85話 禁止
「望、ちょっと相談」
「なに?」
ある日の夕飯後にお母さんに呼び止められた。
「ここじゃアレだから私の仕事部屋行こっか」
「え、うん」
配信でもするのかな?
それで、またマイクやらの準備を手伝わされる感じか・・・。
「あれ?」
「ん?」
「マイクとか出しっぱじゃん」
「そうだけど?」
「配信準備の手伝いじゃないの?」
「さぎょいぷの時に音良いって好評だったから」
「そうなんだ」
「んで、相談なんだけど」
「うん」
「コミケでさ?あたるくんのグッズ出そうかと思ってさ」
「マジ?」
「マジマジ」
「売れるの?」
「売れないっぽいよねー」
「おいっ」
売れる気はしないけど、人から言われるのは違うっ。
「いや、ね?みぃのは毎回出してるのよ」
「うん」
「んで、今回は私のも出そうかなーって思ったんだけど」
「うん」
「あたるくんだけ出さないってのも可哀想でしょ?」
「う、うん・・・」
哀れみからだった・・・。
「そこでよ!」
「うん・・・」
「みぃは単品でグッズ出して、私達はそこまで需要も無いから」
「う、うん・・・」
「親子3人でのグッズ作ろうかなって思ってね」
「なるほど」
それなら売れるかもしれない。
かもしれないじゃなく、みぃ目当てで売れる。
「どう?」
「どうって?」
「出して良い?」
「良いもなにも許諾とか要らないんじゃないの?そういうのって」
「まぁ、要らないっちゃ要らないね。グレーゾーン」
「グレーなんだ?」
「物によっては黒だね」
「そうなんだ?」
「んー、2次創作って、しても良いんだけどさ?」
「うん」
「ノートにキャラの落書きしても誰も咎めないでしょ?」
「まぁ、先生に怒られるけどね」
「そりゃそうだ。はっはっはっはっは」
「んで?」
「うん。お金が発生した時点で本当は黒なんだけど」
「うん」
「なぁなぁな感じで続いて。こういう文化もあるよねー。って感じで、グレーに落ち着いた感じ?」
「へー」
「細かく言うと長くなるからね」
「うん」
「私はそんな感じの認識」
「なるほどね」
「で、ウチの場合、関係性が特殊じゃない?」
「実の親子でVでも親子?」
「うん」
「まぁ、あんまり聞かないってか、聞いた事無いね。居るかもだけど」
「みぃありきでグッズ出すのとか望はそういうの嫌いそうでしょ?」
「まぁ・・・あんまり好きでは無いかな・・・」
「で、事後承諾でヘソ曲げられても面倒臭いしー」
「うっ・・・」
「だから、制作に入る前に確認を。ね?」
「良いよ」
「お?決断が早いねー」
「まぁ、前から考えてた事だし」
「へー、どんな風に?」
「人気が無いにしろ、応援してくれてる人は居て」
「うんうん」
「その人達がグッズ欲しいって言ってくれてて」
「うんうん」
「それに応える方法があるなら、出来る限りの事はしたいなー。って感じ?」
「渡りに船だった訳だ?」
「渡りに船の意味は知らないけど。多分、そんな感じ」
「学生の本分は配信よりも学業のはずなんだけどなー」
「それを言われると辛い・・・」
「話は変わるけどさ?」
「うん」
「大学は行くんだよね?」
「行けるなら行きたいとは思ってる」
「だったらそろそろ本腰入れて勉強しないとマズいんじゃない?」
「成績は落ちてはないけど・・・」
「周りがそろそろ上げてくるよ?」
「え?うん」
「そしたら、相対的に落ちるんじゃない?」
「たしかにっ・・・」
「って、事で!」
「うん」
「落ちたら配信禁止ねー」
「ちょっ・・・」
「バイトも禁止」
「マジで?」
「マジマジ」
「現状維持なら?」
「配信ok」
「分かった・・・」
バイト禁止はまだしも、配信禁止はキツい・・・。
「塾でも行く?」
塾に行くとなったら配信する時間が無くなりそうな気がする・・・。
「とりあえずはナシで・・・」
「ま、行きたくなったら何時でも言って」
「うん・・・」
「あ、それでね?」
「うん」
「グッズの告知とかはしなくて良いよー」
「そうなの?」
「あたるくんの拡散力が期待出来無いからとかじゃないよ?」
そ、それはそうかもしれないけど・・・そんな事思いもしなかったから辛いっ。
「じゃ、じゃあ何でだよっ」
「予定は未定だから?」
「ん?」
「だから、しなくて良いよー」
「それって、間に合わなかった時の保険?」
「そうとも言う」
「よし、全力で宣伝しとくわっ」
「なんでー」
「僕の拡散力なんて大した事無いんだし大丈夫じゃない?」
「あ、根に持った感じ?」
「うっさい」
「ひひひっ」
「めるとにも協力させるかー」
「ちょ、それは反則っ」
「根に持っちゃったんだから仕方なくなーい?」
「ねー、勘弁してよー」
さぁて、どうするかな。




