第30話 『第2次換装ゼロゴウ披露』
2025-01-30公開
〔王国歴377年 従地神月25日〕
「ほう、こうやって見ると、もう、剣装骸兵とか討伐士とか言うよりも、重装の徒士に近いな。徒士は普通、軽装なので違和感は有るが」
ガラスペン献上の件に時間を取られたが、何とか一段落がついた後で、第2次換装を済ませたフル装備のゼロゴウをグスタフソン騎士爵に披露したが、意外な感想を貰った。
「徒士ですか? 初耳なんですが、従士とはまた違うのですか?」
前にも書いたが、騎士爵位の貴族は有事の際に召集を受けた場合、従士3名と共に参陣する事が求められる。
俺とリリーの出身家のカールソン家は古くからの騎士爵位だったが、従士家は6家有り、いざとなればその内の3家の当主を引き連れて参陣する事になっていた。
だから徒士という身分の家は無かった。
「男爵位以上になると、貴族としての身の回りの世話、連れて行く騎獣のハッグの世話という実務上の理由も有るが、まあ、本音としては見栄の為に騎乗しない部隊を編成して随伴させるんだ。その部隊の指揮を執るのが徒士だ。そして、その部隊が馬車を使えない場所などで物資などの運搬も行う場合、背負子を使うのだが、その姿に近いって事だ」
なるほど。
言われてみれば、男爵位から上位の貴族は例外なく永代貴族だ。
それは、貴族としての見栄を軽視出来ないという事になる。
「まあ、俺の実家が徒士家なんで、その辺りの話に詳しいだけだ」
「なるほど、そういう訳ですか。理解しました」
「しかし、コイツは見れば見る程ヤバいな。バチバチに戦闘に特化してないか? 昨日見た時にはそんなに強そうじゃなかったのに、今日は本当に強そうな雰囲気が出てるぞ」
さすが、討伐士3級まで行ったグスタフソン騎士爵だ。
長年、魔獣と殺り合って来ただけあって、俺の評価で脅威度4級でも上位と見ている第2次換装後のゼロゴウの強さというか強者感を感じている様だ。
「これくらい強くなるとは思っていましたが、まさか強者の雰囲気まで纏うとは想定外でした。取り敢えず、しばらくは村の周囲とダンジョンで経験を積ませる予定です」
俺の言葉にグスタフソン騎士爵が疑問を持ったのか、「ん?」という表情をした。
「自分の恩寵の『傀儡使い』は何故か『魔獣使い』と違ってテイムした魔獣を成長させる事が可能です。出来れば外部には内密にして下さい」
「傀儡使い」の上位互換とも言える「魔獣使い」は、成長し易い恩寵として有名だが、それはテイム出来る魔獣が上級に上がって行くだけで、テイム後の魔獣が成長する訳では無い。
「魔獣使い」の討伐士が、森林魔狼を使役する場合、戦力を強化しようとすれば、追加でテイムして数を増やす事で脅威度を上げて行く。
そして、頑張って4匹の森林魔狼を使役する段階まで行けば、4級の下位くらい脅威度になるが、ここまで来ればそれなりに食って行ける。
ただ、森林魔狼を増やせば増やすほど食費が嵩むので、更に上を目指すならば、剣角魔熊1頭に切り替える選択肢が出て来る。
この切り替えが難しいので、そのまま5匹目を追加するのが普通だ。
一方、俺の場合はかなり変則的だ。
最初は7級相当の剣装骸兵だったゼロゴウを、5級相当に成長させた事自体が実は異常なのだ。
それを更に先進型鎧兵に換装して4級上位相当まで引き上げた。
ちょっと性急にやり過ぎた感が有るな。
で、今さらながら内密にしようとしているが、実際は無理だろう。
「無理だろうな。次に隊商が来たら速攻でバレるぞ」
「ですよね・・・」
こうなれば、あと3体の先進型鎧兵を早急に用意しよう。
リリーの身辺警護用が最優先で、アルマとエッサの2人用の2体で計3体だ。
取り敢えず、そこまで増やせれば、想定される事態に対処が可能になるだろう。
お読み頂き、誠に有難うございます。
 




