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第48話 『火力支援』

2025-03-25公開



〔王国歴378年 天陽神月ゼントゼウルラーザ20日〕



『突っ込んで来るぞ!』

『第1列、勢いを殺す事に専念しろ! 第2列は絶対に止めろ!』

『死んでも通すな! 止めれば潰せるぞ!』

『第3列は号令に遅れるな!』



 距離も無くなって来たせいか、バラゴラ帝国軍からは、なかなか気合が入っている号令や掛け声が微かに聞こえて来た。

 弓矢での攻撃は効果が無いと見切りを付けたのか、弓兵は更に後方に下がった様だ。

 第1列・第2列に盾兵、第3列に槍兵という布陣だった。

 それを2層分配置して俺の突撃を待ち構えている。


 最初に喰らった騎獣突撃にも対応する為に盾兵の層を厚くして来たな。

 しかし、2列の盾兵は騎獣突撃に備え過ぎている。その証拠に第2列までも水平方向の衝撃に備えている。

 まあ、王国部隊が弓兵を用いていない現状では、上方から降り注いでくる弓矢の攻撃は無視して、騎獣突撃一本に備える考えも分からないでもない。

 

 ただ、今回は騎獣突撃ではない。

 俺と先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン5体の突撃だ。

 ちょっとばかり可哀想だが、想定外の突撃をさせて貰う。


 異世界で観た、戦争で島に上陸する戦いの攻守両方の軍隊の攻防を描いた「えいが」では、上陸前に「かんぽうしゃげき」というのを執拗に行っていた。

 それによって、事前に布陣している守備側の部隊の抵抗力を排除する訳だ。

 今回の突撃も考えればそっくりな構図になる。

 待ち構えている守備側を徹底的に崩してから突入する事で、帝国の戦列を突破して、柔らかい部分を食い破って進めるだろう。


  

 「かんぽうしゃげき」の代わりに、呼吸5回分の持続時間にした中級の火系魔法をたっぷりと第1列から第3列に降り注ぐ様に投射する。

 これだけ大規模の魔法発動となると『中距離用火炎魔具』では追い付かないので、俺自身が術式を発動させた。

 1人が生み出したとは思えない量の火炎が1度に発生すると同時に帝国軍の戦列に向けて飛翔する。


 うん、暑い。いや、熱いか?

 低温の摂氏1200度の赤炎にしたとはいえ、大量の火炎の余熱をもろに被る形になってしまった。 

 慌てて前方の露払いの風系障壁の発動線を目の前に張り直して、第2射を投射する。

 今度は余熱は風の障壁に阻まれて温度上昇は無い。


 続けて第3射を投射。


 帝国軍の前線は阿鼻叫喚と言うのがふさわしい状態になって行く。

 今さら第2列が盾を頭上に掲げて火系の魔法に対処をしだしたが、ここまでで結構な数が着弾して燃えている。

 それに、上に掲げるという事は水平方向からの衝撃に弱くなるという事だ。

 

 第2層に向けての第5射を放ったところで敵の第1層とぶつかったが、抵抗は無きに等しい。

 水系の魔法を使えない限り、5呼吸間だけの接触とはいえ広範囲の火傷は必至だ。動物である限り、着ている服が燃え出したら命の危険を感じて消火に意識が行くのは当然だ。

 そんな状況で戦列を維持するなど、不可能の一言だ。


 易々と2層の第5列迄喰い破った頃に、後方から聞こえる騒音に騎獣ハッグのいななきが加わった。

  

 なるほど、俺たちの後に続けば、労せずして戦果を拡大出来ると気付いた誰かが居たのだろう。


 チラッと後ろを見ると、トーマス・グスタフソン騎士爵を先頭に、騎士爵部隊が追随していた。

 こちらとしても、戦果の拡大を後続に任せる事で、帝国軍側の対処も分散出来るから願ったりかなったりだ。 


 先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン5体の戦闘力は、帝国の戦列をズタボロにするには過剰なものだった。

 手にしている武器は、鉄パイプなんだが、今では魔力を流し込む事で鉄パイプ以上の物になっている。

 おかげでガンガンと槍や剣と打ち合わせても傷が付かないし曲がりもしないんだ。

 もはや作業の様に第2層第3列の槍兵の腕や脛の骨を骨折させている。


 よし、第2層も喰い破った。

 一瞬で前方の状況を確認したが、第3層の構築が間に合わないせいで、組織的な抵抗は無さそうだ。

 それに、あっさりと重厚な守りを破られた衝撃と、先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン5体が発する威圧感に完全に浮足立っている。

 


 数呼吸だけ生まれた狭間の時間を使って、目的地辺りの様子を確認したが、ちょっとヤバいな。


 取り残されたハールトセン侯爵家の騎獣部隊も前進を諦めて円陣を組んで、粘り強く守備を固めているが、崩壊までの時間はさほど残されていない。


 ここから援護するならどうする?


 距離が有るので、いつも使う中級の火系魔法では届かない。

 効率が悪くなるので無駄な魔力を使う事になるが、従属属性の運動属性をかなり多めに中級火系魔法に突っ込んで、無理やりに届かせる事にする。

 『遠距離石弾魔具』を開発していて良かった。

 自分でやっておきながらハラハラしながら着弾を見届けたが、1発だけハールトセン侯爵家部隊の間近に弾着がズレたけど、数十発の弾着は包囲している帝国軍の頭上に降り注いだ。


 半ば賭けに近かったが、まさに僥倖としか思えない結果だ。

 だが、運も実力の内だ。


 いや、あの兄弟の悪運の強さが呼んだ結果かもしれんな。




 

お読み頂き、誠に有難うございます。

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