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第71話 『従士募集応募者』

2025-06-05公開



〔王国歴378年 主地神月オウツゼウルラーザ8日〕



「エリクソン閣下、従士の募集に応募が有りましたぞ。討伐士6級の兄弟で、2人でパーティを組んでいる様です。29歳で同い年? ああ、双子ですね。面会をするなら言って頂ければ手配をしておきますが?」


 そう言って、トーマス・グスタフソン遠境爵の筆頭騎士爵マイヤーさんが3枚綴りの手紙を渡してくれた。


 今日もダンジョンでエレムが先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン1体を『再現』したので連れて帰って来たら、門番から従士に昇格したブロノさん(後任が見付かるまでは仕事は門番のまま)が、マイヤーさんからの遠境爵邸に寄って欲しいという伝言を教えてくれた。

 

 用事までは分からなかったが、執務室で会って挨拶が終わった途端に冒頭の言葉が出て来た訳だ。


 手紙の形を取っているが、内容は応募してくれたという兄弟の事を書いた討伐士組合組合長からの紹介書だ。

 1枚目はほぼ時候の挨拶が綴られ、2枚目には実家の事も含めたこれまでの経歴が書かれ、3枚目には応募した動機が書かれていた。

 まあ、貴族の定型文に則っているから長々とした文章になっているだけで、異世界なら「りれきしょ」1枚で纏まる内容だ。


「そうですね、面会したいですね。敢えて自分みたいな成り上がりの男爵の従士になりたいという、本音を知りたいですからね」

「分かりました、明日、6の刻に討伐士組合会館で宜しいですか?」

「ええ、それで構わないですよ。そう言えばグスタフソン閣下の方の応募は順調ですか?」

「まあ、順調と言えば順調ですね。ですがなにせ従士36人という数は多いですから集まり切らないでしょうけど。ただ従士は無理でも徒士かち向きの人材として採用した人間は多いので、その面は助かっていますね」

「なるほど」


 遠境伯ともなれば、従士団だけでなく、徒士団も構成しなければならないのだろう。

 まあ、ある意味、討伐士を囲う訳だが魔獣ゴレーザー・ディエランの大氾濫に備えて、戦力の確保は必須なので、無駄にはならないしな。

 

 取り敢えずグスタフソン遠境爵は不在なので、マイヤーさんに辞去して、帰宅した。

 


 うーん、慣れないな。

 何がって?

 帰宅の出迎えに、リリーに加えてエルサとクラーラの姉妹が加わっている事だ。

 出征前はアルマとエッサの2人を加えた3人で帰って来て、リリーだけの出迎えだった。

 玄関で4人で軽口を叩いた後、着替えの為にそれぞれの部屋や家に向かうという儀式だったからな。

 その記憶が邪魔をして、どうしても違和感が有る。

 まあ、慣れると思うが。


 着替えを用意して、3人に簡単に状況を説明した後で、手紙をリリーに渡してからお風呂に向かった。

 

 うーん、狙いが分からない。

 実家から依頼を受けて新しい領の内情を探る為、というのは当然あり得るが、兄弟で応募する意味が分からない。

 まあ、明日、会えば分かるか。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



〔王国歴378年 主地神月オウツゼウルラーザ9日〕



 約束した時間に余裕を持って討伐士組合会館に着いたが、もう従士応募者の兄弟は小会議室で待っているという事だった。

 ふむふむ、かなり優等生と言える行動だが、会うまでは判断保留だな。

 討伐士組合の手が空いている職員に案内してもらい、指定された小会議室に着いたが、中からは緊張した気配がした。

 うん? 思っていた人物像とは違うのだろうか?


「フレット・スタール6級討伐士、カレル・スタール6級討伐士、エリクソン閣下がお越しです」

『あ、はい、どうぞ、入ってもらって下さい』


 うーん? 本当に緊張している? 


「失礼しますよ」


 敢えて軽い感じで言葉を掛けて小会議室に入ったが、座っていたと思しき椅子の横で2人の男性が立ち上がって待っていた。

 何と言うか、見るからに本当に緊張している。

 小会議室の奥側に用意された椅子迄進んだが、案内してくれた職員はそのまま室内に残る様だ。

 説明は受けていないが、立ち合いをするという慣習が有るのだろう。


「どうぞ、座って下さい」

「あ、ありがとうございます」


 本当に緊張しているな。 

 

「エリアス・エリクソンです。陛下より男爵位を賜っています。まずは、エリクソン男爵家の従士募集に応募して貰った事にお礼を」


 いきなり感謝の言葉を言われると思っていなかったのか、2人とも慌てて言い募った。


「いえ、エリクソン閣下にお礼を言われる事では有りません、お礼を言うのはこちらの方です」

「そうです、こちらこそ本当にありがとうございました」


 そう言った後、椅子から立ち上がって、平民が貴族にする、跪いて深く首を垂れる礼をした。

 これをされると、貴族としての対応をする事になる。


「感謝は受け取った。では、椅子に座り直してくれ。ただ、どうしても聞きたい事を最初に訊くが、何故、出来たばかりの男爵家の従士になろうと思ったのだろうか?」


 答えは言葉ではなく、チラッと俺の後方上空に向いた視線だった。



 エレム、オマエカ・・・・・






お読み頂き、誠に有難う御座います。


 それと、誤字脱字報告をして頂いたのですが、お名前を控え損ねてお礼を書けなかったので、この場を借りてお礼申し上げます m(_ _)m




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