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第91話 『ルクナ村到着』

2025-08-13公開



〔王国歴378年 従地神月ムウンゼウルラーザ 23日〕



「エリ坊は相変わらずだなぁ。まあ、それ以上にリリーちゃんは可愛いけど」

「そうそう。でもエリ坊のせいで出迎えに送り出した奴ら、顔を青くしていたぜ。謝罪と賠償を要求する。私は優しいから酒1樽で手を打とう」



 2ヵ月ぶりに会ったアルマとエッサが「外向き」の態度と言葉で話し掛けて来た。

 うん、確かにアルマとエッサだ。


「アルマさんもエッサさんもお元気そうで何よりです」

「2人から元気を取ったら、残りは酒呑みしか残らんからな」


 リリーが懐かしそうに言葉を返して、2人に頭を撫でられている。

 俺たち4人の再会を村人が見ているが、その目には初見の人間に対する警戒よりも、大きな驚きと畏怖が感じられた。

 まあ、ここに来る途中で思い付きでした悪戯が思ったよりも上手く行ったせいだな。

 初めての魔法だったが、アレは意外と使える気がする。

 いや、それほどでもないか?

 周囲の風景を反射させても後ろの光景が見える訳では無いから完全に消えた様に見える訳では無い。違和感が残る空間が出来てしまう。

 それに待ち伏せで使うにしても、普通に気配を消して地形や遮蔽物を使って隠れた方が早い。

 まあ、その内に上手い利用法も思い付くだろう。


 ちょうどその時、おずおずという感じでモンソン姉妹のエルサがホッグ車から降りて来た。

 続いて妹のクラーラが降りて来たが、一斉に村人の視線が彼女に向かった。

 正確には胸に抱き抱えている白猫姿のエレムだ。

 視線の圧力にビクッとしたクラーラだったが、すぐに落ち着きを取り戻した。


「すごいですね、シロチャン」


 向けられている視線が自分ではなく、白い仔猫のエレムだとすぐに分かったのだろう。

 一方、エレムに視線を向けている村人は徐々に信じられない、という段階を経て、確信の境地に到達したのだろう。

 自然と膝を付いている。


 信じられないという気持ちは理解出来る。

 何故なら、この村を庇護している精霊のルクナマクスは日常的に顕現しない。

 いつもは気配と幻影と声で村人と接して来たとエレムから聞いているからだ。

 


「まさかと思いますが、そちらの白い愛玩獣ペテナ・ディエラン現世神スピリウス様でしょうか?」


 そう言葉を掛けて来たのは、この村に着いた時に真っ先に挨拶をして来た、このルクナ村の村長を務めている代官だ。

 歳は50歳台半ばか? 

 領地としてのルクナ村は、離れた谷間に在る村に居る騎士爵の領地だが、代々代官を務めている一族の長が実質は治めている。

 騎士爵家もこの村の特殊性を理解していて、敢えてその様な統治をしている様だ。


「ああ、そうだ。最近は愛玩獣ペテナ・ディエランの真似事をする様になって、懐いているのか、この子と一緒に居る事が多いな。エルサ、クラーラ、この村の長だ。挨拶をしなさい」


 呼ばれた姉妹がこちらに来て、リリー仕込みの時候を織り込んだ挨拶とカーテシーを披露した。

 うん、結構、様になっている。


 新領に着けば、練習成果を披露する事は無いだろうが、何事も覚えておいて損は無い。

 その良い例が俺だ。

 平民で一生を終えると思っていた俺が今では男爵様だからな。

 それ故に、今もこの村の代官が直接応対しているという訳だ。

 

 さて、人間の挨拶の時間は終わりの様だ。

 これまでじっと待っていた精霊のルクナマクスが顕現をしようとしている。

 とはいえ、影響を考えてか、寸法が小さい。

 だからと言って、俺の膝位の高さで顕現しなくても良いと思う。



『ほう、ゼアスキ%#*※Йが探していたわらべはコイツであるか。ふむ、かなり変わった人型マヌである事よ。誓人スピルフでも無いのに大きな器を持っておるの。それに複数の恩寵を賜りながらも廃人にならなかった事はゼアスキ%#*※Йの目が正しかったという事だな」


 ここに至って、ルクナマクスが顕現している事に村長むらおさを初め、村人全員が気付いた。

 その姿は水で出来た若木という例えがぴったりだ。

 まあ、どうやって声を出しているかはさっぱり分からないが。



「ルクナマクス様、長年に渡りこの村を庇護して頂いた事、村人を代表して、心から感謝を申し上げます』

「ふむ、礼は受け取ろう。で、ゼアスキ%#*※Йよ、人型マヌ人型マヌ同士で語り合う事も有ろう。我らはいつもの場所に行くとしよう」

「そうだな」


 エレムが白い子猫の姿のまま、言葉を発した瞬間、再度村人が驚いたと言った反応を示した。



 



お読み頂き、誠に有難う御座います。



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