69話 素人は黙っとれ
途中から獏枕ゆめさんとコラボをする事になったり、そのゆめさんが退場になり兎合シュウさんがバトンタッチする形で乱入してきたり。と、開幕から想定外の連続で気付けば意外と時間が経過していた。
「まぁ・・・なんて言うか・・・」
「うん?」
「ASMRのテクニックとかやり方じゃなく、設定を教えて欲しいんですよね」
そう。
耳ふーは強いと台風みたいになったりするってのは知ってるけど、そうならない為にはどうすれば良いかとかは分からない。
でも、今はそんな高等テクニックじゃなくスタートラインに立つ事の方が大事だ。
「設定かー」
「はい」
「設定とかはよく分からないぴょん」
「なんでだよっ!」
「前にやった時は最初にゆめちゃんに全部設定やって貰って」
「ふむ」
「それをメモってたからなんとか出来てたけど」
「ほうほう」
「今、最初から自分でやれって言われたら無理だぴょん」
「え、いや、でも、そのメモがあれば」
「あれば」
「出来るんじゃ?」
「あれば。ね」
「ないんかーい」
「ないぴょんっ」
そんな可愛く言われても・・・。
「だったら何でゆめさん帰らせたんですか・・・」
「え?私と2人でコラボするの嫌だった?」
「い、いや、今はそういう話じゃ・・・」
「あれ?リスナー?あきなちゅが私とコラボしたくないって」
「え?ちょ!」
「皆、松明は持ったぴょんかー?」
「ちょ、待っ・・・嬉しいです!シュウさんとのコラボ嬉しいですっ」
「うふふ。みぃちゃんのマネしてみたぴょん」
「勘弁して下さい・・・」
本気にする人が居たらどうするんだ。
ようやく鎮火した所なのに、また再燃でもしたら・・・。
「とりあえず・・・もう1回、耳ふーしてみない?」
「繋がってないのに?」
「繋がってなくても練習にはなるぴょん」
「まぁ、良いですけど・・・」
フゥ~フゥ~~~───。
「どうですか?」
「良い感じぴょん」
「コメント欄はハテナマークで埋め尽くされてますけど?」
「リスナーは素人だから分かってないぴょん」
ASMRのプロって言われてるゆめさんがそう言うならまだしもシュウさんだからなぁ・・・。
「それじゃあ、黒耳はケースに仕舞うぴょん」
「え?」
「早く」
「え?はい・・・」
いきなり何がどうした・・・?
「仕舞ましたけど・・・?」
「それをその状態のまま郵送して返してくれれば完璧ぴょん」
「いや、住所知らないです」
「こないだ来たのに?」
「場所は知ってても住所は知らないですよ」
「あー、そっか・・・持って来て貰うのは悪いから今度取りに行くね」
「だったら持って行きますよ」
こんな高価な物を貸して貰えたんだから返す時はお礼もしないといけないし。
まぁ・・・でも、借りたばっかでもう返せってのはちょっと・・・。と、思う所が無い訳では無い。
「伊達ちゃんに持って来て貰っても良いけどね~」
「あぁ~・・・喜んで行きそうですね・・・」
「皆には言ってなかったけど。実は今日も来てたぴょん」
「だ、大丈夫でした?ここで聞く話じゃないですけど・・・」
「大丈夫だぴょん」
いや、シュウさんに迷惑を掛けた事もあるけど。ジルに逃げられまくって、また伊達さんがヘコんでないか。とか、色々あるけど・・・流石にここで詳しく聞く訳にはいかないし。シュウさんも詳しくは言えないのは分かってる。
分かってはいるけど、触れてしまっただけに気になって仕方が無い・・・。
「あきなちゅって何か」
「はい」
「伊達ちゃんのママみたいだぴょん」
「へ?」
「心配の仕方が保護者みたいだぴょん」
「そうですか・・・?なんか暴走してたから心配になっただけです」
「ふぅ~ん。へぇ~。なるほどぉ~。ぴょ~ん。ねぇ~」
「な、なんですか・・・」
「なんでもないぴょ~ん」
何か含みがあるなぁ・・・。
「それで・・・今日の配信はASMRを教えて貰うって企画でしたけど・・・」
「うん」
「どうします?というか、どうしてくれます?」
「えー、なんか棘があるぴょん。どうしたら良いと思う?リスナーさん助けて欲しいぴょん」
「ん・・・?それは、どっちの意味で・・・?」
「燃やすぴょん?」
「一旦、落ち着きましょうか・・・」
「ぴょん?」
「これから何をするかリスナーさんに助けを求めてる。って、事で良いんですよね・・・?」
「それは、どうかなー?ぴょん」
「・・・・・・」
「あきなちゅはどっちが良いぴょん?」
そんなのは比べるまでも無く後者。
燃やされるか、リスナーさん達とワイワイ楽しく配信するか。
その2択なら勿論、当然、完璧に後者だ。