第23話 『スケルトンの秘密』
2025-01-10公開
〔王国歴377年 従地神月15日〕
「エレム、教育は進んでいる?」
第6階層から第5層に登るのに使う地中の裂け目の前まで戻ると、エレムが何故か正座をしたゼロゴウの後ろに廻って、手をかざしていた。
何と言うか、この光景を他人が見たら二度見する事は間違い無いな。
人型の異なる種類の魔骸2体が一緒に動かずにいるだけでも珍しいのに、片方が介抱している様に見えるんだからな(魔骸種は徘徊するのが仕事だと言わんばかりにひたすらウロウロとする習性が有るからな)。
しかも、介抱を受けている様に見える剣装骸兵は絶対に手放さない筈の片手剣とバックラーを自分の右側に揃えて置いているんだ。
人間と見れば殺意を振りまいて殺しに来る魔骸種が妙に人間臭く感じるのが珍しさに拍車を掛けている。
それはそうと、ゼロゴウをテイムした後で色々と調べた結果は結構新鮮な驚きが有った。
「傀儡使い」という恩寵を貰ったからこそ疑問に思った事が有る。
骸骨が何故動けるのか?って事だ。
普通に考えれば筋肉が無ければ動きようが無いではないか?
何故、誰もこんな基本的な疑問を持たないのだろう、と不思議な気分になったくらいだ。
答えは魔骸種独自の肉体系強化魔法を使用していた。
肉体が有った頃の範囲に薄く魔力を重ね合わせて、そこに肉体強化系魔法を掛けて疑似的な肉体を構成していた。
もっとも、物質的な肉体では無いから目には見えないし、当然ながら防御にも使えない。
まあ、魔法系の恩寵を賜った者なら魔力を感じるだろうが、きっと「魔骸には魂殻が有るんだから魔力を感じて当たり前」と考えて終わりだろう。
俺の様に自力で肉体強化系の魔法を編み出した人間だからこそ解析出来る事なんだろう。
そして、その事が分かってから改めて第6層に現れる剣装骸兵を全数解析すると、衝撃の事実が判明した。
男性型が5種類と女性型が2種類に別れたのだ。
どうしてそんな事になるのかを考えたが、このダンジョンを訪れた人間の情報を流用しているという結論しか出なかった。
何故、そんな結論になったのかって?
出て来た中に俺とアルマとエッサの骸骨としか考え様が無い骸骨が混じっていたからだよ。
13歳でしかない自分と同じ身長の、自分の骸骨を討伐する時の気まずさって無かったぞ。
もちろん、アルマとエッサの骸骨は丁重に完膚無きまでにバラバラにした事は内緒だ。
2級相当の魔法の一撃で、完璧にバラバラにした俺の勢いに、2人とも不思議そうな顔をしていたが。
そうそう、今では一目見ただけで誰の骸骨かが分かる様になってしまった。
ちなみに、ゼロゴウは従士のヨハン氏の骸骨だった。
まあ、骸骨の基が誰のでも良いんだが、俺たち3人とグスタフソン騎士爵のだけは避けようと密かに思っている。
やっぱり、何となく気まずいからな。
ヨハン氏の骸骨をテイムする事は全然気にならない。
ほら、従士として苦労しているから、今さら骸骨を使役しても気にならないからな。
エレムからの回答は順調だよ、という感じだった。
「ダンジョンの外に連れ出せそうか?」
このままここに置き去りにしても良いが、初めてテイムした記念すべき剣装骸兵だから、連れて帰りたいと思うのは自然の事では無いだろうか?
問題は上の階層に連れて行くには、洞窟の裂け目の様な場所を何個所か登って行く必要が有る事だ。
もちろん、俺たち3人とエレムは問題無い。
エレムの答えは、あと少しで運動系の制御精度と反射速度の向上の上書きが済むから、問題無いという事だった。
見捨てずに済んでホッとしたが、思わぬところから難問を突き付けられた。
「エリクソン様、もしかして自宅に連れ帰るつもりですか? リリーちゃんが怖がりますよ」
「私たち乙女の心は傷つき易いっスよ、エリクソン様」
言い返したいと言うか突っ込みたいところが有るが、リリーの事をすっかりと忘れていた。
うーん、どうしようか?
「可愛くすれば、無事解決っス」
一筋の光明を差し込ませてくれたのは意外な事にエッサだった。
エッサの言う通りにして帰還したが、村の門で門番2人に笑われ、道行く村のみんなにも笑われ、子供には俺たちの後を楽しそうに付いて来られ、かなり恥ずかしい目に遭う事になった。
まあ、第1層から第4層に生えている薬草の中から、咲いていた花をかき集めて、花冠に花輪に花腰帯と飾り付けたからな。
そのおかげで、リリーもあっさりとゼロゴウを受け入れてくれた。
スマン、ゼロゴウとヨハン氏。
取り敢えず、寝る前に、意味も無くゼロゴウとヨハン氏に心の中で謝っておいたのは内緒だ。
お読み頂き、誠に有難う御座います。
第24話の投稿は来週になります。
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