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音楽に愛された妃②

万寿節当日。

 深層のエメラルドの下地に花の刺繍を施された服、金色を含んだ髪飾り。

ラピスラズリの真珠の形をした長いネックレス。

 今日は現代で言う帽子のような形の装飾品を若汐は頭に身に着けていた。

宴に出席するのである。妃嬪として着飾るのは当然の話だった。


「よし。練習はしてもらったし、あとはあまり緊張させないようにしなきゃね。」

「皇子や公主のことですか?」


 春海が尋ねる。

主人はそう、と短く返事をしてパンと大きく自身の手を叩いた。

突然の行動に春海は思わず驚いた。


「いかがなされましたか?」

「顔を叩くわけにはいかないから手を叩いて気合を入れたのよ。」

「そうでしたか…。」


 春海の主人は突然思いもよらぬことをすることがある。

未だそのことには女官長の彼女であっても慣れてはいなかった。

準備を終えた若汐は、春海と翠蘭の二人を連れて自らの寝殿を出た。

 宴までの場所を若汐は歩いて向かう。

普段あまり動くということをしないので、運動も兼ねてだ。

 コツン、コツン、と花盆底靴を支えてもらいながらリズムよく響かせる。

思わず口ずさんでしまいそうな気分であったが、気合を心で入れなおした。

 今回、若汐の役目は指揮者のようなものだ。彼女自身は楽器を披露する予定はない。

 あくまでもメインは皇子と公主。

それは皇后にも話をしていることだった。

 合奏の練習は充分に行ったために、何かしらトラブルというのがなければ問題ないはずだ。

 問題は、皇子や公主のメンタル状態だった。

 それさえクリアしてしまえば、簡単な曲であるが見事な演奏が披露することができるだろう。

若汐はそう考えていた。

 しかし、その考えは浅慮だったと言える。

若汐を目の敵にしていたのは高貴妃だけではなかったのだ。

 皇后と妃嬪達、そして皇帝の子供である皇子と公主達が宴の会場に揃った。

 皇太后と皇帝はまだ到着していないようだ。時間がまだあるな、と若汐は思い皇子や公主達の顔色をそれとなく観察した。

 どことなく皆表情は硬い。やはりか、と考えた彼女は演奏を披露する前に緊張を解させる必要があるとすぐさま判断した

 そう若汐が考えていると、皇太后と皇帝が到着。皆で一斉に立ち上がり、挨拶をした。



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