94話 Baby BIAS
シュウさん、伊達さんとのやり取りを終え・・・お風呂やら何やらを済ませアーカイブやコメント欄のチェックは明日に回す事にしてベッドに倒れ込んだ。
「ふ~・・・やっぱ湯船に浸かると身体が楽だー」
そして、そのままソシャゲの巡回を済ませると。ふと間が空いた。
「う~ん・・・」
枕の横に放り出したスマホを再び手に取り。
「やっぱ気にはなるよなぁ」
そして、「伊達ごっこ 顔バレ」と打ち込んだ。
「あ、これか」
Vtuberのまとめサイトにその記事があった。
公式のプロフィールから配信スタイルや登録者数といった情報から前世と噂されている配信者との比較動画があり。その流れで顔バレ画像としていくつかの写真が載せられていた。
「あー・・・全然似てないな」
そのサイトに載せられている画像の女の子はギャルとまでは言わないけど陽キャで1軍感が画像からも伝わってくる。
まず着ている制服が違うし、画像が荒い所為かもしれないけどちょっと古く感じる。
3-4年前のJKだとしたら今は大学生か社会人なんじゃないかな?
実際の伊達さんは僕が言えた事じゃないかもしれないけど・・・もっと地味だ。
画像の女の子と伊達さんを比べた時、1番違うと思うのがスカートの長さ。
画像の女の子は伊達さんの半分も無いんじゃないかな?
偏見全開で言うとチックトックやってそうな女子とniko動に住んでそうな女子って感じだ。
「そういえば、見ちゃったんだよね」
「なにを?」
「顔バレ」
翌日、ワクドで耐えきれずに見た事を告白した。
「あー、どうだった?」
「なんか・・・派手。チックトックやってそう」
「分かるー」
「クラスで言ったら渡辺さんみたいな感じ」
「あー、そうかも」
「渡辺さんと言えば」
「うん?」
「伊達さんのファンなんだよね?」
「みたい・・・」
「バレない?」
「今の所は?接点も無いからかな?」
「挨拶くらいだしね」
「うん」
「まぁ、っても・・・伊達さんも僕に気付かなかったし」
「そっ、それは無理じゃない!?」
「えー?」
「だって声が違うもん」
「そりゃそうか・・・実の母親と妹も気付かなかったんだしね」
「そう!仕方無い!」
「伊達さんってそのまんまだよね?」
「ボイチェン?」
「うん、とかイコライザーとかイジってないよね」
「そのまま。わかんないもん。なんで?」
「いや、地声だと普段気を使わないといけないけど。僕、そんな事気にした事も無かったなー。って思って」
「ズルい・・・」
「え、いや、ズルくはなくない?」
「ズルいよ!私が普段どれだけ気を使ってるか・・・」
「そうなの?」
「そうよ!学校でも普通に話せないし、買い物する時だって地声を隠して話さないといけないしっ」
「あー・・・そういえば、ウチのコンビニに来た時もそうだったね」
「う、うるさいっ!」
「な、なに・・・」
「石神くんはいっつもズルい」
「え、なんで・・・」
「声でバレないし、猫にも好かれるし・・・」
別に猫に特別好かれてる訳では無い・・・ジルにはたまたま好かれただけで・・・。
「僕からしたら伊達さんの方が羨ましいけど・・・」
「私?私のどこが?猫に嫌われるのに・・・」
「いや、猫は別に・・・」
「じゃあ、なに?」
「配信上手いし、人気もあるし、お金だってかなり稼げてるでしょ?」
「配信は上手くないし、人気も事務所のおかげだし、お金は・・・税金とか大変だよ・・・?」
「配信は上手いよ。それに、大手事務所に所属してても伸びない人は伸びないし」
「それはそうかもだけどー」
「僕なんて大赤字だよ?バイト代のほとんど配信に使ってるし」
「まぁ、私の場合は仕事だしね」
「そう。僕は趣味なんだよね」
「うん」
「そこの差が本当に羨ましい」
「でも、収益化もしたしこれからじゃないの?」
「どうだろうね?」
「え?」
「だってここ最近で増えたのは他の配信者さんのファンで。その推しの情報収集の為に僕のチャンネルを登録してるだけでしょ?」
「そ、そんな事無いんじゃない・・・?」
「ぬいぐるみぃ、伊達ごっこ、兎合シュウ、石倉のファンが99%だよ」
「え?なに?」
「ん?」
「辞めちゃうの?」
「え?辞めないよ?辞める風に聞こえた?」
「うん・・・」
「辞めるつもりは無いけどー・・・成績落ちたら休止しないとなんだよなぁ・・・」
「あー・・・」
「大学とか調べた?」
「まだ。石神くんは?」
「僕もまだ・・・」
大学よりもまずは成績を落とさない事。じゃないと配信が出来なくなる。
僕も伊達さんくらいの人気になって専業配信者になりたいなー・・・。
そして、税金がー。とか言ってみたい。