第22話 『ダンジョン最下層』
2025-01-09公開
〔王国歴377年 従地神月15日〕
「矮竜が生息しているから、第10層が最下層で決まりだな。まあ、想定内と言えば想定内だが、今日の所は手を出さずに帰ろう」
5日間掛けて第10層までダンジョン内の調査を進めて来たが、このダンジョンは第10層が最下層という事が確定した。
今居る場所周辺以外に、下に降りる階段や下に続く裂け目が無い事は確認済みだ。
もしこれ以上の階層が有るとすれば、下に通じるルートはこの崖周辺しか考えられないのだが、矮竜の群れが営巣しているから、下の階層が無い事はほぼ決まりだ。
元々、竜種は魔獣とは立つ位置が違う。基となる野獣が存在しない。
そう、魔獣と違って、魔獣化していない。
妖精のゴブリンモドキと意思の疎通が出来るのか、それとも支配されるのか、ダンジョンの最下層には生きている竜種が配置される。
もっとも、その話が100%かと言えば、最下層まで到達していないダンジョンも在るので、絶対とは断言は出来ない。
で、生命維持活動が必要な竜種の食料として、ダンジョンの最下層には魔獣化していない野獣しか居ないし、食物連鎖を保つために植物まで生えている。
それと、飛翔し易い様に天井までの空間が広く取られているし、1つのコロニーを維持する為に単純に広いし、体内時計のズレから来る問題を防ぐ為に自転周期に合わせた明るさ調整もされている。
要するに、かなり広い独立した楽園が出来上がっている、って事だ。
それらの兆候から、最下層かどうかは、竜種を発見しなくてもある程度判断が付く。
今回も第10層に着いて、最初に遭遇した野獣を倒した段階で予想が付いた訳だ。
それにしても矮竜か・・・
2級相当で、討伐の難易度は普通に高い。
1級相当の大翅竜に比べれば弱いんだが、群れを作っているのが厄介なんだよな。
まあ、どうしても素材が必要なら討伐するが、こっちから手を出さなければ、向こうからは襲って来ないから静観が最適だ。
いざとなれば、ダンジョン創造主のゴダンと交渉して、生え変わりの有るウロコとか牙なら平和的に手に入れる事も考えられるしな。
「仕方ない、竜伐者の称号は諦める事にするかな」
「さすがに親子仲良くしている矮竜にちょっかい掛けるのも興が削がれるしな」
後ろで何やら言っているが、少なくとも君たち2人で挑むのは危険を通り越して無理だからな。
取り敢えず、ここは迎合しておこう。
「2人の心が広くて、俺は嬉しいよ」
「いくら私らが心優しくて美しくて男にモテモテだからってそこまで褒めなくてもいいんですよ、エリクソン様」
「そうそう、もうモテモテで、困っちまうぜ、エリクソン様。ズバッとみんなに俺の女に手を出すなって言って貰わないと、エリクソン様」
うん、徐々に拗らせ具合が酷くなって来ている気がする。
「さあて、そろそろエレムの所に帰ろう。『ゼロゴウ』の教育がどれくらい進んだか、早く見てみたいからな」
「了っス」
4日前に初めて剣装骸兵をテイムしたが、その名前は異世界風に数字を割り振って付ける事にしたんだ。
いや、個別に名前を付けようとすれば、その内に考えるのがしんどくなるのが分かっていたし、個性を反映させようにも剣装骸兵にはそんなものは無いからな。
で、ダンジョン深層の調査の間、エレムに教育を任せる事にした。
エレムがやりたそうにしていたからだ。
そうそう、エレムは俺が貰った恩寵を使える事が最近分かった。
異世界の人形を「再現」する際に、まとめて自分に複製したらしい。
どうりで、あの時に異常なほどの魔力を吸い取られた訳だ。
今、エレムは恩寵の「傀儡使い」を使って、『ゼロゴウ』の魂殻に刻まれた命令を上書き中だ。
解析の結果分かった事だが、『ゼロゴウ』の魂殻には驚く程単純な命令しか書かれていなかった。
命令の上書きが可能な事は、テイムした際に上位者・命令者を指す部分が上書きされていた事から判明したし、「傀儡使い」【極】なら、その他の命令部分も上書きが可能だった。
さあ、4日間の間にどれだけ教育が進んだのかは楽しみでもあり、不安でもある。
お読み頂き、誠に有難う御座います。
第23話の投稿は近日中に出来ればと考えています。
今年も週に2話程度の頻度で(休みごとに書き上げて)投稿したい今日この頃(評価が芳しくなければ頻度が落ちますのでご理解とご協力を賜わります様に伏してお願い申し上げ候)。
 




