56話 スーパーチャット
正直、なんで炎上したのか良く分からない炎上騒動もようやく鎮火して平穏な日常が帰ってきた。
「今日もこの後バイト?」
「うん」
また放課後に伊達さんと恒例のワクドにやって来た。
「ところでさ?」
「うん」
「いつになったら収益化するの?」
「え?中のチャンネル?」
「うん」
「うーん・・・」
「収益化の条件満たしてるでしょ?」
「うん。申請したら通ると思う」
「何か理由でもあるの?」
「うーん・・・炎上してアンチとかばっかだと思うんだよね。僕の登録者って」
「うん」
「それで達成って微妙じゃない?」
「そう?」
「え?違う?」
「私のチャンネルだってアンチはいっぱい居るし」
「うん」
「私の事が最推しの人なんてちょっとだし」
「ちょっと?かなり居るでしょ」
「んー、箱推しで登録してるだけだったり、私と仲良い子が推しでついでの登録だったりとか」
「うん」
「なんとなく登録して。見ないけど削除してないだけの人とか」
「うん」
「そんな人もいっぱい居るはずなんだよね」
「まぁ、そりゃね」
「全員が全員自分のファンってのは無理があるし」
「うん」
「そこは割り切るしか無いんじゃない?」
「かな?」
「それと」
「うん」
「お金貰う事に抵抗あるとか?」
「それは・・・無くは無い」
趣味みたいな配信だし、事務所に所属してる訳でも無い。
それなのにスパチャを貰うのは申し訳無さが勝ってしまう。
「私も最初は抵抗あったんだけど」
「そうなの?」
「そりゃ・・・ね」
登録者数100万人を超える伊達ごっこさんでもそうなのか。
「最初は別のガワでやってて」
「あー、うん」
前世ってヤツか。
「その時は登録者も3桁とかで全然だったんだけど」
「うん」
「オーディションに受かって今のモデルでデビューしたら」
「うん」
「デビュー前に発表した時点で10万人とかよ?」
「流石、大手事務所って感じだね」
「デビューから3日で収益化も通るし」
「すげー」
トントン拍子ってヤツだ。
「その分、プレッシャーも凄くて」
「あー、たしかに」
「楽しんで貰える配信が出来てる自信も無いのに数字はどんどん伸びていくし」
「うん」
「収益化も通って嬉しかったけど。通ってから最初の配信でね?」
「うん」
「いくら飛んだと思う?」
「大手だと数百万とかいったりするよね」
「そう!300万飛んだんだよ?収益化通って最初の配信で」
「すげー」
「あれはね・・・経験した人にしか分からないと思うけど」
「うん?」
「ただただ怖い・・・」
「そうなの?」
「だって、次から次へとお金が飛んで来るんだよ?それも、知らない人から」
「うん・・・」
「最初は数字が増えていくなー。程度だったけど、急に実感湧いて・・・その瞬間から怖くなった」
「なるほど・・・」
「今はもう慣れたからどんどんいくらでも投げてくれー。って、感じだけど」
「心境の変化があったとか?」
「んー、慣れかな?」
「慣れかー」
「あとは、貰ったスパチャもほとんどは機材とか歌みたとかの費用に消えるからね・・・」
「金掛かるよね・・・」
「うん・・・」
それはもう本当に・・・際限が無い・・・。
「スパチャ貰ってさ?」
「うん」
「その分、バイトの日数減って配信頻度が上がる。とか」
「あー、うん」
「機材が良くなって音が良くなったり、出来る事が増えたり」
「うんうん」
「そうやって還元していくんだから、気にせず貰っとけば良いと思うよ?」
「なるほどね」
「あきなちゅの配信頻度が上がるなら・・・私はいくらでも投げるっ!」
「ちょ・・・上限はあるからね・・・」
「大丈夫」
「うん、無理はしないでね?」
「サブアカを作れば際限無く投げれるっ」
「おいっ」
「そして、私があきなちゅを養う・・・」
「いや、怖いて・・・」
「たぶん、後の2人もおんなじ感じだと思う」
「尚の事、収益化の申請出しにくいわっ」
「えー?だったらスパチャしないから収益化だけしてよっ」
「嘘臭い・・・」
「バレたか・・・」
「うん、とりあえずは様子見」
「前向きに?」
「どうだろ?」
流石にめるとは投げないと思うけど・・・シュウさんも伊達さんも稼いでるからなぁ・・・。
同業者にスパチャを投げる文化もあるだけに怖い。
「ってかさ」
「うん」
「スパチャ投げるくらいだったら今度ワクドに来た時奢ってよ」
「えー、ヤダ」
「なんでっ」
「あきなちゅに投げたいのっ」
「僕じゃん・・・」
「違う」
まぁ、分かる。分かってて言った。
「スパチャは中抜きされるんだし・・・」
「そこじゃない」
だよね。
「あきなちゅと石神くんが同一人物なのは頭では理解してるけど、やっぱり別人なの」
それはチョット何を言ってるのか良く分からない。




