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第59話 『カールソン子爵の嫡男』

2025-05-01公開



〔王国歴378年 天陽神月ゼントゼウルラーザ35日〕



「そうして敵の部隊を退しりぞけたのは良いが、このままでは功績としては不十分だと思った儂は、更なる功績を求めて戦場を移動する事にしたんだ。その頃には撤退する家も出ていたぐらいで、どの家もバラバラに動いていたしな」



 只今、叔父さんの独演会を絶賛開催中だ。

 お酒も入っているし、自分の跡継ぎのリュドに自慢したい気持ちも有って、如何に戦場いくさばで活躍したかを身振り手振りで語っている最中だ。 


 トーマス・グスタフソン遠境爵、ミカル・レンホルム男爵、ウィッセル騎士爵の3人も、初めて語られる叔父さん視線の戦いに興味が有るのか、時々感心した様に頷いている。


「別の方向から進撃して来た王国の部隊が、派手な魔法を大量に放って、敵の囲いを破って進んでいると、撤退する他の騎士爵家から聞いてのう。それを聞いた時には、これは好機と喜んだものだ。考えてもみよ。そんな強力な部隊に助力すれば、手柄など勝手に転がり込んで来るからの」


 

 うん、そこでその部隊ごと撃退されるという可能性を考えなかったから合流して来たんだな。

 普通は好機と考えないけどな。合流するまでに囲われて袋叩きになるかも? とも考えなかった叔父さんの勘が冴えたという事だろう。


「合流したら、エリアスが先頭近くに居るではないか? 我が目を疑ったぞ」

「父上、その時、エリアス兄さまはどんな風だったのですか? さぞや英雄の様な勇ましい活躍をされていたんでしょうね」



 従弟のリュドが知らない間に、俺を英雄視している事が今日最大の驚きだった。


 なんせ、目をキラキラとさせているし、時々俺を眩しい様な目で見て来るからな。

 これまで見た中で1番興奮しているが、こういう話にここまで好奇心を抱くとは思わなかった。

 野心家の叔父さんと違って大人しい子だという印象しか無かったリュドの知らなかった一面を今日知った。ここの離れにリリーと一緒に暮らしている間は殆ど接触が無かったしな。


 カールソン子爵家を継ぐ予定のリュドは今年10歳になったから、2年後には『恩寵の儀』と『成人の儀』を迎える。

 まあ、英雄に憧れる年頃なのかもしれないな。



「それがな、周りでは命のやりとりをしているのに、村の道端で久しぶりに会ったかの様に、普通に言葉を返して来たんだ。『お久しぶりです、今日は良い天気ですね』とでも言い出しそうな口調だったぞ」


 いや、それはさすがに話を盛り過ぎだ。

 ちゃんと「お久しぶりです。でも、どうしたんです、こんなところまで来て?」と答えたぞ。


「すごいなぁ。恐れを知らないって事ですよね?」


 そう言って、俺に憧れの英雄を見るかの様な目を向けて来る。


「いやいや、叔父さんが大袈裟なだけだ。そりゃあ、ちゃんと怖かったさ。まあ、先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンが5体も一緒に居たから、その分心強かったのは確かだな」



 リュドの表情が新たに興味引くものが出て来た事で更に輝いた。


「そうです、先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンの話も訊きたかったんです。すごく活躍したと聞きましたが、本当ですか?」


 そう言って、食い気味に訊いて来た。


「ああ。かなり活躍してくれたし、俺の意図通りに手加減もしてくれたしな」

「手加減ですか?」

「ああ。リュド、人間の本当の敵はなんだと思う?」

「侵略して来たバラゴラ帝国ですよね?」

「違う。人間の本当の敵は人間を襲う魔獣ゴレーザー・ディエランだ。バラゴラ帝国は侵略して勝ったからと言ってその地の人間を全員殺す事はしない。でも魔獣ゴレーザー・ディエランは可能な限り人間を殺そうとする。これは諸神の怒りを買ってしまった時代から変わらない真理だ」


 リュドは俺の言葉を聞いて消化するかの様に考え込んだ。


「そうですね、確かに魔獣ゴレーザー・ディエランが1番の敵でしたね」

「だから、俺は人間同士が戦う事は無駄な事だと思っている。そういう理由で、バラゴラ帝国が侵略して来たからと言って、全員を殺す事は望んでいない。魔獣ゴレーザー・ディエランと戦う仲間だと思っている。だから先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンには殺さずに骨折だけに留めておく様に指示を出していたんだ」


 ここで得心したかの様にウィッセル騎士爵が声を上げた。


「ああ、それであんな武器を使っていたんだ? 何故、剣とか槍とかを使わないのかが分からなかったけど、これで納得だ」

「ほう、どの様な武器を使っていたのかな?」

「鉄で出来た細長い筒ですよ、男爵。野営中は陣地を囲う柵に使っていましたが」

「そんな武器で?」

「獣車に積んでいるので、明日にでもお見せしますよ。そうそう、使った筒はすぐに分かります。ボコボコになっていますから」

「見るのが楽しみだ」



 その後、叔父さんの独演会が終わり、明日に備えて早目に床につく事になったが、リュドには明日の午前中に先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンを心行くまで見せる約束をした。



 メチャクチャ喜んでいたので、転封後に余裕が出来ればリュドに1体プレゼントして上げるのも良いな。

 思ったよりも懐いてくれたしな。


 『恩寵の儀』で貰う恩寵が分からないから、多目的型にして常に身近に居れる性能と機能を盛り込んだ特製にして上げようか。

 きっと喜ぶだろう。

 まあ、それの出来を見てからリリー専用の多目的型特製体の製造に取り掛かるんだがな。

 

 

 

 


お読み頂き、誠に有難う御座います。


 

 この小説はその時のノリだけで書いていますので、もし以前に書いた部分との矛盾が有る様ならば、①温かい目になる②時間が有り余っていたらmrtk宛にやんわりと知らせる③見なかった事にする、の中から対処をお選び下さいませ\(^o^)/



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