横浜へ
翌日ゆきは横浜へと向かった。はるこという少女からの手紙に記載された住所を頼りに住宅街を歩く。
「この住宅、ここね。」
ゆきがたどり着いたのは洋風建築の豪邸だ。
その時ちょうど玄関に黒いリムジンが通る。
執事の運転する車の後部座席に振り袖の少女が乗っている。
車は玄関の前で停止し執事が車の扉を開けると少女が執事の手を借りて降りてくる。
「はるこお嬢様、お手を。」
「ありがとう、大島。」
(はるこ?!)
それはゆきに手紙をくれた少女の名前だ。
「あの、園寺はるこさんですか?!」
ゆきがはるこの元に行き尋ねる。
「あの、失礼ですがどちら様ですか?」
大島と呼ばれた執事が尋ねる。
「申し遅れました。私少女画報で小説書いてます。仙多ゆきといいます。」
ゆきは大島に名刺を渡す。
「やっぱり?!ゆき先生だ!!」
はるこがはしゃいでいる。
ゆきは客間である和室に通される。
「どうぞ。」
大島に席を勧められお茶を出される。
「ありがとうございます、」
向かいにははるこが座っている。
「貴女、この広いお屋敷に使用人と住んでるの?」
この屋敷にははるこ以外は執事の大島とメイドの姿しかない。
「いえ、父は陸軍の大尉で任務でほとんど家にいません。母は妹を連れて宝塚を観に行ってます。先月の白薔薇のプリンス特集妹が喜んでましたよ。」
「ありがとう。ところでこの手紙を出したのははるこちゃん貴女で間違いないわね。」
ゆきは手紙を出すと本題を切り出す。
「はい、私が出しました。」
はるこが答える。
「貴女はあの公園には行った事はあるの?」
「完成した2年前に何度か。ですが最近はなるべく通らないようにしてます。」
女の子達の失踪事件を気にしてるのだろうか?
「やっぱり行方不明になった娘達の事気にしてるの?」
「それもあるんですがあの私あの公園に行くと嫌な感じがするんです。」
「嫌な感じ?」
ゆきはその時にはるこからの手紙に書いてあった事を思い出す。
「貴女確か見えない物が見えるって。」
「はい。」
はるこは頷く。
はるこはこの世の者ではない者が見え、見えなくても雰囲気で感じる事がある。
「あの公園に何がいるの?」
「分かりません。何か具体的な物を見た訳じゃありませんから。」
はるこは始業式の日一度だけ大島が休暇を取っていたため山下公園を通って登校した。
「だけど突然気分が悪くなって耳なりがしたんです。昔行った時はそんな事なかったのに。」
「ありがとう。はるこちゃん、今から一緒に山下公園に行ってみない?」