95話 家凸
ある日の配信中。
今日の配信は視聴者参加型の森男カート。
「それにしても・・・皆さん強過ぎません・・・?」
1走する毎に視聴者さんは入れ替わって貰ってる。
なのに毎回最下位をひた走っている。
酷かった時は1周目から大差を着けられたと思ったら2周目のスタートラインで全員が待機していて3周目開始時はダントツのトップだった。
皆は止まっていて、僕は最高速で走り抜けたんだから当然だ。
なのにラスト周回である3周目のゴールラインに僕は到達する事が出来無かった。
走行途中に「順位が確定したのでレースを終了します」とアナウンスされて強制終了。
「ちょっと休憩がてら雑談でも・・・」
以前の参加者は3人だった事を考えると。毎回入れ替わりでプレイ出来るのは中々に感慨深い。
そして、あの3人が特別上手いんだと思っていたけど・・・うん、僕が下手なだけだったのかな・・・。
「ちょっと前なんですけど。1人で映画を観に行ったんですよ」
心が折れる前にちょっと休憩を挟もう。と、言う事で雑談タイム。
「その帰りに気分転換も兼ねて歩いて帰ったんですよね」
そう。今と同じ様に気分転換。
「そしたら向こうから自転車に乗ったお姉さんが来ていて。お互いに避けようとフェイントを掛け合った結果・・・」
何故、この話をしようと思ったかと言うと。
「ぶつかってないのに躓いてコケました。お姉さんはぶつからない様に止まってくれましたね」
伊達さんから連日、自分の話をしろと圧を掛け続けられているから。
「そして、その時に手を擦りむいてしまって。手当てをして貰う話になったんですよ」
それも、学校でも言われ、放課後にも言われ、家に帰ってからもチャットで言われる。
「掠り傷だから大丈夫って言ったんですけど引いて貰えなくてお家にお邪魔する事になったんですよ」
その圧に屈した結果だ。
「それで、そのお姉さんのお家にお邪魔して手当てをして貰おうというタイミングで衝撃の事実が判明したんですよ」
この話をする事で伊達さんは満足してくれるだろう。
「なんと・・・そのお姉さんは伊達ごっこさんのお母さんでした・・・」
でも、そうすると・・・。
「そこから何やかんやあって・・・伊達ごっこさんのお母さんの独壇場になって・・・」
次はシュウさんの番だ。
「配信者適正◎なんじゃないかってくらいひたすらに伊達ごっこさんの子供の頃の話とかをずっと喋ってて」
シュウさんの事だから。きっと今もこの配信を観ているだろう。
「あ、だからって伊達ごっこさんの配信でお母さんを出せとか要求しないで下さいね」
そして、期待に胸を膨らませている気がする。
「まぁ、でも・・・凄い偶然ですよね。ぶつかりそうになった人が知り合いのお母さんだったとか」
でも、今回はシュウさんの名前を出すつもりはない。
「ん?でも、無くは無いのかな?そこまで珍しい話でも無いかも?」
だから、配信が終わってから連絡が来そうで怖い。
「まぁ、配信者さんのお母さんだったてのがレアリティ高いだけで、クラスメイトのお母さんって考えるとそこまでじゃないのかも」
まぁ、じゃなくても最近は毎回配信後にチャットが来てるけど・・・。
「という訳で。実は1度だけですけど、伊達ごっこさんのご自宅に行った事がある。という話でした」
さて・・・そろそろ森カーに戻るか。
「では、休憩は終了にして。そろそろ森カーを再開しますね」
再開後も普通にボコられ続け。僕の心のHPはゴリゴリに削られまくった。
そして、伊達さんの話というか・・・伊達さんのお母さんの話がコメント欄でも大盛り上がりを見せたまでは良かったのだけど・・・案の定と言うか・・・伊達ごっこのSNSにも書き込みをする輩が現れた。
そして、伊達さんからのクレームのディスコも案の定飛んできた。
[春夏冬中]ごめん・・・
[伊達ごっこ]何に対して謝ってるの?
[春夏冬中]何って・・・鳩行為とか
[伊達ごっこ]そんなの日常茶飯事過ぎてどーでも良い
[春夏冬中]じゃ、じゃあ、なにが・・・
[伊達ごっこ]あれってさ?
[春夏冬中]うん
[伊達ごっこ]私の話じゃなくてお母さんの話じゃない?
[春夏冬中]う、うん・・・まぁ、そうだね
[伊達ごっこ]私の話をしてって言ったじゃん
思ってたんと違う角度から怒ってはるー。
ビックリしすぎて謎の関西人が憑依してしまった・・・。
[春夏冬中]近い内に伊達さんの話もするから
[伊達ごっこ]近い内って何時?
[春夏冬中]えー・・・次回か次々回か・・・未定だけどその内
[伊達ごっこ]次かその次ね?絶対だよ?
え?あれ?
次かその次か、はたまたその次かもしれないし、何時になるかは未定って意味だったんだけど・・・。
[春夏冬中]わ、分かりました・・・
[伊達ごっこ]楽しみにしてるねっ
楽しみにされてるんであれば・・・次回にでもしないと・・・また圧が凄い事になりそうだ・・・。




