失踪事件再び
ゆきは出来上がった原稿を出版社に持って行く。赤い靴失踪事件をモチーフに書いた小説は女の子の霊が赤い靴を求めて少女に声をかけ、くれなかった娘を殺してくとう話だ。
「どうでしょう?」
原稿を読む篠山にゆきが尋ねる。
「ちょっとやり過ぎかな。確かに怖いけどここは少女雑誌だから。」
ゆきはまた書き直す事になった。
「分かったわ。また明日書き直して持ってくる。」
ゆきが原稿をしまい帰ろうとした時
「ゆき先生、お電話です。」
事務員に呼ばれ受話器を取る。
「お電話代わりました。仙多です。」
「ゆき先生!!助けて下さい!!」
電話の相手はゆきに大声で助けを求めている。
「あのどちら様でしょうか?」
「私です。はるこです!!」
電話の主ははるこだった。
「はるこちゃん。落ち着いて。何があったの?」
はるこは一呼吸すると再び口を開く。
「妹がいなくなったの。」
はるこが声を低めて告げる。
「いなくなったっていつから?」
「昨日の夜です。」
はるこの妹は宝塚に行ったお土産を渡すつもりで外に出た。それっきり帰ってこないという。
その後ゆきは横浜のはるこの家へと向かう。
「ゆき先生!!」
はるこはゆきの姿を見るとスカートにしがみついてくる。大島が出してくれたお茶をゆっくりはるこに飲ませる。
「落ち着いた?」
はるこはゆっくりと頷く。
「ゆっくりでいいから話してくれる?」
「はい。」
はるこの妹琴葉は学校が終わると親友と会う約束をした。
「その場所が山下公園だっていうから私反対したんです。だけどあの娘は聞かなくて。」
琴葉ははること違って霊感がないから何も感じない。
「それで母も昼間だし、愛子ちゃんもいるから大丈夫だと。」
愛子というのは琴葉の親友で財閥の娘だ。
「その愛子ちゃんって娘の家には行ってみたの?」
「はい、大島が電話で確認したのですが彼女もまだ帰っていないと言って。」
二人同時に行方不明になったのだ。
「家を出た時の琴葉ちゃんの格好覚えてる?」
「確か白い丸襟にピンクのワンピース、それから靴もピンクだったかと。」
琴葉の靴が行方不明になった女の子達の靴の色と一致しない。
「ちなみに愛子ちゃんは?」
「愛子ちゃんは分からないわ。実際に会ってないから。」
はるこは立ち上がり襖を開けると周りに人がいない事を確認し再び襖を閉める。
「ゆき先生、私今夜赤い靴を履いてあの公園に行ってみようと思う。」
「駄目よ。夜に女の子1人なんて危ないわ。」
「だって愛里ちゃんや琴葉を拐った犯人この手で突き止めなくちゃ。」