8話 ぬいぐるさん
「こんばんみぃ~本日もぬいぐるみぃの配信にようこそ~」
バ美肉系Vtuverぬいぐるみぃ。
自分をおじさんだと思い込んでいる女児のVtuberと言われたりもするややこしいVtuberを私は演じている。
実際の私は中1の女の子で女児では無いけど本当に中の人は女の子だったりする。
この事を知っているのはお母さんとマネちゃんや事務所の数人だけ。
始めた頃は小学生だったから、その時は本当に女児だった。
「今日はこの間の罰ゲームでホラゲ配信をやっていきます・・・」
中身はおじさんという体でやっているはずなのにコメント欄には可愛いという文字が大量に流れていく。
「チルズアートさんの深夜警備なんですけど~・・・あーーーーやりたくないーーーーー」
家族で私が配信をしているのを知ってるのはお母さんだけ。お父さんもお兄ちゃんも知らない。
部屋には防音室も入れてるから悲鳴を上げてもバレない。
「怖いならやらなくて良いよ。あ、じゃあ今日は止めとこっかな~」
お金に関しては全部お母さんが管理してるからどのくらい儲かってるか分からないけど、必要だと思った機材は全部買ってくれるから結構儲かってるんじゃないかと思う。
お小遣いは増えないのに・・・。
「エアコメ読むな。エアコメじゃないもん。ホントにやらなくて良いよって言ってくれてる優しい人居たしっ」
最近ちょっと悩んでるのは・・・。
中身がおじさんの見た目は女児というガワでやってはいるけど・・・実は中身は現役JCだったってのは話題性もあって良いと思うんだけど炎上する可能性もあるから悩んでるんだよね。
それと、私が本当は女だってのを内緒にしてるからオフコラボが出来ない。
箱内コラボくらいなら良いと思うんだけどマネちゃんからどこから漏れるか分からないからと箱内であろうとオフコラボは禁止されてる。
マネちゃんが言うには私の事は箱内の最重要機密の1つらしいから仕方ないのかもしれないけど・・・オフコラボ禁止、箱外とのコラボ禁止、企業案件も大半が禁止。
あれもダメこれもダメってうるさい・・・。
企業Vだから制約が多いのは中学生の私でも分かるけどあれもダメこれもダメって言われすぎてたまに全部嫌になる。
「それじゃ、やってくね・・・」
こうやって配信してる時はマネちゃんがずっと監視しててヘンなコメ拾った時とかはメッセ飛ばしてきて、その場で怒られる・・・。
「ふんふん・・・ま、まだ怖くない」
そんな私の心の癒やしはVtuberの春夏冬中くん。
可愛くて面白くてイケボでイケメン。
「ちょまっ・・・あそこ絶対居る!絶対出る!!絶対出てくるっ!!!」
今日もあきなちゅの配信がある。
「きゃーーーーーーーーーーーーーー」
だから、あきなちゅの配信が始まるまでに私の配信は終わらせないといけない。
「ふぅふぅふぅ・・・で、出てくるの分かってたから全然怖くなかったしっ・・・」
ホラーゲームも中盤へと差し掛かり・・・。
「えっと・・・ちょっと画面酔いしちゃったかも」
大丈夫?と心配する声が多いけどちょっと心が痛い。
「中途半端だけど今日はここで終わって。続きはまた明日やるって事でいいかな?」
するとマネちゃんからメッセが飛んできた。
仮病じゃない?
推しの配信に合わせて終わらせたいからでしょ?
うん、全部バレてるねっ。
「ごめんね~。しばらく横になったら治ると思うから心配しないでね~」
こら!楽しみに待っててくれた人が居るんだよ?
プロなんだからプライベートを優先しないの!!
と、マネちゃんからのお叱りメッセが止まらないけどあきなちゅの配信は待ってくれないからしょーがないっ。
「急でごめんね。また明日!おつぬぃ~」
あきなちゅの配信予定時間まで後15分。マネちゃんからの鬼電があるけど無視。
後15分で準備をしないといけない!
配信を切り、マイクも全て切った。
あきなちゅの配信待機部屋に入室してからトイレとか飲み物の準備もしないと。
ガチャx2───。
また同時にお兄ちゃんの部屋の扉が開いた。
「めると・・・あ、ちょ待っ」
無視してトイレにダッシュ。時間が無いからのぞむごときに時間を取られるのが惜しい。
最近どうものぞむとトイレとか台所に飲み物を取りに行くタイミングがかぶる。
キモい・・・。
台所で飲み物の準備をしてたらやっぱりのぞむもトイレだったみたいだ・・・。
2階の自分の部屋に飲み物を運んでいるとのぞむも台所で飲み物の用意をしてるみたいだった。
妹のマネでもしてるの?キモすぎるんだけど・・・。
スマホもPCも着信が鳴らない様にしてあきなちゅの配信待機完了。
今日も癒やされるぞおおおおおおおおおお。