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第31話 魔の手

 雪夜がケーキとともに町に戻って来たとき、CBOプレイヤーは何とも複雑な状態だった。

 SCOを撃退出来た高揚感はありつつも、心底疲れ果てており、喜ぶ元気もない――と言ったところ。

 地面に座り込んだり寝転んで、各々休息を取っている。

 厳密に言うと防衛時間はまだ続いているのだが、それを言うのは野暮と言うものだろう。

 他のタイトルが攻めて来ることも考えられるとは言え、その可能性は低いと雪夜は思っていた。

 どちらにせよ、今は可能な限り休むべき。

 そう結論付けた雪夜がクリスタルの傍まで来ると、笑顔のAliceに出迎えられた。


「あ! 2人とも、お帰り!」

「ただいま、Alice。 良く頑張ったな」

「まぁね~。 ちょっと本気を出したら、こんなものだよ~」

「自信を持つのは良いが、過信はするな。 俺と同等……いや、俺を超えるプレイヤーがいる可能性も、捨て切れないんだからな」

「雪夜くんを超える? それはないよ~」

「言い切るな」

「言い切るよ! ね、ケーキちゃん!」


 上機嫌なAliceはニコニコ笑って、ケーキに話題を振った。

 しかし返事はなく、ケーキは無表情で静かにAliceを見つめている。

 それを受けたAliceが、不思議そうに小首を傾げると――


「有難うございました」


 ケーキが深く頭を下げて、感謝を告げた。

 突然のことにAliceは目を見張り、雪夜はこっそりと苦笑している。

 そんな2人に構わず、顔を上げたケーキが想いを語った。


「今回ばかりは、お礼を言わない訳には行きません。 貴女のお陰で、CBOは救われました」

「き、気にしなくて良いよ! CBOを守りたかったのは、あたしも同じなんだし!」

「それでもです。 もう少しで、わたしは……居場所を失うところでした。 本当に、感謝しています」

「ケーキちゃん……」


 瞳を潤ませて告げるケーキの言葉を、Aliceも真剣に受け止めた。

 未だに、彼女がCBOに固執する理由はわからない。

 だが、そのようなことは些細な問題だ。

 大事なのは、目の前の少女が誰よりも本気で、生存戦争に挑んでいると言うこと。

 クスリと小さく笑ったAliceは、ゆっくりとケーキの手を取る。

 彼女はピクリと肩を震わせたが、気にせず言い放った。


「あたしの方こそ、有難う!」

「え……?」

「あたしだけだったら、たぶんパニックになってたと思う。 でも、ケーキちゃんがいてくれたから、落ち着いて行動出来たの。 だから、有難う!」

「Aliceさん……」

「これからもっと大変になるかもだけど、改めてよろしくね!」

「……はい、よろしくお願いします」


 大輪の花のような笑みを咲かせるAliceに、ケーキも微笑を浮かべて手を握り返した。

 2人の様子を雪夜は微笑ましく思っており、このまま終われば綺麗に纏まったのだが――


「ですが、雪夜さんは譲りません」

「……別に、あたしは何とも思ってないけど?」

「そうですか」

「そうだよ」

「……」

「……」


 急激に雲行きが怪しくなった。

 折角晴れて来た空が、彼女たちの頭上だけ、雷雲が轟いていると錯覚しそうなほど。

 心なしか、互いに手を握る力も強くなっている。

 放っておくと、自分に飛び火しそうだと感じた雪夜は、自ら別の話題を放り込んだ。


「ケーキ」

「……! は、はい、雪夜さん」

「キミに渡しておくものがある」

「渡しておくもの、ですか……?」

「あぁ」


 そう言って雪夜がウィンドウを操作すると、ケーキの前に新たなウィンドウが出現した。

 何事かと思ったケーキは目を丸くしており、Aliceも興味津々と言った様子。

 そこに表示されていたのは――プレゼントの通知と、受け取るか否かの選択。

 信じられない思いのケーキは、何度も画面と雪夜の顔を見比べた。

 そんな彼女から視線を逸らした雪夜は、敢えて淡々と言葉を連ねる。


「今日のことで再認識した。 キミはCBOにとって、必要不可欠な戦力だ」

「あ、有難うございます」

「だが、レベルと装備が絶対的に足りていない」

「……はい」

「レベルに関しては、ライズクエストをこなせばなんとかなるだろう。 だが、装備に関しては、すぐにどうにかなる問題じゃない」

「そうですね……」

「……だから、これを受け取って欲しい」

「え……?」

「今のキミには、必要なものだと思う。 本当は、自分で手に入れて欲しかったんだがな」


 視線で促されたケーキは、震える指でウィンドウにタッチして、受け取りを完了する。

 すると、プレゼントの中身が表示されたのだが――


「こ、これって……」

「自分で装備を手に入れる、喜びを奪ってすまない」

「と、とんでもないです! で、ですが、本当に頂いて良いのですか……?」

「勿論だ。 その為に用意した」

「あ、有難うございます! 一生大事にします!」

「そこまで大袈裟にしなくて良いが」

「大事にします!」

「……そうか」


 ケーキの途轍もない勢いに、流石の雪夜もたじたじだ。

 彼が彼女に与えた物。

 それはUR武器、『プリンセス・フルール』。

 剣姫撃破でのみ入手可能な、最強の大剣。

 名前と条件からわかるかもしれないが、剣姫が持っている武器だ。

 つまりは、本来のケーキの装備。

 特殊能力は『攻撃力30%上昇』、『アーツ威力30%上昇』、『チャージ威力30%上昇』、『チャージ速度30%上昇』。

 単純な火力アップは言うに及ばず、チャージ速度が上がることが特筆すべき点。

 しかも、この『プリンセス・フルール』は、強化値が最大の10まで上げられている。

 雪夜が最近素材集めばかりしていたのは、これの為だった。

 様々な意味で感動していたケーキだが、ハッとした表情になって、いそいそとウィンドウを操作する。

 同時に、それまで装備していた『グレートソード』が消え去り、白銀の大剣を背負った。

 抜剣して軽く素振りしてみたケーキは、懐かしい感触に微笑を浮かべる。

 そして『プリンセス・フルール』を納めてから、改めて雪夜に向き直った。


「本当に有難うございます。 これでわたしは、誰にも負けません」

「……まだ胴防具と腕防具が残っているぞ?」

「はい、いずれ揃えてみせます」

「レベリングが先だけどな」

「はい!」


 喜びを抑えられないケーキが、ニコニコ笑い続けている。

 想像以上の反応に困った雪夜は、反射的に顔を背けたが、その先にはAliceが立っていた。

 彼女の顔にも、笑顔が張り付いているにもかかわらず、雪夜の背筋に寒いものが走る。

 すると、笑顔のまま激怒すると言う、器用な状態のAliceが口を開いた。


「雪夜く~ん? ズルくないかな~?」

「仕方ないだろう。 ケーキが強くなるのは、CBOにとって必須だ」

「だからって、ちょ~~~っと豪華過ぎるプレゼントだと思うんだけど~?」

「手持ちの大剣で、1番良かったのがあれなんだ」

「そりゃそうでしょうね~。 なんせ、最強の大剣なんだから~」

「……結局、何が言いたいんだ?」

「あたしも何か欲しい! ちょうだい!」

「ストレートだな」

「回りくどく言っても、伝わらないからだよ!」

「そう言われてもな……。 Aliceの役に立ちそうなものは、持っていない。 キミの装備は、相当強力だ」

「そう言うことじゃなくて……もう良い!」


 腕を組んで明後日の方向を向き、頬を膨らませるAlice。

 その目には、涙が浮かんでいた。

 困り顔になった雪夜は、どうしたものか悩んだ結果、苦肉の策を提示する。


「すまない、Alice。 やはり俺からキミに、渡せるものはなさそうだ」

「だから、もう良いってば!」

「その代わりになるかわからないが……俺の時間を、キミの好きにして良い」

「え? 雪夜くんの時間?」

「そうだ。 お互い、休みの日くらいあるだろう。 そう言う日に都合を合わせて、キミの行きたいところに付いて行く」

「じ、じゃあ……パーティも組んでくれるの?」

「……そのときだけはな」

「わ~い! やった~!」

「それで許してくれるか?」

「うん! 楽しみにしてるから!」


 途端に機嫌が良くなったAliceに、苦笑を禁じ得ない雪夜。

 一方でケーキはむくれていたが、気にしないことにした。

 こうして彼は、美少女たちにご褒美(?)をあげていたのだが――


「おい、ベルセルク!」


 突然、男性プレイヤーから呼び掛けられた。

 彼の背後にも複数人のプレイヤーがおり、何やら怒りの表情を湛えている。

 冷たい面持ちになって目を細めたケーキと、戸惑った様子のAlice。

 だが、雪夜は2人を目線で制し、1歩前に出て問い返した。


「何だ?」

「お前……なんで今日限って、遅刻したんだ?」

「リアル事情だ。 それ以上を話すつもりはない」

「リアル事情だと? そんなもんで納得出来るか! お前が遅れたせいで、何人が犠牲になったと思ってんだ!?」

「そうだよ! 戦闘しか取り柄がないくせに、肝心なときに遅れるなんて!」

「ケーキちゃんとAliceちゃんが、どんだけ頑張ったのか知ってるのかよ!? それをあとから来て、良いところだけ持って行きやがって!」

「あんたが遅れなかったら、あの子は……。 返してよ! あんたのせいで脱落したあの子を、返してよ!」


 雪夜に怒号を飛ばす、CBOプレイヤーたち。

 全員とまでは言わないが、特に自分の親しかった者を失ったプレイヤーたちが、やり場のない怒りをぶつけていた。

 それを聞いたケーキとAliceは眦を吊り上げて、大声で反論しようとしたが、その前に雪夜が口を開く。


「遅れたのは事実だからな。 それに関しては、謝罪しよう。 だが、だからと言って責められる覚えはない」

「何だと!?」

「そもそも、生存戦争は義務じゃないだろう? キミたちだって、毎日参加していた訳じゃないはずだ」

「だ、だから、肝心なときになんでいないんだって……」

「知ったことじゃない。 SCOが今日攻めて来るなんて、誰にもわからなかったんだからな」

「でも! あんたがいれば、あの子たちは……!」

「さっきから気になっていたが、どうして俺に頼る? そんなに大事な人なら、自分で守れば良かっただろう」

「相手はSCOだったんだよ!? 自分のことに必死で、そんな余裕ある訳ないじゃない!」

「だったらそれは、キミの責任だ。 俺がキミなら、自分もその人も守れた」

「おい! そんな言い方ねぇだろ!?」

「だが、事実だ。 悔しかったら、強くなれ。 俺なんかに頼らなくても、大事なものを守れるくらいな。 話が以上なら、失礼する」

「お、おい……」

「まだ文句があると言うなら、PVPでもするか? 何なら、全員同時でも構わないぞ?」


 見下したような笑みを浮かべる雪夜。

 それを受けたCBOプレイヤーたちは、憎悪に塗れた顔になりながらも、挑むことは出来なかった。

 挑戦者がいないことを確認した雪夜は踵を返し、引き留めようとしていたケーキとAliceに目を向けることもなく、その場をあとにする。

 こうして彼はCBO内でますます孤立し、初勝利が後味の悪いものになってしまった。











 SCOにある、ガルフォードの居城。

 その1室に、3人のプレイヤーが集まっていた。

 第一星ガルフォード、第四星フレン、第五星アリエッタ。

 1度は決裂した彼らだが、緊急事態と言うことで、ガルフォードが招集を掛けた。

 フレンとアリエッタとしても、話し合う必要があると思っており、内心はともかく必要に駆られて了承している。

 そうして集まってすぐに、口を開いたのはフレン。


「アルドとカインが脱落したのは、本当か?」

「あぁ。 記録映像があるから、あとで観ろよ」

「……わかった。 それで、これからどうするつもりだ?」

「取り敢えず、専守防衛するしかねぇだろ。 侵攻出来る状況じゃねぇからな」

「あまり言いたくないが、賛成だ。 今は守りを固める必要がある」

「くく、そう深刻になるなよ、フレン。 雑魚2匹が落ちただけのことだ」

「……アルドとカインは、貴様を慕っていたんじゃないのか?」

「どうだったかな。 雑魚のことはあまり覚えてねぇんだ」

「どこまで腐っているんだ、貴様は……」

「何とでも言えよ。 そんなことより、取り敢えずレーヴァテインとティルヴィングを回収しねぇとな。 まぁ、これに関してはすぐに終わる」

「まさか……また何か、良からぬことを考えているんじゃないだろうな?」

「良からぬことって何だよ? 俺は、SCOの為に出来ることをしてるだけだぜ?」

「だからと言って、不正を働いて良い理由にはならない」

「相変わらずの甘ちゃんだぜ。 テメェに、ロランの代わりは務まらねぇな」

「そんなことはわかっている。 僕はロランさんとは違うからな」


 視線で火花を散らす、ガルフォードとフレン。

 しかし、剣呑な雰囲気なのはフレンだけで、ガルフォードには余裕があった。

 そのことを忌々しく思いつつ、フレンは気を取り直して話し合いを進める。


「それで、2人を脱落させたのは誰だ?」

「CBOの連中だ。 人数の割に強かったのは確かだが、それでもアルドたちがいれば勝てるはずだった。 ……こいつらがいなけりゃな」


 そう言ってガルフォードが空中に表示させたウィンドウには、ケーキとAlice、そして雪夜の姿が映っていた。

 それを見たフレンは目を研ぎ澄ませ、ガルフォードは面倒臭そうに言い捨てる。


「はっきり言って、こいつらはかなり強い。 『剣士』の女は装備はゴミだが、実力は相当ヤベェな。 あとの2人に至っては、七剣星の上位と同等以上だ」

「貴様がそこまで言い切るのか……」

「くく、俺は強い奴は強いって認めるぜ? だが、奴らのことは、ひとまず放っておいて良いだろう。 CBOに侵攻する余裕なんかねぇだろうから、こっちから攻めない限り危険はねぇ」

「確かにな。 注意は必要だが、今は他の4大タイトルだ」

「そう言うこった。 取り敢えず、今後は俺も防衛に加わるぜ。 付け入る隙を与える訳には行かねぇからな」

「……わかった。 今は好き嫌いを言っている場合じゃない」

「まったく、テメェは本当に俺が嫌いみたいだな。 別に良いけどよ」


 ニヤリとしたガルフォードに、憮然としたフレン。

 対照的な両者だが、防衛に関する話し合いは、滞りなく済んだ。

 全ての確認事項を終えたフレンとアリエッタは、部屋をあとにしたのだが――


「アリエッタちゃん、大丈夫……?」


 最後まで一言も話さなかった彼女に、フレンが心配そうに声を掛ける。

 対するアリエッタは思い詰めた表情をしており、その理由を誤解したフレンは、殊更に明るく言い放った。


「大丈夫だよ。 守りに専念してたら、そう簡単にSCOは負けないから。 僕は勿論だけど、ガルフォードが本当に手を貸してくれるのなら、他のタイトルも簡単には手を出せない」

「……そうですね。 有難うございます」


 フレンの励ましに、アリエッタは微笑を返した。

 彼女がまだ何かを抱えていることに気付きつつ、彼にはそれが何かわからない。

 そのことをフレンは悔しく思ったが、アリエッタに話すつもりはなかった。

 やがて2人は居城の出口まで来たが、そこで唐突に立ち止まったアリエッタが声を発する。


「すみません、フレン様。 先に帰っていて下さい」

「どうしたの?」

「ガルフォードさんに、少し聞きたいことがありまして」

「だったら、僕も戻って……」

「1人で大丈夫ですよ、有難うございます。 それにフレン様には、帰って皆さんの訓練を見てもらわないと」

「……わかったよ。 でも、何かあればすぐに連絡してね?」

「はい、わかりました! じゃあ、行って来ます!」


 ニコリと笑ったアリエッタは、フレンに背を向けて駆け出した。

 フレンは心配そうに見送ったが、止めることはない。

 そうして、彼の目が完全に届かないところまで来たアリエッタは足を止め、胸に手を当てて俯く。

 彼女の顔には、苦悩に満ちた表情が浮かんでいた。

 暫くそのまま佇んでいたアリエッタだが、やがてポツリと声を落とす。


「セツ兄……」


 七剣星の第五星、アリエッタ。

 本名は日高朱里で、如月雪夜の幼馴染。

 初めて彼女が雪夜をゲーム内で見た瞬間、本人だと確信した。

 見た目、雰囲気、常識外の実力。

 その他全ての情報が、彼が自分の幼馴染だと告げていた。

 だが、まだあくまでも今は、アリエッタの主観に過ぎない。

 それゆえに彼女は、ガルフォードから雪夜のことを詳しく聞こうと考え、気持ちの整理を付けようとしている。

 覚悟を固めたアリエッタは足を再稼働させ、部屋の前まで帰って来た、そのとき――


「それで、あいつらの情報は手に入ったのか?」


 中から、ガルフォードの声が聞こえて来た。

 ビクリと震えたアリエッタだが、どうやら自分に言っているのではないと悟る。

 では、誰と話しているのだろうと不思議に思っていたが、すぐにそのようなことはどうでも良くなった。


『残念ながら、全員は無理だった。 ケーキはどう言う訳か、全く情報が見付からん。 Aliceは厳重にブロックが掛けられていて、これ以上踏み込むのは危険だ。 だが、雪夜に関しては大体のことはわかった。 優秀ではあるが、普通の高校生だな』


 アバターにもかかわらず、アリエッタは心臓が跳ねるのを感じた。

 どんどん速くなる鼓動を抑えるかのように、口に手を当てた彼女は、足音を殺して扉に近付き、聞き耳を立てる。

 ガルフォードが誰と話しているかは知らないが、無性に嫌な予感がした。

 そして、その予感は現実のものとなってしまう。


「充分だ。 あの3人の中で、1番厄介なのがあのガキだからな」

『それはわかったが……どうするつもりだ?』

「鷺沼、敵の強力なプレイヤーを倒す、最も確実な方法を知ってるか?」

『何……? ……! まさか、お前……!?』

「くく……そう、現実の人間を無力化しちまえば良いんだよ」

『ば、馬鹿なことを言うな! 流石に、そんな真似を許す訳には……』

「別に、殺すって訳じゃねぇよ。 ちょっと痛い目を見せて、生存戦争から手を引くように脅すだけだ」

『だ、だからと言って、そこまでの悪事を見過ごすことは出来ん』

「は! 良く言うぜ。 ここまで散々、悪事を働いて来たじゃねぇか」

『そ、それはそうだが、生身の人間を傷付けるのは、次元が違う話だ!』

「うるせぇな。 どうしても嫌だってんなら、俺はここで降りる。 それでも良いってんなら、その偽善を振りかざしてろよ」

『ぐ……! 仕方あるまい……。 し、しかし、誰がこんな話に乗ると言うんだ?』

「打って付けの奴らがいるじゃねぇか。 脱落して暇な2人がよ」

『アルドとカインか……?』

「あぁ。 あいつらなら俺に逆らえねぇし、荒事にも慣れてる。 奴に対する恨みもあるだろうし、喜んで引き受けるだろうぜ」

『……わかった。 ただし! もしものときは、運営は知らぬ存ぜぬを通すからな!?』

「はいはい、わかってるって。 ほら、サッサと雪夜の情報を話せよ。 心配しなくても、すぐには手を出さねぇって。 ちゃんと、時期は見計らうぜ」


 いつの間にか、アリエッタは駆け出していた。

 雪夜が危ない。

 その事実が脳に届くと同時に、体が動いていた。

 今、この場でガルフォードたちを問い詰めたところで、白を切られるだけだろう。

 ならばどうするか。

 現場を取り押さえるしかない。

 決然とした顔付きのアリエッタは、フレンに断りを入れてからログアウトする。

 こうして生存戦争の影響は、現実にまで及び始めた。

 ここまで読んで頂き、誠に有難うございます。

 これにて第1章は完結です。

 よろしければ、評価や感想を頂けると嬉しいです。

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