59話 自律感覚絶頂反応
「で、何の話だっけ?」
「かなり脱線しちゃいましたね」
お?やっと帰って来てくれたか・・・。
「服、買いに行く話だったね」
「うんうん」
違うっ・・・。
「いや、あの・・・そろそろ・・・」
「そろそろ?あ、そっか、ごめんごめん」
やっと分かってくれたか。
「飲み物も頼んでなかったね。何食べたいか決まった?」
違う!違わないけど、違うっ・・・。
「肉系でオススメありますか?」
「んー、お肉なら・・・これとか?あ、これも美味しいよ」
「どうしよっかなぁ・・・」
「だったらどっちも頼んじゃえー」
「えー、良いんですか?」
「食べ切れなくても石上君が居るから大丈夫でしょ」
おっと、置物から残飯処理係に昇格しました。
「石神君は?」
「何かオススメあります?」
「男の子の好み分からないのよね。どんなのが好き?」
「僕も肉系かな?ガッツリ系でお願いします」
「ここのはどれも美味しいから適当に頼んでみたら?」
あれっ?伊達さんと違って僕の扱いが雑ぅ・・・。
諦めて肉っぽい料理を勘で頼んでみた。
「そういえば秋乃さんってASMRやってましたよね?」
「あー、何回かやったけど向いてなかったなぁ」
「そうですか?」
「うん。やってて恥ずかしくなってきて途中で笑っちゃう」
「伊達さんはやらないの?」
「私は無理です。ボイス収録でも笑っちゃって無理ですから」
「一緒だねー」
「それで思ったんですけど・・・」
「うん?」
「ASMR用のマイクとか機材はある訳ですよね?」
「うん、何回か使ったっきりダンボールの奥底に封印してる」
「それを石神くんに渡せば・・・あきなちゅのASMRがっ」
「!?天才現る・・・」
また2人だけで話してると思ってスマホに手を伸ばしかけたままのポーズで固まってしまった。
「え?僕?」
スマホに手を伸ばしそのままのポーズで固まっている僕を2人が見つめている。
「住所教えて」
「へ?」
「今度、郵送するから」
「え、いや・・・」
「あ、でも、繊細なマイクだから私が持ってくね」
「いやいやいや」
「やっぱり、いきなり家に行くのは失礼かな?」
「いや、そうじゃないですっ」
「じゃあ、なに?」
「そんな高い物、借りれないですよっ」
「借り・・・いや、あげるつもりだったんだけど?」
「尚更っ」
有名な超高級ASMR用マイクは100万を超える。今、たしか130万くらいしてたはず・・・。
そこまでじゃなくても有名所で言えば30万くらいとか15万くらいとか、定番の安いヤツでも7万くらい。
メルカリとかで売ってる自作のASMR用マイクとかは1万しないのもあったりするけど、シュウさんが使う様なヤツは多分高いヤツだと思う。
「ち、ちなみに・・・」
「うん?」
「おいくら万円のヤツですか?」
「あぁ、アレじゃないよ。流石にあんなのは買えないもん」
「ですよね・・・」
「私が買った時で24-5万だったと思う」
はい、あの黒いヤツー。
今は30万超えてるヤツだー。
「そんな高いの当然貰えないですし、借りるのも怖いですっ」
「えー?だって使ってないんだよ?」
「貰っちゃいなよ」
「え、ちょ、貰うのはっ・・・」
「だったら私が半分出すから」
「ちょっ・・・」
「伊達さん待って」
そう。
半額でも12-3万。
そう簡単に出せる金額じゃない。
「私と伊達さんで半分づつだと不公平になる」
ん?
「あ・・・」
「みぃちゃんも1/3出す権利あるでしょ?」
「そうでした」
どういう事?
「それで行きましょう」
「え?」
「後でで良いからディスコで住所送って貰って良い?」
「あれ?もしかしてマイク貰うの確定ですか?」
「「うん」」
「いやいやいや」
「とりあえず試しでやってみて。合わなかったら返してくれれば良いから」
「分かりました・・・」
「それじゃ、そうゆう事で!」
そして、シュウさんは店員さんを呼ぶボタンを押した。
「それじゃあ、乾杯の音頭取るねー」
「「はい」」
「あきなちゅのASMRに」
「「かんぱーい」」
え・・・?
「そういえば今日もこの後ってバイト?」
「今日は休み貰いました」
「そうなんだ?だったらさ」
「はい」
「この後で家に来ない?」
「え?」
「マイク取りに来ない?」
「そうですね。わざわざ来て貰うのも悪いですし、その方が良いかも」
「秋乃さんの配信環境どんなのか見たいですっ」
え?家上がるの?
「普通だよ?」
「えー」
「でも、気になるよね。私も他の人の気になるもん」
「ですよねっ」
と、何故か・・・Vtuber界のレジェンド兎合シュウさんの自宅に行く事が決定してしまった。
しかも、家に上がらせて貰う事に・・・。




