていた。
「キャベツと一緒にまな板まで斬ってんじゃねぇ! ってか俺、千切りって言ったよな!?」
「古いので買い替えるきっかけができました。効率的です」
「効率じゃねぇんだよ! 常識的に考えろ! キャベツだけ斬れ!」
「……不可能です」
「なんでだよ!?」
居酒屋に響き渡るやりとりに、常連たちは腹を抱えて爆笑。シンだけが頭を抱えていた。
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「……まぁいい。次はハンマーだな。もう素振りでいいか……いや、トンカツ用の肉でも叩いてみるか?」
「はい。やってみます」
ECOが巨大ハンマーを構え、静かに振り上げる。
そして――ドゴォォォンッ!
肉どころか床を直撃。建物全体がぐらりと揺れ、壁にひびが走り、天井から砂がぱらぱらと落ちてきた。
「…………」
シンは無言で固まる。数秒の沈黙の後――。
「嗚呼ぁあああッ! もう限界だ! 今年は……! 今年こそは絶対に大神楽に出てやるッ!!」
店内が一瞬しん、と静まり返る。
だが、シンの瞳には本気の炎が宿っていた。
「もう武器で床が抜けても、梁が折れても直す金はねぇ! 10億……いや、それ以上、必ず掴んでみせる! ECO! お前と一緒にな!」
「いいぞシンさん! その勢いだ! 乾杯ッ!!」
「……はい。わかりました。……勝算は低いですが」
常連たちは立ち上がり、拍手と喝采を送る。
「シンちゃんが燃えてる!」「今年はいけるぞ!」
居酒屋は熱気と笑いに包まれた。
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だが、その片隅で。
ECOは武器を握った手をゆっくり下ろし、かすかなノイズを耳にした。
「……かえして」
誰にも聞こえない小さな声。
ECOは目を伏せ、無言で武器を置いた。




