42話 2匹目の泥鰌
「ごちそうさま」
食卓は一緒に囲むが一切目は合わせず、僕の事は居ないモノとして認識している。そんな感じで、さっと夕食を食べ終えためるとは足早に自室へと駆け上がっていった。
「どう思う?」
「なにがー?」
「居ないモノとして扱われてるんだけど」
「はっはっは。望がそう思うんならそうなんだろうね」
「え?どういう事?」
「ドッキリの後なにか言われた?」
「なーんにも」
「じゃ、いいじゃん」
「親としてどうなの?兄妹の仲が拗れたままってのは」
「好きにすればー?って感じかな?」
「え?そうなの?」
「無理矢理、仲良くしなさーいって言って出来る?」
「そりゃ、無理だけど」
「アンタ達が幼稚園児くらいだったらお互いにごめんねってさせて仲直りの握手でもしたら済むんだろうけど」
「まぁ、そんな年でもないからね」
「それに、お母さんが何言ったって聞かないでしょ?どうせ」
「かもね」
「ホントに頑固に育って・・・誰に似たんだか・・・」
「そりゃ、お母さんじゃない?」
「それもそっか」
「それじゃー・・・僕もご馳走様でした」
「今日も配信?」
「うん」
「しばらく休んだら良いのに」
「えー、なんで」
「放っときゃ飽きて来なくなるでしょ。あんなん」
「まぁ、そうなんだろうけど・・・あんなんの所為で休まされるのも癪じゃない?」
「ふふ・・・まぁ、好きになさい」
「言われなくてもー」
とは言ったものの・・・コメント制限は今も掛けたままなので誰もコメントが出来無い状態のままだ。
なので、会話のキャッチボールをする事も無く、ただただ1人喋りを続けている。
やっぱ休めば良かったかもしれない。
そんな弱気がヒョッコリ顔を出す・・・。
けど、配信中は常に強気で居なければならない。
とは言え、コメントが無ければただただゲームをしながらの独り言になってしまい客観的に見て全く面白くない配信になってしまていた。
いや、客観的に見なくても面白くない。何故なら僕自身が面白いと感じていないから。
そんな苦行な時間を過ごた。
「それではそろそろ終わろうと思います。またのご来店をお待ちしてまーす」
深く溜め息を吐き配信を停止した。
このままだと配信を続けても楽しくない。
しばらく休むのも手だとは思う。休み明けにアンチが居なくなっている保証は無いけど。
だったらこのアカウント自体を休止させて、新たなアカウントとモデルで再デビューという手も無くは無い。
問題はそんなお金の余裕も無いという事だ。
まぁ、とりあえず・・・シュウさんとのコラボが終わってから考えよう。
問題を先送りにして、もうお風呂に入って寝てしまおう。
そう考えながらSNSのチェックをしていると予想外の人物からDMが来ていた。
「え?マジ?」
シュウさんの時と同様に名前からホームに飛ぶとやっぱり本物だった。
「マジで伊達ごっこじゃん・・・」
シュウさんの時と同じ反応をしてしまったが、こんな事は何度あっても慣れる気がしない。
そして、DMの内容はシュウさんのクソ長文とは違い簡潔だった。
初めまして伊達ごっこです。
良かったらコラボしませんか?
お返事待ってます。
と、めちゃくちゃ簡潔に3行。
Vtuberは3行以上の文章を読めないと言われているが・・・まぁ、ぶっちゃけこっちの方がありがたい。
DMでのやりとりをしても良いけど、どうせならとディスコのIDを送ると直ぐ様返信があった。
「はじめましてー」
「初めまして春夏冬中です」
「やっとマネージャーの条件に達したからコラボ依頼出来る様になったんだ」
「そうなんですか?」
炎上中なのに?炎上が条件とか?・・・は、流石に無いか。
「まぁ・・・今、聞いたらダメって言われそうだけど」
「え?」
「最初に聞いた時に登録者数が収益化のラインに達してないからダメって言われて」
「あー」
「今はもう収益化のラインに達してるから大丈夫!」
「軽く炎上してるのはご存知ですよね?」
「うん、だから今聞いたらダメって言われると思う」
いや、なんでそこまでして・・・。
「実はね?」
「はい」
「私、DTickなの」
「え?伊達さん?」
あ、本名の方で答えちゃった。
「うん、伊達いたち=DTick」
あ、そうか・・・って、この人・・・読みは違うけど本名とVの名字一緒とかヤバいな・・・。
「マジですか・・・」
「マジマジ」
クラスメイトの伊達依知子さんとVtuberの伊達ごっこさんと僕の数少ないリスナーのDTickさんが同一人物。
う~ん・・・まぁ、でも・・・ティーナカさんの二番煎じって言うとアレだけど、2回目だから衝撃はそこまでじゃないかもしれない。
それに、母親がママだったり妹が人気Vtuberだったってよりもインパクトは薄い。
いや、十分衝撃的ではあるんだけど・・・。