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77話 虚空猫

一時は取り乱していた伊達さんも落ち着きを取り戻し。


伊達さんのお母さんはお喋り好きが大層好きな様で・・・。


「もう!止めてよママ!!」

「えー?」


今度はお母さんを止める為に必死になっていた。


「あの・・・そろそろお(いとま)させて頂こうかと・・・」

「あ!そうだわ!!私ったらお茶もお出ししないで・・・ちょっと待ってね」

「え、いや・・・あの・・・」


ぶっちゃけ・・・手当てをして貰う為に家に上がらせて貰ったのに怪我をした手には消毒液をぶっ掛けられた時に伊達さんが乱入した所為でそのままで放置されている。


「ご、ごめんね・・・ウチのママってマイペースだから・・・」

「うん・・・でも、楽しそうなお母さんだね」


その言葉がスイッチだったのか伊達さんに依るママ大好きマシンガントークが炸裂した。


「石神くんは紅茶大丈夫?」

「あ、大丈夫です・・・」


大丈夫とは言ったものの砂糖の入っていないストレートの紅茶なんて飲んだのが初めてで・・・めちゃくちゃ良い匂いはするけど想像の100倍渋かった・・・。


お茶請けのクッキーを文字通り噛み締めながら何とか完飲。


「この子ってね、猫がすっごい好きなの」

「あー、みたいですね」

「なのに、昔から動物には徹底的に嫌われるのよね~」


あー・・・うん、たまにそういう人居るよね・・・。


「それで、ウチでもね?何度か猫を飼った事あったの」

「そうなんですか?」

「でも、飼った子が皆ノイローゼになっちゃってね・・・」

「え?」

「いっちゃんが構い過ぎちゃって」

「あー・・・なるほど・・・」


こう言っちゃなんだけど・・・苦手な人間に朝から晩まで撫でくり回されてたら・・・そりゃノイローゼにもなる。


「それで、残念だけど親戚の家に貰ってもらったりね」

「なるほど・・・」

「捨て猫をいっちゃんが拾って来た事もあったんだけどね」

「はい」

「ある程度大きくなったらいつの間にか居なくなってたのよね」

「えぇ・・・?」

「きっと、いっちゃんから逃げたのね。うふふふふ」


笑い事じゃない・・・。


ちなみに笑われている伊達さん本人はと言うと・・・最初は抵抗してお母さんを止めようとしていたけど、途中からは諦めた様で・・・真顔で虚空を見つめている。


「それからね?」

「あの・・・そろそろお暇を・・・」

「まだ良いじゃない」


えぇー・・・。


「いっちゃんが男の子を家に呼んだの初めてなのよ?」


いやいや、伊達さんには招かれていない。

僕を招いたのはアナタだ・・・。


しかも、手当ては未だにされていない。


「石神くんにだって都合はあるんだし」

「でもぉ~」


お?伊達さんが息を吹き返した。


「もう夕飯時だし」

「だったら石神くん!お夕飯食べていかない?」

「はぁ~・・・石神くんの夕飯は石神くんのお母さんが用意してるのよ?」

「むー」


むーて・・・一瞬、可愛いな。って思ったけどウチの母親がやってたらって想像をしたらドン引きだった。


「だったら、また来てくれる?」

「は、はい。またお邪魔させて頂きます・・・」


社交辞令だ。


「やった。うふふふふ」


伊達さんがまた死んだ顔になっている。


「これからもいっちゃんと仲良くしてね?」

「は、はい」

「あ、そうだわ!お土産に何か・・・」


そう言うや否やお母さんは席を立ち、どこかへ行ってしまった。


「石神くん・・・」

「うん・・・」

「今のウチに」

「え?」

「今のウチに帰って」

「え?いいの?」

「じゃないと帰れないわよ?」


マジ?


「え、じゃあ・・・うん」

「なんかごめんね・・・」

「ううん、大丈夫。お邪魔しました」


伊達さんのお母さんから逃げる様に急いで靴を履いて家を飛び出した。


その帰り道、歩いていると伊達さんからのLIMEがあり。それはもう平謝りだった。

ただ、あのお母さんの様子に既視感があり、歩きながらそれの正体について考えていたけど、家に着く間際に思い出した。


それは、ジルに執着して追い掛け回している伊達さん。

お母さんの場合はお客さんが好きって事なのかな?


やっぱり母娘だから似てるって事なんだろうなぁ。と、しみじみ思った。



僕はお父さんとお母さんどちらかにやっぱり似てるんだろうか?

お父さんはこれといった趣味があるって話も聞かないし。特にネット関係にはかなり疎い。

そう考えるとお母さん似なんだろうか・・・?


あのドッキリを仕掛けて驚いてる姿を見てはケラケラと笑っている母親・・・。

う~ん・・・まぁ、どちらかに絶対似るって訳でも無いだろうし・・・ね。

あんまり考えない様にしよう。


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