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【第2章完結】レイドボスAIは恋をした ― 最強剣姫と挑むVRMMO生存戦争  作者: YY
第2章

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第31話 陽剣×光剣

 ゲンスとロウリは、『レジェンドソード』を与えられ、浮かれていた。

 自分たちは、ガルフォードに認められたのだと。

 実際は、実力よりも従順度を重視された訳だが。

 それでも、レーヴァテインとティルヴィングは強力で、七剣星となってからは負けなし。

 だからこそ、フレンやアリエッタと敵対しても、渡り合えると考えていた。

 ところが――


「イヴさん……使わせてもらいます」


 静かに瞑目して、呟いたアリエッタ。

 右手にはジュワユーズ、左手にはフラガラッハ、そして周囲には――8本の光剣が浮いている。

 5本から8本に増えた光剣。

 シンプルではあるが、大きな強化だ。

 そんな彼女を前に、ゲンスとロウリは動けない。

 本音を言えば逃げたいが、ガルフォードの手前、それは不可能。

 だからと言って、今のアリエッタに挑めるほど、彼らの志は高くなかった。

 結果として立ち止まっている2人に、アリエッタは鋭い視線を向ける。

 そして、極めて真剣な声音で告げた。


「悪いけど、すぐに終わらせるよ。 覚悟してね」


 悠然と構えるアリエッタに、ゲンスとロウリは返事すら出来ない。

 そのことに頓着せず、彼女は駆け出す。

 ジュワユーズの能力を発揮しており、やはり凄まじいスピード。

 狙うは、ティルヴィングの持ち主。

 迫り来るアリエッタに表情を引きつらせつつ、ロウリはなんとか迎撃しようとした。

 しかし――


「行って!」

「ぐぁ!?」


 アリエッタが放った光剣が、ロウリに殺到する。

 ティルヴィングを駆使して、数本は弾き返すことに成功したが、全てを凌ぐことは出来ない。

 両腕と両脚を穿たれ、HPゲージが大きく削られた。

 そのことに焦ったロウリは、とにかく逃げようとバックステップしたが、それはアリエッタの予想通りの行動。


「やぁッ!」

「な!?」


 待ち構えていたアリエッタが、ジュワユーズとフラガラッハを交差するように繰り出す。

 背中を十字に斬り裂かれたロウリは更にHPを減少させ、反射的にアリエッタに振り向いた。

 この行動が間違っているとは断言出来ないが、少なくとも最善ではない。

 何故なら今の彼女には、多角的な攻撃が可能だからだ。


「がら空きだよ!」

「が!?」


 背後から飛来した光剣が、ロウリの背中に突き立つ。

 圧倒的な戦いを見せているアリエッタだが、決して気を緩めてはいない。

 片手剣であるジュワユーズと、細剣であるフラガラッハは同時に装備出来るが、アリエッタの双剣の技量はまだまだ途上。

 訓練を始めたのが最近なので、致し方ないところだ。

 それ以上に問題なのは、ジュワユーズとフラガラッハを同時に制御するのは、意外と難しい。

 特に慣れないフラガラッハを上手く操るのは、彼女であっても至難。

 考えることが多く、常に頭をフル回転させなければならなかった。

 精神的な消耗が激しく、そう言う意味でもアリエッタは、早期決着を望んでいる。

 そうして、柳眉を逆立てたアリエッタは、ジュワユーズを一閃させた。

 それによってロウリはあっさりと脱落し、残りはゲンス。

 この間、彼は手を出すことが出来ず、硬直していた。

 これが本当に七剣星かと、アリエッタは溜息をついたが、今回に限っては助かると思っている。

 左手のフラガラッハを、ゲンスに真っ直ぐに突き付けて、はっきりと言い放った。


「次はキミだよ」

「……!? こ、この、来るんじゃねぇよ!」


 恥も外聞もなく叫びながら、レーヴァテインを振り下ろすゲンス。

 ロウリがいなくなったことで、全力を出すことが出来て、辺り一面を獄炎が焼き尽くした。

 それを見たゲンスはアリエッタを仕留めたと考え、歪な笑みを浮かべたが、言うまでもなくそうは行かない。


「雑にもほどがあるね」

「ぐは!?」


 高く跳躍したアリエッタが、ゲンスの頭上から光剣を放つ。

 8本全てをまともに喰らった彼のHPゲージが、ごっそりと削れた。

 しかし、アリエッタの体は今、空中にある。

 血走った目で上を見たゲンスは、逃げ場のない彼女に向かって、レーヴァテインを振り切ろうとして――


「遅いよ!」


 天井に足を着けたアリエッタが、ゲンスに向かって跳び掛かった。

 瞠目したゲンスは慌ててガードしようとしたが、ジュワユーズの効果によって加速しているアリエッタには追い付けない。

 すれ違うようにして着地しながら、ゲンスを斬り裂くアリエッタ。

 この時点でゲンスのHPゲージは危険域に達しており、泣きそうになりながら彼は何事を言おうとしていたが、アリエッタが容赦することはない。


「これで……終わり!」


 フラガラッハを突き出すと同時に、全周囲から光剣を射出する。

 滅多刺しにされたゲンスは脱落し、あとにはアリエッタだけが残された。

 文句なしの感傷ではあったものの、彼女の額にはびっしりと汗が浮かび、肩で息をしている。

 それほど、見た目以上に苦労していたと言うことだ。

 とは言え、無傷で2人を処理出来たのは、上々の戦果だと言える。

 大きく深呼吸したアリエッタは、意識を切り替え――思わぬ展開が待ち受けていた。

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