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第45話 『転進』

2025-03-15公開



〔王国歴378年 天陽神月ゼントゼウルラーザ20日〕



「そろそろ限界だな。転進に備え!」



 第5列まで食い破ったところで、トーマス・グスタフソン騎士爵が再び大きな声を上げた。

 瞬間的に安全を確保した後に右側を見ると、確かに俺たちグスタフソン領部隊と違って、騎士爵たちが形成する第1列は大きく遅れ始めていた。

 ちょっと前に見た時より更に遅れが酷くなっている。


 いや、俺たちが突出し過ぎていると言うべきか?


 そりゃあ、片や3級相当の脅威度の実力を隠しながらも、ウィッセル従士とヨハン従士をやり過ごして後ろから襲い掛かろうとする敵兵を余裕で鉄パイプで無力化して行く化物アドバンスド・スケルトン4体を擁するグスタフソン領部隊と、片や脅威度で換算するとたかだか7級や6級の4人で形成する他の騎士爵部隊では衝撃力の維持能力が違い過ぎるか。


 とは言え、グスタフソン領部隊も楽な訳では無い。

 前進速度も他の部隊に合わせる為に早歩きよりは速い程度に落ちている。

 そのせいで、集中的な襲撃を受けている。

 なんせ、戦列の端を務めるという事は、前面だけでなく向かって左側の、誰も相手にしていない手付かずの敵も相手もしているという事だからな。



 まあ、その最たる負担を担っている俺だが実はまだまだ余裕だ。

 と言うか愛獣ハッグがノリノリなんだ。

 こいつ、さては戦闘狂だな? 隙を見ては首を振って敵兵を撥ね飛ばしている。

 ほんと、器用なもんだ。

 おかげで手綱なんて無意味だから、もう握ってさえない。

 それでも賢いのか、ちゃんと前進速度と進路の維持をしているから構わないが。



「ドミンゴ・ファーゴ殿! グッドルム・ハンセン殿! そろそろ転進する頃合だが、如何か?」


 グスタフソン騎士爵が大きな声で右隣と真後ろの騎士爵部隊に声を掛けた。

 普通は、敵に行動が筒抜けになる様な事を大声で言うなんて御法度だ。

 だが、そうでもしないと、アップアップの状態の味方に伝わらないのだから、仕方が無いと割り切っているのだろう。


「そ、そうだな。了解した!」

「こっちも了解した!」


 うん、応える声から必死さが伝わって来る。

 仕方ない、ちょっとだけ、圧力を弱めてやるとするか。


 腰帯に留めている小物入れから『中距離用火炎魔具』の杖を取り出して、5連発で魔法を発動する。

 普通に撃ち出したら、味方に当たりかねないので、わざと真上近くに撃ち出す。

 燃え盛る火炎が打ち上げられた後、上空で勢いを失って落ちて来る。

 うん、ドンピシャだ。

 打ち上げられた火炎を思わず見上げている敵味方だが、第1列と対峙していた敵側の後ろスレスレに一直線に落ちて、身長近い火柱が上がった。

 

 いきなり阿鼻叫喚の地獄が出現した。

 全力で殺しにかかるなら蒼炎にまで温度を上げるが、今発動した火炎魔法は抑えに抑えた赤炎だ。

 こちらではまだ温度を測る方法は無いが、異世界の単位でギリギリ燃えていると言える摂氏1200度くらいの火を再現している。

 数拍したら消滅する様にしておいたので、火傷をしても死にはしないだろう。

 


「グスタフソン騎士爵、進路を開きます!」

「任せる!」


 次は転進後の進路をこじ開けておく必要が有るので、ここで先進型鎧兵アドバンスド・スケルトンを投入する。

 一旦前面に出して転進する空間を大きく造り出す為に、左右の側面を固めていたヨンゴウ、サンジュウゴウ、サンジュウイチゴウ、サンジュウニゴウを引き抜いて、ウィッセル従士とヨハン従士の前面に押し出す。

 時間を掛けたくないので、容赦なく敵兵の脛の骨を一撃で叩き折る。

 槍対鉄パイプで決して武器としては勝っていないにも拘らず、一合か二合で勝負を付けているんだから、相当な技術差が有るのだろう。

 さすがエレムがノリノリで組み上げただけ有るな。


 そのまましばらく前線を押し上げたら、ヨンゴウを基点にグイっという感じで左に旋回させる。



 うん、敵兵もあまりにも先進型鎧兵アドバンスド・スケルトン4体が強過ぎて、後ろに後ずさっているな。




 すまんなナナゴウ。

 ホッグ車を任せっきりにしているが、ここまでちゃんと追随して来ているのはオマエのおかげだからな。ちゃんと分っているって。





お読み頂き、誠に有難うございます。


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