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郎世寧の女官①

──碧眼が1人の女を捉えていた。


 郎世寧は狼狽していた。

 自分の仕事場に戻ろうと円明園から紫禁城へと向かう途中、突然目の前が強く光り出したのである。

 あまりに眩しい光だった為に帽子で顔を覆い隠すだけでなく、腕でも覆い隠した。

少しすると光は収まり、視界が元に戻った──そう思った時だった。

その光の発生場所から女が1人顔を覆い隠したまま目の前に立っていたのである。

 女の姿は円明園で仕える薄緑の女官の服装であった。

しかし、手足が普通の女よりも小さい。

漢民族でも満州族でも見たことがない女だと郎世寧は思った。

 女も光の中から出てきたことに驚いているようだ。

覆っていた腕を恐る恐る下げる。

 状況が分かっていないのか、呆然と辺りを見回していた。

やがて東洋人独特の黒曜石のような瞳と目が合った。

──少女だった。

まだ成熟していないその少女の顔が碧眼に写った。


「えっと、大丈夫デスカ?」


郎世寧は皇帝に仕えて長いが、未だ満州語を操るのは難しい。

これでも喋れるように努力した方だと思いながら郎世寧は少女に話しかけた。

なるべく怖がらせないように、優しく優しく。


「ここは、何処ですか…?」

「ここは円明園デス。分かりマスカ?」

「は、はい…。」


 少女は恐る恐る尋ねてきた。

郎世寧は引き続き怖がらせないように声色に注意しながら少女の問いに答える。

 円明園が分かり、両把頭(りょうはとう)をしているということはこの時代の人間のはずだ。

 その髪型は康熙帝の時代から宮中の女性がするようになった髪型なのだから。

しかし、と郎世寧は考える。

この少女は光の中から現れた。


──もしかすると、この時代の人間ではないのでは…?


 郎世寧は自身でも驚いていた。

イタリア人である彼は科学的根拠のない物は基本的には信じない。

宗教関係という話になれば別であるが。

そうだというのに突拍子もない結論に達してしまった。

 もしそれが本当だとするなら、まるで御伽噺だ。


(いや、それはあり得ないでショウ…。でも確かに…。)


あり得ないことが目の前で起こってしまった。

この事態をどうするべきか。

皇宮に仕える身として彼は考えなくてはならなかった。


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