44話 横紙破り
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ベッドに横になり、やり忘れていたソシャゲのデイリー周回をしていると部屋のドアをノックする音が響いた。
コンコン───。
「はーい」
ガチャ───。
「ん?どした?」
「のぞむ今ヒマ?」
「ヒマっちゃヒマだけど?」
「だったら配信の準備してよ」
「え?今から?」
「そう」
「なんで?」
「今から配信するからコラボしよ」
「は?」
コラボなんて・・・もっと事前準備してやるもんだろ・・・。
「やるの?やらないの?」
「いや、ちょっと待てよ・・・」
「待たない。良いから早く準備して」
「いや、まだ返事してないっ」
「あと5分で開始なんだから早くしてっ!」
「おまっ」
やるやらないの返事をしていないのに、あと5分と言われ早くしないといけない気がして準備に取り掛かってしまった。
「これ」
「ん?」
「ディスコのID」
IDの書かれた紙を渡された。
「時間無いから急いでね」
そう言うと自分の部屋へと帰っていった。
「勝手な事ばっか言いやがって・・・」
そんな悪態とは裏腹に手早く準備を進めていく。
ディスコを開き、受け取ったメモの通りに申請を送る。
「よし、承認されたな」
ボイスチャットを繋ぎ、いつもの様に薄くボイスチェンジャーを掛けた。
「で、なにするんだ?」
「対談」
「台本は?」
「ない」
「マジかよ・・・」
「私が質問してくから、答えてくれるだけでいい」
「分かった。任せるぞ?」
「うん」
「ミュートはそっちで掛けろよ?」
「わかってるって、私を誰だと思ってるの?」
「あー、はいはい、人気Vtuberのぬいぐるみぃ様でしたね。失礼しました」
「死ね」
「そんなキャラでいくのか?」
「バッカじゃないの?始まるから黙って」
「あー、はいはい」
タブレットでみぃの配信画面を開くとちょうど待機画面が明けた所だった。
「こんばんみぃ~。今日はどうしてもって頼まれて突発コラボだよ~」
どの口が言う・・・。
「ふふふ・・・なんとプチ炎上中の春夏冬中さんに来て頂きました~」
「プチ炎上中とか言うなっ」
「音入ってまーす」
「おまっ・・・ゴホンッ・・・春夏冬中です。リスナーの皆さんとは親子コラボ以来ですかね?よろしくお願いします」
「はいはい。よろしくお願いしまーす」
完全にめるとのペースだな・・・。いや、ぬいぐるみぃか・・・。
「今日はみぃのリアル兄である春夏冬中さんを質問責めにしたいと思いま~す」
「お手柔らかに・・・」
「いくつか質問は考えてきたけど、リスナーの皆も気になる事あったらコメントしてね~」
「お手柔らかにお願いします・・・」
「それじゃー、最初の質問!」
「おう・・・ドンと来い」
「妹は可愛いですか?」
「生意気」
「リスナー。ここに敵が居るぞー、火を灯せー!」
「おい、おまっ・・・」
「妹は可愛いですか?」
「ぐっ・・・可愛いです・・・」
「ふむ、よし。リスナー待機だ!」
なんの質問だよ・・・。
「んじゃ、次からは真面目に質問」
「おう・・・」
「配信を始めたキッカケは?」
「なんとなく?」
「リスナー!」
「待て!・・・ちゃんと答えるからっ」
「よし、待機!」
「元々、そんなに喋るのが得意じゃなくて練習というか1人でパソコンに向かって喋るのなら自分でも出来るんじゃないかなー?って思って。かな?」
「ほほ~」
「恥ずいわっ!」
「ふひひ」
本当に恥ずかしいから止めて欲しい・・・。
「んじゃ、次~」
「おう・・・」
「配信楽しい?」
「楽しいね」
「人気無いけど?」
「ぐっ・・・まぁ、それでも、何人か毎回観に来てくれてるし楽しんで貰えてると思うから」
「ほほ~。んじゃー、その何人かってのはすっごい大事な訳だ?」
「大事だね。その人達が居るから続けて来られたし」
「ほほ~。ふひひっ」
「キモいな・・・」
「お?リスナー、キモいって言われたんだけどー?」
「やめろってそれマジで・・・」
「んじゃ、次はコメントから質問拾おっかな。あきなちゅも気になるのがあったら拾っていいよ」
「ok。んー、何かあるかな?」
「あ、これどうかな。家ではなんて呼ばれてますか?」
「名前ですね。呼び捨てです」
「お兄ちゃんって呼ばれたい?」
「今更?」
「たしかに」
「あ、これ良いかも」
「どれ?」
「今後も兄妹コラボはありますか?」
「どうなんですか?」
「さぁ?今回のコラボはさっき言われて急遽やる事になったくらいなんで。本当に5分くらい前に・・・」
「可愛い妹とコラボ出来て嬉しいですか?」
「それコメントにあった質問か?」
「そうだよ」
「絶対エアコメだろっ」
「で?どうなんですか?」
「コラボ経験自体ほとんど無いから新鮮で楽しいは楽しい」
「ふひひっ。楽しいんだ~?」
「うっさいなぁ」
こんな感じで最後までめるとにイジられて終わったけど・・・正直、リアルでの会話と大差無い気がして、こんなのを配信に載せて良いのか不安になった。