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60話 ぬっこ

ちょっとお高いお店での食事を終え、タクシーに乗ってシュウさんの自宅に向かった。


「美味しかったね~」

「ですねー」


確かに美味しかった。

美味しかったけど・・・あの金額を出すくらいならワクドに何回も行った方が良いと貧乏性の僕は思ってしまった。


ご馳走様でした。


「あ、そこのコンビニでお願いします」

「はい」


タクシーから降り「ちょっと待ってて」と、シュウさんだけコンビニに駆け足で入っていった。


「良いのかな?」

「なにが?マイク?」

「それもだけど、家にまで上がり込んじゃって・・・」

「オフコラボとか結構してるみたいだからキレイにしてるんじゃない?」


そういう問題?


しばらくすると両手に大きなサイズのコンビニ袋を持ったシュウさんが出てきた。


「え、あ、持ちます!」

「私も!」

「あ、良いよ。僕が持つから」

「そう?じゃ、お願い」

「ここから直ぐだからお願いしよっかな」


シュウさんの言っていた通り、2分程の距離でマンションに着いた。


マンションのオートロックを(くぐ)り、エレベーターに乗り、部屋の前まで来た。

それでもまだ自分が部屋に上がり込んで良いのか悩んでいる。


「それじゃ入って」

「お邪魔しまーす」

「お邪魔します・・・」

「えっと、これスリッパね」

「ありがとうございまーす」

「ありがとうございます」


玄関から部屋に向かう通路にはダンボールが積み上げられている。

この中にあるんだろうか?


「ここ配信部屋だけど、とりあえずリビングに荷物置きに行こっか」

「「はい」」


通路を真っ直ぐ進みリビングに入ると何かが飛び出して来た。


「あ・・・今更だけど、猫大丈夫?」


飛び出してきたのは猫・・・猫?

中型犬くらいのサイズがある猫。

確かに見た目は猫だけど、こんなに大きいのは初めて見た。


「大きくないですか?」

「うん、メインクーンって品種で大きいの」


聞いた事はある。

ジャガイモの品種とどっちがどっちか分からなくなるヤツ。


「僕は大丈夫です」

「伊達さんは?」

「撫でても良いですか?」

「うん、人懐っこいから嫌がる事しなければ大丈夫だよ~」

「名前はなんて言うんですか?」

「ジル」


名前を呼ばれたと思ったのかニャーとひと鳴きしてシュウさんの足に頭を擦り付けている。


「とりあえず入っちゃお」

「「はい」」

「2人はそこのソファ使って」

「「はい」」

「その袋は貰うね」

「はい」


コンビニ袋を渡し、伊達さんとソファに腰掛ける。

ジルはシュウさんをストーキングしている。

そして、伊達さんの視線はジルをずっと追い続けている。


「好みとか聞いてなかったから適当に選んじゃったけど。好きなの選んで」


そう言いながらソファ前のローテーブルにアイスがいくつか並べられた。


「飲み物は・・・しまったジュース買えば良かった・・・」

「いやいや、お構いなく・・・」

「常温のお茶か水なら直ぐ出せるけど、紅茶とコーヒーはちょっと時間掛かるかな?何が良い?」

「本当にお構いなく・・・」

「お茶貰って良いですか?」

「あ、じゃあ、僕も・・・」


あんまり遠慮し過ぎるのも失礼かと思い、伊達さんに倣った。


「それからー」


ガサガサとコンビニ袋を漁り、中から大量のお菓子もローテーブルに並べられた。


「アイス後が良いなら冷やしとくけどどうする?」

「先に」「後で」


被った。


「じゃあ、僕も後で」

「良いの?」

「はい」


こういう場合、手伝いをしたいけど逆に邪魔になる事が多いからどうすれば良いか悩む。

どうするべきか悩んでいたが横に座っている伊達さんはシュウさんをストーキングしているジルにチッチッチッチと口で鳴らし手を伸ばして触れようとしているが毎回絶妙な間合いで躱されている。


ちなみに廊下に積み上げられているダンボールの中身はセールの時に買った飲み物らしく。僕と伊達さんの前にあるペットボトルのお茶はそこから取って来たらしい。


「なんか楽しいねっ」

「え?」

「ウチのお客さんが来る事って滅多に無いから舞い上がってるかも」

「そうなんですね」


腰を落ち着けて話しだしたが伊達さんの意識はジルにしか向けられていない。


「オフコラボとかしないんですか?」

「うーん、事務所のスタジオとかが多いかな?」

「なるほど」

「ほら、いっぱいあるから遠慮せずに食べてね」

「はい。・・・お?」


不意にジルが僕の膝に乗ってきた。


「あ、こら、ジル!」

「大丈夫ですよ」


するとジルは僕に頭を擦り付けてきた。


「撫でて欲しいみたい」

「あ、じゃあ・・・」


ジルの背中を撫でると、そこじゃないとばかりに撫でられたいであろう場所を擦り付けてきた。


「ずるい・・・」



横を見ると伊達さんが恨みの篭った目でこちらを見ていた。



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