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第67話 『討伐士組合での会談』前編

2025-05-25公開(注*2025-05-24に第66話を公開しています)



〔王国歴378年 主地神月オウツゼウルラーザ5日〕

 


「悪いな、わざわざ出迎えさせて」


 

 トーマス・グスタフソン遠境爵がいつもの口調に戻して言葉を掛けたのは、グスタフソン領の討伐士組合組合長だった。

 グスタフソン遠境爵と同年代に見える組合長は、元は討伐士だったそうで、現場を離れても鍛錬を怠っていないのだろう。服の上からも分かるが、動ける体形と筋肉量を維持している。 

 彼以外にも男女3人が討伐士組合会館前で待っていたが、3人とも討伐士上がりには見えない。


「いえいえ、今話題のグスタフソン閣下とエリクソン閣下にわざわざ来て頂いているのですから、むしろこちらの方が恐縮ですよ。さ、レンホルム閣下も、どうぞ、中にお入り下さい」



 この討伐士組合会館で1番大きな会議室は、会談の場にセッティングされ直していた。

 討伐士組合側からの4人、貴族側からの3人が向かい合う様に置かれた、見るからに高価そうな席に着席した。

 その他の要員はそれぞれの後ろに設けられた席に座る。

 

 護衛役の従士は主人の後ろに立って警戒するのが本来の慣例だが、グスタフソン遠境爵と討伐士組合組合長が旧知の間柄と言う事で、省かれている。

 それぞれの自己紹介が終わった後、本題に入る前に飲み物が配られた。

 その配られる空き時間で組合長が言葉を発した。


「しかし、グスタフソン閣下とエリクソン閣下も前代未聞の昇格ですが、王都ではその分大変だったのではないですか?」

「ああ、王宮に巣食っておるヤツラは足ばかり引っ張る輩ばかりだったな。ああいうのを見ると陛下の日頃の苦労が察せられるな」

「他人の功績を自分の功績にする事が最上の喜び、という輩の巣窟ですからね」

「言い得て妙だな」


 飲み物が配り終わった。


「改めて、御訪問頂き誠に有難う御座います。今回、異例の事態の為、事前に打ち合わせをしておきたいと思っていた所、グスタフソン閣下から連絡を受けて、この場を設けた次第です」

 

 組合長は出席者の顔を見渡した。

 書記役の職員が速記するカリカリと言う音が聞こえる。


「まず、この領の討伐士組合の運用と討伐士区画の統治にはグスタフソン閣下とエリクソン閣下からの並々ならぬ支援が有ってこそという事が言えます。もし無ければ、ここまでの治安維持は難しかったでしょう。改めて御礼申し上げます」


 その言葉の後で、組合長と3人の組合役職者が一旦立ち上がって片膝を付いて頭を下げた。

 

「礼は受け取った」


 4人が座り直した後、話し合い本番が始まった。



「まず、1番にお伺いしたい事は、エリクソン閣下の先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン8体の今後の扱いです。もちろん、新領でも必要だという事は重々承知していますが、何体か継続して置いて行く事は可能でしょうか? 区民からも要望が出ており、もし全て居なくなると統治に支障が出かねないというのが正直な実感です」


 そうだろうな。

 導入後は日々改修を入れたから、人間の衛士よりも有能と断言出来る。

 

「実はさきほど開拓村で、農作業支援用のジュウゴウ、ジュウイチゴウ、ジュウニゴウ、ジュウサンゴウの4体を含めて、12体全てを置いて行く宣言をしたところです」


 俺の言葉を聞いて、4人ともホッとした顔をした。


「有難う御座います。心配していた区民が喜ぶでしょう」


 明らかにホッとした空気が組合側に流れた。


「横から済まないが、エリクソン卿の先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンはそれほど受け入れられているのだろうか? 確かに特筆すべき戦力とは思うが」


 レンホルム男爵がそう言って組合長に尋ねた。


「当討伐士組合の見解では、全ての村や町で導入するべきと評価出来ます。何と言っても制圧力が凄いんですよ。討伐士でもかなりのベテランで無いと手を出せません。棒術だけも強いですが、『麻痺の魔法』を喰らったら、意識は有っても立てなくなるんですから、魔道具として売り出して欲しいくらいです」


 『麻痺の魔法』はエレムが悪乗りで造り出した魔法だ。

 元は異世界で『てーざーじゅう』という電気やらを使う武器だが、それを一工夫した上で魔法で再現している。

 雷属性は未だ未発見だから、初見で弱点を見破るのは不可能だろう。


「それと会話が成り立つ魔獣ゴレーザー・ディエランなんて、初めて見ました。まあ、おしゃべりと言うには口数は少ないですが、それでも衝撃でしたね」



 一瞬、耳から入った言葉が理解出来なかったのか、レンホルム男爵が首を傾げた。






お読み頂き、誠に有難う御座います。

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