第27話 『アドバンスド・スケルトンへの期待』
2025-01-21公開
〔王国歴377年 従地神月24日〕
「おや、また鋼兵モドキをテイムしたのか?」
「ええ。ちょっと実験をしたかったんで、ちょうど良かったです」
「どんな実験だい?」
「まあ、それは成功してからのお楽しみって事で」
「ま、良いか。では、入れ」
門番のアールトさんがそう言うと、ペール君が人間用の門を開けてくれた。
自分たちの小屋に帰る前に領主館に向かったが、その間に会った村人の反応は2度目という事も有り騒がれる事も無かった。
まあ、1体目と2体目の違いに気付いた村人も居たが、その全員が元討伐士というのは納得だ。
「ほう、そんな事が可能なのか?」
グスタフソン騎士爵はそう言うと、ソファアに座る俺の後ろに立っているゼロゴウとアルミ製人形2号機を見比べた。
「多分、問題無く換装出来ると見込んでいます」
「もし上手く行く様なら村の戦力が大きく上がるな。今でさえ5級相当だから4級相当まで行くか?」
「それくらいにはなりそうですね」
「その話が本当なら、この村にとってかなり有難い話になるな」
グスタフソン騎士爵は素直に戦力向上の見込みを喜んでくれた。
ゼロゴウは今でも5級相当の脅威度になるが、今の装備ならこれ以上は上がる事も無いだろう。
いくら魂殻に刻まれた命令を上書きして応用力を上げようとも、剣装骸兵の弱点が克服出来ていないからだ。
そう、弱点でもある魂殻が肋骨の間から見える問題は解決していない。
間に合わせで、使わなくなった村の備品の古いレザーアーマーを譲って貰って着せているが、肉体が無いせいでブカブカで、詰め物をして固定用の革帯をきつく縛って何とか着せている状態だ。
おかげで激しい動きをすると、ズレてしまうし、少しとはいえ動きそのものを阻害している。
先進型鎧兵に換装出来れば、その弱点が無くなるどころか、全身鎧を着ているのと変わらなくなる。
守りに弱点が無くなったゼロゴウは4級相当の脅威度に位置付けても良いだろう。
「しかし、4級相当の魔骸種か。数を増やす事が出来れば、村の守備面の心配は大きく減るな」
「そうですね、2体1組で何組かを編成して、周辺の魔獣の間引きや巡回を任せるのも有りですね。村人が林や森に採取に行く際にも護衛として役立つでしょう」
「おお、それは良いな。元討伐士なら自衛が出来るが、村人全員では無いしな。子供がおやつ代わりの木の実を採りに林に入る際にも役立ちそうだ。それと最大の懸念だった村外からの人口流入にも光が見えるな」
普通の開拓村なら、俺とアルマとエッサの3人パーティでも過剰戦力気味と言えるのに、更に4級相当の戦力がこれからも継続して追加されるなんて、グスタフソン村はどこを攻めるんだと言われかねない。
とは言え、この村はダンジョンの発見によって発展が見込まれるから、戦力強化は待った無しと言える。
村の戦力強化をけちれば、待っているのは治安の悪化だ。
新しいダンジョンが発見されると、あちらこちらから討伐士が集まって来る事は当たり前と言えば当たり前だ。
そうなれば、刹那的な欲望を満たそうとする輩もそれなりに流入する。
それに、出来てから時間が経った村や町と違って、こういった出来たばかりの開拓村なんて土台の人口が少ないから、人口比があっさりと逆転して旧住民と新住民の間で緊張状態が発生したりもする。
対処する方法はシンプルに治安維持が可能な戦力を持つか、住む場所を分けて接触をしない様にする事が手っ取り早い。
だが、住む場所を分ける為に開墾をしようにも、そんな人手がどこに有る?って話だ。
となれば治安維持に必要な戦力を用意しないといけないが、同じ理由で無理だ。
だから、ほとんどの村はダンジョンに関係した産業に依存した村になってしまう。
まあ、それも有りと言えば有りだが、グスタフソン騎士爵はそれを良しとしない様だ。
一歩間違えれば治安が悪化するし、歪な発展になりかねないからな。
そこで、村人の代わりに、治安維持や開墾を先進型鎧兵か剣装骸兵に任せる事が出来れば、それらの問題はかなり解決する訳だ。
ゼロゴウが単独で、村の外周部巡回を問題無く終わらせた事も大きい。
とは言え、実際に先進型鎧兵が、俺たちの期待に応えられるかどうかを見極める必要は有るだろう。
という事で、ゼロゴウの換装が終われば、グスタフソン騎士爵に真っ先にお披露目をする事になった。
お読み頂き、誠に有難うございます。




