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第63話 『姉妹』

2025-05-17公開



〔王国歴378年 主地神月オウツゼウルラーザ4日〕



「えーと、リリー、その2人について教えてくれるかな?」



 今現在、我が家の居間リビングに置かれたソファの片方には俺が座り、その向かいにはリリーと、彼女と同じ歳くらいの女の子、そして更に3歳くらい下の幼い女の子の3人が座っている。


 凱旋の出迎えに来ていたリリーと一緒に居たので、2ヵ月もの出征の間に出来た友達だと思って軽く挨拶をしたんだが、何故かそのまま自宅まで付いて来た。


 女の子2人は姉妹なのだろう。

 髪の色が赤毛で揃っているし、顔の造形もよく似ている。

 姉と思われる少女はリリーの服を着ていて、妹の方は昔着ていた服を仕立て直した様だ。

 

「まず、紹介しますね。見て分かる通り2人は姉妹で、お姉さんのほうがエルサ・モンソンさん、妹さんの方がクラーラちゃんです」


 紹介に合わせて、姉妹は頭を下げた。

 その仕草に違和感を覚えた。

 

 なんだろう、違和感の正体は分からない。


「自己紹介の必要は無いかもしれませんが、リリーの兄で男爵位のエリアス・エリクソンです」


 その言葉に対する反応は三者三様だった。


 リリーは『あっ』という顔になり、姉が『オキゾクサマダァ、初めて見た・・・』と2つの言語で呟き、妹の方はよく分からないなりに、取り敢えず言葉を返して来た。


「コンニチハ」


 ああ、違和感の正体が分かった。

 さっきの仕草は仮初かりそめの人生でよく見た『オジギ』というヤツだった。


「モシカシテニホンジンダロウカ?」


 片言ながらもニホンゴで訊くと、姉妹は驚いた顔をした後で姉が勢い込んで答えた。


「ソウデス。リリーチャンノオニイサンモニホンジンナンデスネ?」


 2人は心から安心した表情になったが、残念なお知らせを告げる事になる。


「違うよ。ある事情で二ホンの記憶は有るが、暮らした事は無いよ」


 エレムなら事情が分かるか?


「エレム、分かるなら状況を説明してくれ」


 ローテーブルの上に、エレムが『二ホン』でよく見掛けた小型の野獣ノナ・ディエランの姿で顕現した。

 体色は真っ白だ。


「あ、シロチャン」


 という声が聞こえた。声を上げた妹の方が頭を撫でようと右手を伸ばした。

 意外な事にエレムはおとなしく撫でられた。


『どうやら妖精に悪戯をされた様だ。「異世界知識【小】」を使われているな』

「俺の『異世界知識【微】』とどう違うんだ?」

『記憶だけでなく意識も植え付けられるので、やられた方は自分は元ニホンジンと思い込む点が違うな』


 その説明の最中もエレムは大人しく撫でられていた。


「大人しいな。何故だ?」

『この姉妹をここに向かわせる為に何度も顕現したからな。その時に使ったのがこの『コネコ』の姿だ。その時に撫でられたから慣れている』


 そう言えば、出征の最中も、王都に居た時も、ちょこちょこと姿を見せない事が有ったが、そういう訳か。


 ここで、リリーが再起動した。


「お兄様、今、この白い野獣ノナ・ディエランが急に現れたみたいに見えたのですけど? もしかしてエレムちゃん?」


 そう言うリリーの視線は白いネコに釘付けだ。


「そう言えば、リリーは初めて見るのか? 俺の半身のエレムだ」


 その言葉に合せるかの様にエレムがゴロンと横になった。

 相変わらず妹の方に頭を撫でられているが、あざとい事に、身体をリリーが撫で易い様に角度まで考えてやがる。

 

「可愛い・・・」

「どうやら、リリーも撫でて良いそうだ」

「本当ですか? エレムちゃん、撫でて構いませんか?」


 返事は「ニャー」という鳴声だった。

 しかも気持ち良さげにゴロゴロとのどを鳴らす芸当まで駆使しだした。



 本当にあざとい。






お読み頂き、誠に有難う御座います。




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