表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/108

65話 寝起きじゃないけどヤシの木

ジルに会う為に伊達さんは早退したので、シュウさんにその事を伝えた所・・・。


「連絡くれて良かった」

「はい。ご迷惑おかけします・・・」

「寝る所だったから」


そうだ。

Vtuberは生活リズム終わってる人が多いんだった。


僕もVtuberとして人気が出てVtuberを仕事してやっていく事になればそんな生活習慣になるんだろうか?

いや・・・僕にとっての配信は趣味だから・・・。


「迷惑だったら追い返して下さい」

「ちゃんとやっとくから心配しなくて良いよ~」

「すみません。お願いします」

「はーい」


シュウさんに任せた以上、こちらから探りを入れるのは躊躇われたので向こうからの連絡を待っていたけど・・・一向に連絡が無いままお昼休みになった。


「ただいま・・・」

「えっ、おかえり・・・?」


この時間まで連絡が無いのは、便りが無いのは良い便りという事なんだろうと思っていたけど不意に伊達さんが学校に戻ってきた。


「シュウさんの所行ったんだよね?」

「うん・・・」

「シュウさんは?」

「寝ちゃった」

「あぁ・・・うん・・・」


寝る所だったって言ってたから限界に達したのか・・・。


「で?」

「鍵はポストに入れて帰ってきた・・・」

「そっか・・・で・・・」


触れるべきかどうか悩むけど・・・。


「ジルはどうだった?」

「・・・・・・ひーん」


ダメだった様だ・・・。

というか伊達さん・・・マジ泣きですやん・・・。


「ちょ・・・」


クラスメイトからの視線が痛い。


「ここじゃなんだし・・・」


と、手を引いて屋上に連れ出した。


「スンッ・・・スンッ・・・ウゥッ・・・」


屋上に着いて強風吹き荒れる中に居てもまだ泣き止まず・・・。


「な、なんか飲み物でも買ってくるね」


と、気まずさから逃げ出そうと思い勝負手を放った。


「あるから大丈夫」


そう。

伊達さんはカバンを持ったままだったので中から水筒を取り出すという反撃の一手を喰らった。


「そっか・・・」


退路は断たれた。


「ジルはさ?普段、シュウさんとしか接してないから人に慣れてないんだよ。多分」

「石神くんには懐いてた・・・」

「それは・・・たまたま・・・じゃないかな?それでさ?それでさ、猫カフェとか行ってみない?」

「・・・・・・」

「ほら?お店の猫だったら人にも慣れてるし」

「この辺りの猫カフェは・・・」

「うん」

「全部、出禁になった・・・」

「!?」


どういう事・・・?


「え?な、なんで?」

「なんか・・・分からないけど猫に嫌われて・・・ひーん」


なにしたんだよ・・・。


「いっその事さ?それだけ猫が好きなんだったら飼ったら良いんじゃない?」

「・・・・・・」


あ、でも、家族がアレルギーだったり、15年とか生きる生き物を簡単に飼うのもって話か・・・。


「何回か飼ったんだけど・・・」


お?


「逃げたり・・・」


お、おう・・・。


「ノイローゼになったり・・・」


だから、猫に何したんだよ・・・。


「う、うん・・・」

「家族からももう飼っちゃダメって・・・」

「そ、そっか・・・」


ほ、他に活路は・・・。


「犬とかは?ドッグカフェとか行ってみない?」

「犬は嫌い」


そ、そうなんですね・・・。


「大きいし」


小型のもいっぱい居るけど。


「噛むし」


猫も噛むし引っ掻くけど。


「臭い」


それはそうかもしれない。


「普段ってどうしてたの?そんなに猫好きなんだったら」

「猫のぬいぐるみ抱いて、猫の画像見て、猫の動画見て、心の隙間埋めてた」


某福造さんにドーンされそうな・・・。


「それが・・・秋乃さん家に行ったらジルが居たんだからしょうがないじゃん・・・」


それは確かに仕方ない・・・。

常に飢餓状態でいきなり目の前に現れたんだから、あれでも全然我慢してた方だと思う。


「ひーん・・・」


また泣き出した。


そして、(おもむ)ろに髪の毛を後ろで束ね、カバンからお弁当を取り出し、泣きながらお弁当を食べだした。


因みに僕はまだ食べていない。


「えっと、それじゃ僕は・・・」

「あのね?」

「え、うん」

「昔から犬には好かれるの」

「うん」

「でも、猫は全然ダメで・・・ひーん」


喋って、泣いて、食べて、完全にマルチタスクを(こな)している。


「あの、僕もまだ・・・」

「それでね?」

「え、うん・・・」

「私が小学校低学年の時にパパが子猫を貰ってきてくれて」

「うん」

「ひーん」



そんな調子でチャイムが鳴るまで開放して貰えず。

僕は空腹のまま午後の授業を迎える事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ