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第16話 『ダンジョンの入口』

2024-12-21公開



〔王国歴377年 従地神月ムウンゼウルラーザ9日〕




 昨日の午後を休みにして、村巡りをして正解だったな。

 おかげで、必要な日用品を揃える事が出来たし、リリーともゆっくりとした時間を過ごす事が出来た。

 リリーも買い物を楽しんでいたし、村人から可愛がられていて嬉しそうだったからな。

 きっと開拓村のみんなに受け入れられた事が本当に嬉しかったんだろう。

 

 ただ、まあ、なんと言うか、アルマとエッサもずっと一緒で、村人と男臭い交流をしていたのは、もはやお約束と化して来ているが。



「お兄様、私は今日は領主様のお子様の所に先生としてお伺いする予定ですけど、お兄様たちはどうなさるのですか?」

「今日はダンジョン内の探索に行く予定だ。改めて昨日依頼されたからな」

「私は詳しく知らないのですが、ダンジョンは危険じゃないんでしょうか?」

「討伐士になりたての初心者なら危険だが、俺たちくらいになるとそうそう魔獣に負けないし、万が一の引き際も分かっているから、危険という程じゃ無いな」



 ましてや、ダンジョンの創造主と知り合いだからな。

 なんなら言葉も交わした事も有る。



「そうですか。決して無理はしないで下さいね」

「もちろんだ。リリーに心配を掛ける様な事はしないさ」

「であれば、私は心配せずにお帰りをお待ちしますね。そういえば、いつ頃帰られますか?」

「夕方前には帰って来る予定だ」

「では、また一緒に料理致しましょうね。早く昨日買った包丁に慣れたいですし」

「分かった。必ず夕方前には帰って来るよ。だから大人しく待っていてくれ」

「はい」



 リリーはこの村に来る前の準備として簡単な料理なら出来る様に練習をしていた。

 さすがに包丁までは触らせなかったが、食材を炒めたり、煮たり、焼いたり、味付けをしたりといった基礎は一通り出来る。

 意外というか、当然と言うか、リリーは料理に嵌った。

 きっと、自分の手で美味しい料理を生み出せる事が嬉しいのだろう。

 その延長で、狩った獲物の解体も嫌がらずに覚えたのだから、お貴族様教育とは何だったんだろうという気がしないでもない。


 ちなみに包丁と火のどちらが危険かというと、我が家では圧倒的に包丁だ。

 何故なら、我が家には火の属性も司るエレムが居るからな。

 ちょっと頼んでおけば、事故が起こり様が無いんだ。


 で、昨日、リリーは念願の自分専用の包丁を手に入れたので、さっそく初めて食材を切るという経験をした。

 リリーの中では、大きな一歩だったのだろう。

 そう言う事も有り、益々料理に燃えている様だ。



 ああ、そこの2人。

 言葉にはしていないが、顔に『この過保護野郎が』って書いているぞ。


 いいか? これは過保護では無い。

 リリーを一人前の「開拓村の女性」にする為の試練なんだ。


 第一、お前たちは料理の下準備の手伝いさえもせずに、タダ飯を食べている立場という事をわきまえる様にな。




*******************************************




 俺たちは北の林の奥深くまで侵入していた。

 ここまで来ると、さすがに開拓村の村人の手が入っていない。

 森という程深くは無いが、それでも下生えが濃くて歩き難くなっている。


 俺が先導して歩いて来たが、アルマもエッサも、当然と言う顔で付いて来る。

 まあ、さすがに2人には俺が人には言えない様な能力を持っている事くらいはとっくにバレている。


 特に聞いて来ないという事は、異常な能力に気付いていながらも、それ込みで俺との関係を切りたくないという事なんだろう。


 そのダンジョンは北の林の奥に在った。

 俺の身長を超える大きな四角い岩が木々の間にポツンと置かれていた。

 四角いと言っても、立方体という人工的な要素はなく、角が削れているから自然に出来た岩には見える。

 見えるが、何故ここにポツンと1つだけ在るか? という点では不自然なんだが。


 岩の正面には、大男の普人ヒュームでも余裕で通れるくらいの縦長の切れ込みが有った。

 切れ込みの内側は闇に染まった様に黒い光沢のある膜が張られている。

 

 うん、見間違える事のないダンジョンの入り口だ。



「うわ、なんと言うか、罠かと思うくらいな不自然さだな」

「そうそう、もっと、こう、自然な感じで崖とかに出来ているかと思ってたぜ」


 そうだな、確かに2人の言う通りだ。

 ダンジョンの入り口を造る為に岩を置いたとしか見えない。


「グスタフソン騎士爵が3層までは探査したんだ。罠という訳は無いだろうさ」


 俺にとっては、その辺はどうでも良いという感じだ。

 


「さあて、ダンジョンに入る前に、花摘みを済ませよう。先か後かは任せる」

「なら、先に済ませてもらうよ。覗いたらお仕置きだからねエリ坊」

「は、覗かないと分かって言っているのがバレているよ」

「ほんと、クソ坊主は可愛げが無いな」

「リリーの前では汚い言葉禁止だからな」

「へいへい」



 さあて、いよいよダンジョンに侵入だ。

 牙をむいて来る事は無いと分かっているが、中がどの様になっているのかはさすがに知らない。

 

 面倒な環境じゃ無かったら良いんだけどな。





お読み頂き、誠に有難う御座います。


 第17話の投稿予定は来週中に公開という事で・・・

 傀儡作成編に突入していますが、何話で傀儡が登場するかは神のみぞ知るです\(^o^)/

 

 これからも週に2話程度の頻度で(休みごとに書き上げて)投稿する予定です(評価が芳しくなければ頻度が落ちますのでご理解とご協力を賜わります様に伏してお願い申し上げ候)。



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