第92話 『歓迎の宴会』
2025-09-10公開
〔王国歴378年 従地神月 23日〕
「それで、大氾濫に対する備えは進んでいるのか?」
ルクナ村挙げての歓迎の宴会もそろそろ終わりが見えて来た。
俺の質問に、酒(どうせ呑むのが分かっていたから、俺がスタール子爵領で用意して持って来た酒だ)で顔を赤く染めているアルマとエッサが杯を飲み干した後で答えた。
「何とかなるかな? と言う所までは来ているが、さっきの話に出た野獣のマウゼが魔獣化する可能性は考えていなかったからなぁ」
「確かにマウゼ対策は厄介だな」
マウゼは異世界のネズミと違って、人間の生活領域ではほとんど見かけない。
主に山林に生息している。
だから、これから行く新領もそうだが、同じ様に山林に囲まれているルクナ村の周辺にもかなりの数が居る筈だ。
「罠を作っても良いが手間がなあ。それに罠だけでは防げないだろうし。あのネコとか言う金属人形を譲って貰う、ってのは難しいのか?」
まあ、俺の様に(と言うかエレムが、だが)いざとなればネコ型の金属人形を量産出来ない限り、罠を作るしかないだろう。
しかし罠で完全に防げるかと言えば、無理だ。
魔獣化したマウゼの習性と能力がはっきりとしないからだ。
どうしても取りこぼしは出て来ると思った方が良い。
ある程度の実力が持つ討伐士なら起きている限り自分の身は守れるだろう。
それでも寝ている場合や他の部屋に居る家族を守るのは難しいから、完全に密閉出来る部屋が無い限り、家族がまとまって交代で寝るしかない。
だが、討伐士が居ない家族はどうする?と言う問題が出る。
だから、受動的に対処が出来る罠とネコの組み合わせが現状では最適解だ。
「大氾濫までに再現したネコをある程度の数を譲る事になった」
気付くとエレムが宴会場に現れていた。
エレムは俺には使いこなせない時空魔法を使えるので、偶にドキっとさせてくれる。
「その為にこの近くに居るそれなりに力を持つ妖精を連れて行く話に落ち着いた」
「あ、シロチャンだ」
「ふむ」
いや、ふむじゃないぞ、エレム。
姿を現したと思ったら、秒でモンソン姉妹の妹クラーラに確保されていた。
「ゼアスキ%#*※Йの言う通りだ。我らでは直に手を出せんが、あの金属カラクリならば役に立とう」
ルクナマクスも現れたが、その頃にはルクナ村の住民が跪いて宴会場が謁見の間と化していた。
こうやって顕現した姿を間近で見ると、本当に不思議な姿だ。
水と植物の精霊と言う事は間違いないだろうが。
「ある程度の数を再現するごとに送り出すので、それぞれの家で役立てるが良い」
なんか偉そうな事を言っているが、クラーラに喉元を撫でられて目を細めていては、尊厳の欠片も無いぞ、エレムよ。
お読み頂き、有難う御座います。
体調不良で1度執筆が途絶えてしまい、体調が良くなっても気力が湧かなくなっていたmrtkですm(_ _)m
まあ、ブログの方は活発に更新していたので言い訳にもなりませんが(´・ω・)
ボチボチと更新して行きます(´・ω・)




