75話 しゃーなし
伊達さんとのコラボから数日が経ち。僕はと言うと・・・混乱を極めていた。
[兎合シュウ]大丈夫?
[春夏冬中]どこがダメだったと思います?
[兎合シュウ]う~ん・・・全部?
配信のやり方や意識を変えようと色々試した結果。
心配したシュウさんから配信直後にディスコがきた。
[春夏冬中]全部かぁ・・・
[兎合シュウ]何が分からないのか分からない状態?
[春夏冬中]あー、そんな感じかもです
[兎合シュウ]変に意識しない方が良いと思うよ~
[春夏冬中]もし良かったらなんですけど
[兎合シュウ]うん
[春夏冬中]マイクをお返しするついでに相談に乗って貰えませんか?
[兎合シュウ]良いけど。私で良いの?
[春夏冬中]シュウさんより適任はそう簡単に居ないかと・・・
[兎合シュウ]そう?だったら、スケジュール見てからまた連絡するね~
[春夏冬中]はい。よろしくお願いします
コンコン───。
「はーい」
ガチャ───。
「ん?どした?」
「私のせい・・・?」
「え?なにが?」
ドアがノックされ、開けるとそこには今にも泣き出しそうなめるとが居た。
「私がっ・・・適当に答えたからっ!?」
「だ・か・ら、なにがだよっ」
「配信っ」
「配信が・・・面白くなかった?」
「うん・・・」
oh...そんなにか・・・。
「ど、どうしたら良い・・・?」
「普通にやって」
普通・・・普通って何だ・・・?
「うん・・・色々、考え過ぎてたかもだから。前みたいにやる様にする」
前みたいって・・・どうやってた・・・?
意識すると・・・前は何を意識して何をどうやってたのか分からないんだけど・・・。
「やっぱり、私のせいだよね・・・?」
「あー、違う違う。伊達さんとのコラボで色々気付いたって言うか・・・」
「伊達さん?」
「伊達ごっこ」
「アイツのせいか」
「所為とかじゃないからっ」
「かばうんだ・・・?」
なにこれ、痴話喧嘩?
彼女に女友達の事で詰められてる感じ?
やったね!
彼女なんて居た事も無いのに妹相手に疑似体験が出来たっ!
うん、殺してくれ・・・。
「庇うとかじゃなくて、気付きを得たというか・・・今はそうやって試行錯誤してる段階?って言うのかな?」
「ふ~ん・・・」
「だから、めるとにも相談したんじゃん」
「ふ~ん」
「ぬいぐるみぃって参考にしたい所がいっぱいあるから」
「ふ~ん。なるほどね・・・ふひひ」
「まぁ、これからも相談に乗ってよ」
「仕方ないなぁ~」
めるとはふひふひ言いながら部屋に帰っていった。
小さい頃からあの奇妙な笑い方は変わらない。
勉強の為にぬいぐるみぃの配信もいくつか観たけど、あの笑い方はしていなかった。
「望~」
「なにー?」
「下りて来ないのー?」
階下から母親に声を掛けられ、用事は無かったけど渋々階段を下りていった。
「なに?」
「話し声が聞こえたから下りて来るのかな?って思って」
「めるとが用事あったみたいで」
「そっか。それでさ?」
「うん」
「あの絵どうすんの?」
「んー、収益化が通ったらメン限で配布しようかと思ってる」
「メンゲン?」
「メンバーシップに入ってくれた人限定で」
「あー、なるほどねー」
「収益化は通ったの?」
「まだ連絡無い」
「お母さんこそどうなの?」
「なにがー?」
「配信用にch作ってるじゃん」
「いざやるってなるとメンドくてねー」
「登録者数はドンドン伸びてるのに?」
「1回も配信してないのにね」
エッキスで1回だけYoutubeのアカウントを作った報告をしただけなのに登録者が3万を超えていた。
動画もショートもライブも何も無い。プロフィール写真さえ設定されていない、ただただ名前しか無いchに3万人。
自分の母親とは思えない程に凄い事だと思う。
中の依頼をした石倉先生と考えるとそれも当然の話だと思えるから不思議だ。
「やらないの?」
「手伝ってくれる?」
「僕が??」
最近まで1回もコラボをした事無かったのに、あれよあれよという間に次が何回目のコラボなのかも分からないくらいに回数を重ねてしまった。
「うん」
「別に良いけど・・・」
「やったっ。じゃ、今からお願いしても良い?」
「えっ?今からっ!?」
「うん」
「さっき配信終わった所なんだけど・・・」
「うん、それが?」
「いや、だって・・・」
「ん?もしかして」
「なに?」
「コラボじゃないよ?」
「へ?」
「配信の準備手伝って」
「・・・・・・」
「マイクとかカメラとか諸々の設置よろしくー」
「うん・・・」
「んじゃ、お風呂入ってくるから。その間によろしくねー」
勘違いって恥ずかしい。
いやぁ、僕が居ないと配信出来無いかー。しゃーないなー・・・とかは思ってない・・・。




