53話 タヒね
完全に母親にペースを握られ、進行役のはずが着いて行くのがやっとの状態だった。
「他に何か聞きたい事ありますかー?何でも答えますよー」
「そろそろ良い時間なんで次を最後の質問にしましょうか」
配信開始からしばらく経ったけど、未だに僕への誹謗中傷のコメントがチラホラと目に付く。
しかも、ご丁寧にNGワードをすり抜ける為に単語の間にスペースやドットを入れたり、わざと別の文字に置き換えたりと手が込んでいる。
「それにしてもコメントの流れる早さ凄いねぇ」
「ですねぇ。僕のチャンネルとは比べ物にならない速度です」
「あたるくんもまだまだ頑張らないとだねー」
「まぁ、僕は僕のペースで頑張っていきたいと思います」
それにしても・・・質問って言ってるのに罵倒を望むコメントが多い・・・。
「最後だから石倉先生が選びます?」
「私?んー、どれにしよっかなー?」
「ところで・・・」
「うん?」
「みぃが全然喋ってないけど居る?」
「えっ!?居るよ?」
「枠主なんだから喋れよ・・・」
「あー・・・なんかあきなちゅの配信はROM専になるクセが・・・」
「勝手にリスナーに側になるなっ」
「ごめーん」
「しっかりしてくれよ・・・。折角だから石倉先生とみぃで1つづつコメントから質問選んで貰いましょうか」
「「はーい」」
最後だから。と、際どい質問をチョイスする可能性も考えたけど2人共比較的普通の質問をチョイスしてくれて危なげなくエンディングに向かう事が出来た。
「今回も突発コラボでしたが皆さんご視聴頂きありがとうございました」
「ありがとうございましたー」
「ありがとー」
「突発な上に急遽ゲストが来たりして・・・かなり焦りましたけど」
「楽しかったから良いでしょ?」
「ま、まぁ・・・ね」
確かに楽しくはあった。
1人で配信するのはコメント欄を閉じてるから地獄だし・・・。
「何か告知とかありますか?」
「私は特に無いかな」
「みぃは?」
「ない」
「僕も無い・・・折角振ったのに誰も告知ありませんでしたっ・・・」
「それじゃー終わりますかー」
「ですね。皆さんご視聴頂きありがとうございました!」
「お疲れ様ー」
「お疲れ様でした!」
「おつぬい~」
配信終了後、飲み物を飲みにだったりトイレに行ったりで何となく全員がリビングに集まった。
「お疲れ」
「あ、うん、お疲れ様」
「コラボ初心者とは思えない回しだったねー」
「いや、メンツ的に特殊だからってのはある」
「家族だから?」
「うん。これが普通のVの人相手だと出来るか分からない」
「まっ、経験だね」
「かもね」
「にしても、めるとが大人しかったね」
「ごめんって」
「あ、そうそう。めるとに言いたい事あったんだ」
「うん?」
「喋らないのは100歩譲ってまだ良い。全然良くは無いけど・・・」
「うん」
「僕の配信の時はROM専になるって言ったのマズくない?」
「なんで?」
「僕の配信観てるって聞こえない?」
「あ・・・」
「僕のリスナーは・・・くっ・・・少ないんだから・・・簡単に特定されちゃうし・・・」
「そうだね。少ないから」
「少ないからねー」
「何回も言うなっ」
「「1回しか言ってませーん」」
「ハモんなっ!」
この母娘は本当に・・・。
「まぁ、気を付けろよ」
「うん」
「それじゃー、ご飯にする?」
「「うん」」
「まっ、これから作るんだけどっ」
「だよね・・・」
「んじゃー、めると手伝って」
「えー」
「えー。じゃない」
「なんでー」
「なんで。でもないの」
「それじゃ僕は作業してくる」
「出来たら呼ぶー」
「うん」
まだブツクサ文句を言っているめるとを尻目に僕は部屋へと戻った。
すると、鏑木さんからメッセージが着ていた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です。配信観させて頂きました」
「どうでしたか?」
「やっぱり慣れてる相手なのか安心して観ていられました」
「良かったです」
「ご報告なのですが」
「はい」
「前回と今回のコラボでの誹謗中傷コメントに対して開示請求を行います」
「え?マジですか?」
「全部ではなく酷いコメントに対してのみですが」
「はい」
「言い方は悪いですが見せしめの意味もあります」
「あー、はい・・・」
「これでお兄さんのチャンネルもある程度鎮火すると思うのですが」
「期待してます」
「それと」
「はい」
「みぃに反応が無いのですが・・・」
「今、晩ご飯作るの手伝わされてます」
「なるほど」
「返信するように言っておきましょうか?」
「いえ、そこまで急ぎでは無いので大丈夫です」
「分かりました」
「それではコラボお疲れ様でした」
「はい。ありがとうございました」
そうしてぬいぐるみぃとは3度目。石倉先生とは2度目のコラボを無事に終える事が出来た。




