アリス・ゲートの招待状 後編
翌日。
流水寺の屋敷・広間。
整然と並ぶ4機のビットが、アリスの指先の合図とともにふわりと浮かび上がる。
「今日はビットの扱い方を教えるわ。
下僕、あなたは二機。ECOちゃんも二機。それぞれ操作してみなさい」
「下僕……まぁいい! よし!こういうのは勢いだろ!」
胸を張ったシンが両手を広げた――瞬間。
ドガァンッ!!
2機のビットが猛スピードで壁に激突する。
「おいィィ!? 俺、まだ動かす指示出してねぇぞ!?」
「マスター……私も制御不能です」
ECOのビットも暴走し、空中をぐるぐる旋回。 そのまま――
ヒュンッ!
シンの頭スレスレをかすめた。
「ぎゃぁぁぁあ! やめろッ!! まだハゲたくないッ!!」
「すみません。まだ……上手く出来ていません」
「くっ、だが俺も出来てねぇ……!」
広間にはアリスの涼やかな声が響く。
「フフ……やっぱりすぐには無理みたいね」
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数分後。
床にへたり込んだ二人。額から汗が滴り落ちる。
シンはアリスを見上げ、うめくように言った。
「なぁ……アリス、どうやってお前、18機も操ってんだよ? チートでも使ってんのか?」
アリスは扇子で口元を隠し、くすりと笑う。
「……フフ。実は、16機はマスターが操作しているのよ」
「は?」
シンとECO、声を揃えて固まる。
流水寺が両手を広げ、満面の笑顔を浮かべる。
「えぇぇ、出来ないわけないじゃないですかぁぁ! アリスを守るためですよッ?! 当然でしょ?」
「じゅ、16機……!? 一人で!?」
「そうね、普通の人間なら4〜5機が限界かしら。でも……わたくしのマスターよ。出来ないわけないでしょ?」
アリスの瞳が、ほんの少し誇らしげに輝く。
そして――さらりと。
「――そう、わたくしのマスターはとんでもない変態なのよ」
流水寺は目を輝かせてる
「褒められちゃいましたぁぁぁ!」
サムズアップし、爽やかな笑みを浮かべた。
「褒め言葉じゃねぇよ!?」
「はい。……変態ですね」
「ECOちゃんにも褒められてしまいましたぁぁ!」
「いや、だから褒めてねぇんだよ?! なぁECO?!」
「はい。尊敬から軽蔑に変わりました」
広間に、妙に楽しげな笑いが響いた。
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夕方。
特訓は惨敗。ヨロヨロと並んで外に出た二人は、暮れかけた空を仰ぐ。
ECOが小さく呟いた。
「……私たちに、本当にできるのでしょうか」
シンはしばし黙り、夕焼けを見つめながら息を吐いた。
「できるさ。俺たち、まだ始めたばっかだろ。時間をかければ必ずできるさ!」
その背中に、アリスの声が届く。
「大丈夫よ。あなた達なら――きっと使いこなせるわ」
振り返ると、夕陽に照らされたアリス。その横で流水寺は――
「いやぁぁ、青春って素晴らしいぃぃ!!」
……空気を、完璧にぶち壊していた。
こうして、俺達の流水寺邸での修行は終わった。




