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第17話 『ダンジョンの創造主』

2024-12-24公開




〔王国歴377年 従地神月ムウンゼウルラーザ9日〕




 ダンジョンの入り口で感じる抵抗は他のダンジョンよりもかなり軽く感じた。


 何と言うか、おかげでダンジョンに関する新しい考えが1つ浮かんだ。


 普通のダンジョンでは入り口で侵入者の能力値を測る為に軽い負荷を掛けているのではないか? 

 その段階で脅威度を知る事によって、強力な討伐士が来た時の準備を整える時間を稼ぐ事が可能になる。


 まあ、それによって俺たちがダンジョンでやる事が変わる事は無いから、別に構わないと言えば構わないんだがな。 



 ダンジョン内に入ると、俺の胸位の身長の妖精が待っていた。

 思わず、反射的に襲われる前に襲う為に踏み込もうとするアルマとエッサを両手を広げて止める。



「二人とも止まれ! 魔獣ゴレーザー・ディエランじゃない。このダンジョンの創造主だ。なかなかお目に掛かれない妖精だぞ」

「え!?」

「妖精って、あの妖精かよ?」

「どの妖精か知らないが、コイツは俺の知り合いだ」

「マジかよ・・・」



 一般的に妖精と言われると、普人ヒュームにとっては、善悪両面の顔を持つ、野獣ノナ・ディエランでも、魔獣ゴレーザー・ディエランでも無いナニモノか、という認識だ。


 困っている普人ヒュームを助けてくれる親切な時も有れば、悪戯を仕掛けて来る時もある。

 森や山などで迷子になっている子供を助けてくれたりしてくれるのは良いんだが、赤ん坊を野獣ノナ・ディエランの赤ちゃんと取り換えたりするのは、どう考えても迷惑だ。

 次の朝にはちゃんと元に戻すんだが。実際の被害は野獣ノナ・ディエラン臭くなったおくるみを洗う事くらいだが、それでも親に心配を掛けるのだから迷惑以外の何物でもない。


 まあ、そういう目に遭った赤ん坊は強力な恩寵を授かるので、プラスマイナスで考えればプラスと言えるんだが。

 

 そして、その姿を目撃される事は無い。

 辛うじて修業を重ねた聖職者なら、残留する気配を感じ取れるから、妖精の悪戯かどうかを判断するのが布教の手助けになっていたりする。



 俺たちのやり取りが一段落したと見たのか、ソイツはニヤリとした表情を浮かべる。

 

 そう、ニヤリとしか表現のしようが無いのだが、もしかすれば満面の笑顔かもしれない。

 ニコリとした笑顔も、ニヤリとした笑顔も、満面の笑顔も全部一緒に見える。

 コイツ曰く、人間如きの格の低い生き物に区別が付く筈がなかろう、という事らしい。


 そして、今の笑顔を異世界風に表現すると、「邪悪な笑みを浮かべるゴブリン」、が一番近いだろう。

 初めて会った時の印象も異世界のゴブリン像そのものだったが、それは今も変わらない。



 そう、ダンジョンを創造する妖精のほとんどはゴブリンモドキだ。

 こいつらがダンジョンを造る理由はただ1つだ。

 人間が生死を掛けて右往左往する様が面白いから、らしい。

 ここで言う人間には、普人ヒューム誓人スピルフも含んでいる。

 


「わざわざダンジョンの創造主様自らのお出迎え、痛み入る」

「精霊様が来られたのだ。お出迎えをせんでどうする」

「やっぱりエレム目当てか」

「ふん、普人ヒューム如きの為に現れる訳なかろう」

「そりゃそうだ」



 俺と妖精が会話している事に驚いているのだろう。

 アルマとエッサから信じられない、という思念が届いた気がする。気配で感じる限り間違っていないな。



「どうせ、興味が無いだろうが、一応紹介しとくぞ。左の普人ヒュームがアルマで、右がエッサだ。アルマ、エッサ、妖精でこのダンジョンの創造主のゴダン殿だ。妖精に遇う様な機会は中々無いから将来は子供や孫に自慢出来るぞ」


 ん? 珍しいな。気が付けば二人とも腰を落とし、右膝を地に付けている。

 貴族のグスタフソン騎士爵に会った時にもしなかったのにな。


「ほう、珍しいな。二人ともうっすらとだが精霊様の加護を授かっているな。ならば、そこいらの人間と同じには扱えんな。歓迎しよう」

「ハ!」

「マジか? 討伐仲間(パーティ)だが、初めて知ったぞ」

「ふん、精霊様に対する感謝が足りん証拠だ。今度会った時に説教してやる」

「いや、要らん。それよりも、エレム、そろそろ挨拶を受けてやってくれんか?」


 そう、俺たちが挨拶をしている間、エレムはダンジョンの壁や天井を叩いてみたり、地面を踏んでみたりと活発に動き回っていたんだ。


 まあ、こういう時は好きにさせるのが正解だから、敢えて後回しにしていた。

 

 俺の呼びかけに応じて、こっちに飛んで来たエレムがゴダンに、「や!」という感じで右手を上げた。

 軽い・・・

 それに対して、ゴダンが両膝を付いた上に、両手で目の前に庇を作る様な所作をした。


 1秒程その姿勢を続けた後、軽やかに立ち上がった。

 初めて会った時も同じやり取りをしたので、正確には分からないが、思念による挨拶を交わしているんじゃないかと思っている。



「では、精霊様の御希望通りに、第2層に案内しよう。そこで採集を済ませたら好きにするが良い」

「ん、そうさせて貰おう。仕事で第6層まで調査しないといけないからな」

「迎撃獣は必要か?」

「うーん、いつもと同じで良いぞ。どんな魔獣ゴレーザー・ディエランが出るかを知っておかんといけないからな」

「分かった。では、第2層に転移するぞ」



 転移は一瞬だった。

 俺は転移魔法と空間魔法はまだ使えない。

 マジで習得が難しいからだ。

 それをあっさりと使われたが、まあ、ダンジョンの創造主なんだから、当然と言えば当然か。






お読み頂き、誠に有難う御座います。


 今週はお休みが今日しか無い為、第18話の投稿予定が立ちません。

 ほぼ来週中に公開という事で・・・ 何かを間違えれば今週中にもう一話公開出来るかも?

 きっと、ニコリ・ニヤリ・満面の笑顔を使った間違い探しクイズが出来ると思いますよ\(^o^)/

 

 これからも週に2話程度の頻度で(休みごとに書き上げて)投稿する予定です(評価が芳しくなければ頻度が落ちますのでご理解とご協力を賜わります様に伏してお願い申し上げ候)。



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