96話 tapu
前回の配信で要望通り伊達さんの話をしたつもりだったけど、伊達さん的には納得いかなかった様で・・・。
クレーム対応の為にも今回の配信で伊達さんの話をしなければならないが・・・順番的に言えば次はシュウさんの番。
とは言え、今回シュウさんの話をすると伊達さんのヘソが曲がり散らかすのは明白で。
こちらを立てればあちらが立たず。
中間管理職ってこんな感じの苦悩を抱えてるんだろうか?
まぁ、中間管理職ってどんななのかはイマイチ良く分かってない。
「このGrooveStreetって比較的マイナーなゲームだと思ってたんですけど。皆さん結構やってる方居るんですね」
視聴者参加型森男カートでボコられたので・・・GrooveStreetで報復を・・・と、思い。また視聴者参加型でやってみたけど・・・予想外にもボコられている・・・。
「森カーは人気ゲーだしプロレベルの人が居てもおかしくないとは思うんですよ・・・。でも、こんなマイナーゲームまで皆強いとか意味分からないんですけど・・・」
森カーの時同様に心のHPが自然回復するのを待つ為に雑談タイムに突入する事にした。
「ちょっと一旦休憩にして・・・雑談タイムをば・・・」
中間管理職Vtuberとして熟考に熟考を重ねた結果。
「そこそこ前の話なんですけど。用事があって伊達ごっこさんとファストフード店に行ったんですよ」
長考に好手なし。とは言うけども・・・。
「そしたら、クラスのイケメンと綺麗なお姉さんが一緒に居て。やっぱりイケメンだと年上のお姉さんとお付き合い出来るんだなー。とか思ってたんですよ」
これが悪手だった場合。
「それで何やかんやあって・・・挨拶する事になったんですけど」
配信後に。
「そこで判明したのが、その綺麗なお姉さんはクラスメイトのイトコで兎合シュウさんだったんですよね」
いや、下手したら配信中にクレームが来る。
「もしかしたら皆さんの身近にも実はVtuberが居るかもしれませんよ。まぁ、探さないで欲しいですけど」
コメント欄に目をやると。
「えっと・・・そんなのお前だけだろ。どうなんでしょうね?気付かないだけで意外と身近に居ると思いますよ?」
一説には10万人を超えるとも言われてるんだからそこかしこに居たとしてもおかしくは無い。
「僕で言うと。家族に複数人居て、クラスにも居て・・・まぁ、これはレアケースでしょうけど・・・」
僕自身もVtuberだし。かなりレアケースだろうけど。
「学校だったり、職場だったり、バ先だったり、家だったり。皆、隠してて気付いてないだけってパターン。意外とあると思うんですよね」
気付いてもそっとしておいてあげて欲しいけど。
「視聴者さんの中にもVtuberじゃないにしても配信したりしてる人も居るんじゃないですか?」
コメント欄に「ノ」や「へ」の文字が羅列されている。
「意外と「ノ」の人居ますね。この場だけでもこれだけ居るんですから。やっぱり身近な人が意外とVtuberだったりするんですよ」
本人が周りに隠していると意外と気付かれないものだと思う。
「もうちょっと突っ込んで質問なんですけど。身近にVtuberが居る人って居ますか?自分がVtuberでも可です」
コメント欄にはチラホラと「ノ」の文字が見える。
「やっぱり居るみたいですよ?」
実際、最近までめるとがVtuberなのも知らなかったし。それどころか母親がママだという事すら知らなかったし・・・。
「でも、探さないであげて下さいね。そして、配信者だと気付いてもそっとしておいてあげて下さい」
でも、バレてるなら言われた方が良いかな?どうだろう?
「という訳でそろそろゲームに戻りますか・・・」
翌日、学校に行くと教室前で田中君が待ち構えていた。
「石神。ちょっと来い」
「え?うん、なに・・・?」
「良いからっ」
田中君に着いて行くと、階段の踊り場で振り返りようやく口を開いた。
「お前・・・俺の話してたよな」
「え・・・あ、配信?」
「そう」
あぁ・・・観られてたのか・・・。
「なんで俺も配信してる事言わないんだよ」
「え?」
「ついでなんだから宣伝くらいしとけよ」
えー・・・。
「俺が配信してる事知ってるだろ?」
「知っては居るけど・・・」
「けど。なんだよ?」
「基本的に他の配信者さんの名前出すのはタブーだし」
「んじゃ、許可するから宣伝しとけよ」
「なんで?」
「なんでってクラスメイトなんだし、そんくらい良いだろ?」
「だったらシュウさんに言えば良くない?」
「シュウちゃ・・・秋乃さんにそんな事頼める訳無いだろっ」
「だったら僕だってそうだよ」
「はぁ?」
「それに、シュウさんのイトコが配信してます。とか言ったらシュウさんにも迷惑掛かるし」
クラスメイトでも友達では無いし、宣伝してあげるメリットも無ければそんな筋合いも無い。




