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7話 ファン

「石神くーん。ちょっとレジ見といてー」

「はーい」


今日は学校が終わってからコンビニでバイトだ。

バイトの時間までまだ少しあったので着替えを済ませてからバックヤードで待機していたら店長に呼ばれてしまった。


「石神君ってさ」

「え?はい」

「高校生だよね?」


店長に言われてレジに入ったが・・・誰?


「はい。高2です」

「だよね。俺のが年上だからタメ口で良いよね?」

「あ、はい」


いや、誰だ。新人さん?


「最近入ったんですか?」

「うん、昨日から」

「あー、そうなんですねー」

「コンビニってさー」

「はい」

「めんどいよね。バーコード読み込んで金受け取るだけってイメージだったけど」

「そうですねぇ。意外と覚えないといけない事とか多いですよね」

「そうなんだよねー」


もう辞めよっかなー。とでも言い出しそうな雰囲気を感じたタイミングで店長が戻って来た。


「ごめんごめん。まだバイトの時間じゃなかったよね?」

「そうですね。ちょっとだけですけど」

「だよね。その分、休憩時間ちょっと長く取ってくれて良いからね」

「分かりました」

「それじゃ、昨日から入ってくれてるんだけど。彼に補充教えてあげてくれる?」

「あー、はい。分かりました」


タメ口やる気ナシ男に教えないといけないのか・・・。



「うわー、暗っ、狭っ、寒っ」


と、ウォークイン。飲み物の冷蔵庫裏に来るとまた文句ばっかり言っている・・・と、思ったが、もしかしてテンション上がってるだけ?


「石神君ってさー」

「はい?」

「何か趣味とかあるー?」

「あー、ゲームとか好きですよ」

「ふーん。俺さー」

「あー・・・ちゃんと見てて貰えます?」

「んー?」

「こんな感じで」

「あー、うんうん。減ってるの補充してくんでしょ?そんくらい誰でも分かるって」


イチイチ突っかかる言い方してくるのがイラっとくるけど、こんな事でイラついてたら配信なんてやってられない。


「Vtuberとか観ない?」

「えっ?」

「知らない?Vtuber」

「いや、知ってますよ。好きなんですか?」

「バイト始めたのもさー、スパチャしたくてなんだよねー」

「へー、そうなんですね」


その気持は痛い程分かるっ・・・。


「ぬいぐるみぃって知ってる?」

「あー、知ってますよ」


バ美肉おじさんってヤツだな。

自分をおじさんだと思い込んでる女児と言われてるおじさんVtuberだ。


「みぃちゃんが可愛くてさー」

「あー、でも、ぬいぐるみぃって・・・」

「ん?」

「あ、いや、人気ですよね」


わざわざ教える必要も無い事だし、知ってても知らなくても可愛いは正義だからそのまま推してあげてくれ。


「そう!だから、スパチャでもしないとコメントも読んで貰えないんだよねー」

「スパチャは確実に読んで貰えますからね」


俺の配信くらい過疎ってればスパチャじゃなくても全部読むし、収益化もしてないからスパチャ自体出来ないんだけどね・・・。


「あれ?石神君結構詳しい感じ?」

「いや、普通ですよ普通」

「あー・・・」

「どうしました?」

「さっきまでバイトとかダルいから辞めようかと思ってたけど・・・」


早いな・・・まだ2日目なのにもう辞める気だったのか。

まぁ、どうせ辞めるなら早い方が良いけど。


「みぃちゃんの為って思ったら頑張れる気がしてきた」

「あー・・・その調子で頑張って下さい」



その後も教育係として店長からタメ口やる気ナシ男・・・おっと、山崎さんを押し付けられてしまった。


「あ、石神君」

「はい」

「山崎君どうかな?」

「どう・・・とは?」

「昨日、佐藤さんに任せようとしたら無理って言われてね・・・」

「あー・・・何か途中からやる気になったみたいでしたよ。山崎さん」

「そうなの?」

「みたいです」

「相性も良さそうだし石神君に任せちゃっても良い?」

「え・・・」


出来るなら勘弁願いたい。


「あー・・・やっぱ無理か」

「あー、いや、そういう訳じゃないんですけど・・・」

「いや、いいよ、考えとく。ごめんね」


絶対に無理って訳では無いけど・・・あんまり関わりたい人種では無いのは確かだ。


「って、休憩行ったっきり遅いね」

「あー、ですねぇ」

「呼びに行ってくれる?」

「はい」

「そのまま石神君も休憩入っちゃって」

「はーい」


バックヤードに行くとそこに山崎さんは居なかった。


「あれ?」


トイレかな?いや、違う・・・制服がソファに脱ぎ捨てられている。


「店長・・・」

「山崎君は?」

「居ないです」

「へ?トイレじゃない?」

「いや・・・バックヤードに制服が脱ぎ捨ててあったんで帰ったんじゃないかと・・・」

「え?そんな事あるっ?」


そんな事ある?と言われても事実そうなんだから・・・。


「ちょっと電話してくるからレジお願い」

「はい」



そして、そのまま山崎さん・・・いや、タメ口やる気ナシ男は電話も繋がらず帰って来なかった。

店長曰く、思ってたよりしんどかったから辞めると後日ナシ男の親から本当に申し訳無さそうに連絡があったそうだ。

世の中には色んな人が居る・・・。


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