夜の山下公園
「琴葉!!愛里ちゃん!!」
夜山下公園。はるこはワンピースにボレロ、赤い靴を履いて琴葉と愛里を探す。街灯はあり辺りは見えるが夜は人気もなく昼間とは雰囲気も違う。
「琴葉!!愛里ちゃん!!」
二人の名前を呼びながら公園を歩きまわる。
誰もいない公園。自分の履くヒールの音が響く。その時
カツ カツ カツ カツ
自分の背後から別の足音がする。
「琴葉?愛里ちゃん?」
「お姉ちゃん。」
背後から呼ぶ声がする。
「琴葉?」
はるこは振り返る。
「ひっ!!」
頭から血を流した女の子がいた。黒髪に赤いワンピース、そして足に何も履いてない。
「誰?!」
「お姉ちゃん、その靴」
女の子ははるこの履いた赤い靴に目をやる。
「その靴。私の。」
「違うわ。私のよ。」
「私の靴、返して。」
女の子はゆっくりとはるこの方へ向かってくる。
「貴女こそ、琴葉と愛里ちゃんを返して!!」
はるこは勇気を振り絞って叫ぶ。
「赤い靴 返して。」
しかし女の子は両手を伸ばしはるこの元へ向かって来る。
「来ないで!!」
女の子がはるこの首に手をかけようとした時
「こっちだ!!」
はるこは思いっ切り手を引っ張られる。
「誰?」
何者かがはるこの手を引っ張って走り出す。
公園の敷地の外に出た時
「大丈夫か?」
はるこの手を引いていた人物が立ち止まる。スーツ姿の男性だ。父よりは若い。
辺りを見渡すが女の子は追ってこない。
「君は園寺さんのところのはるこちゃんだね。」
男ははるこの事を知っているようだ。
「どうして私の名前を?」
「君のお父さんは陸軍大尉だろう?僕の兄が軍にいて家族ぐるみで良くしてもらってるよ。確か妹がいるよね。琴葉ちゃんっていったっけ?お父さんから話は聞いてるよ。」
父の知り合いと分かるとはるこは安堵する。
「女の子がこんな夜中に出歩いちゃ駄目じゃないか。家まで送っていくよ。」
「あの、私妹と友達を探しに来たんです。」
「大丈夫、琴葉ちゃんと愛里ちゃんならうちにいる。さっきの幽霊を見たのか放心状態になっちゃって。うちで専属の看護婦が見てるよ。さあ、行こう。」
男がはるこの手をひこうとするが動かない。
「あの、どうして友達の名前を知っているのですか?」
「どうしてって君が叫んでいただろう。友達の名前。琴葉ちゃんと一緒にいるよ。財閥のお嬢様だろ?」
「違う!!琴葉といるのは愛里ちゃんじゃない!!一緒にいるのは私じゃなくて琴葉の友達!!」
「ばれちゃったか。君は頭がいいね。」
男ははるこの腕を掴み近くに止めてあった車に乗せようとする。
「やめて!!助けて!!」
はるこは大声で叫ぶ。
「大人しくしろ!!」
はるこがじたばたしながら助けを求める。
「そこまでだ!!観念しろ!!」
気がつくと複数の警察官が男を取り囲んでいた。男は警官に取り押さえられ連行されて行く。
「小宮さん、ご協力ありがとう。」
刑事がスーツの青年にお礼を言っている。
「はるこちゃん、」
小宮と呼ばれた青年の背後からゆきが現れる。
「ゆき先生!!」
ゆきははるこにしがみつく。