40話 G
最近、僕には悩みがある。
親子コラボ以降、登録者数はうなぎ登りだ。
切り抜き動画も数多く出ていて、今も尚その数は増え続けている。
それ自体は喜ばしい事だけど・・・配信のコメント欄がぬいぐるみぃに対する質問で埋め尽くされる事態となってしまった。
「すみません。ぬいぐるみぃさんに関して僕から言える事は何もありません」
当然、この様な事態になるであろう事は事前に鏑木さんから言われていたので慌てる事は無かったけど。一々、相手もしていられないしコメントは流されてしまうしで良い事は一つも無い。
「申し訳有りません。配信と関係の無いコメントはしないようお願いします」
ここまで言えばこれまではコメントの流れも緩やかになって、配信に関係の無いコメントは減っていっていたけど今日は何故か更にヒートアップして暴言や荒らしも目立つ様になってきた。
「すみません。コメントに制限を掛けさせて頂きます」
※登録期間が5年以上のチャンネル登録者のみメッセージを送信出来ます。
「ぬいぐるみぃさんの事を知りたい方は僕では無くぬいぐるみぃさんのチャンネルをご覧下さい」
新規の人全てが悪では無い。
ぬいぐるみぃのファン・・・というよりも切り抜きやまとめサイトから来た僕の事はモチロン、ぬいぐるみぃの事も大して知らない層が原因なのも分かっている。
でも、これくらいしか僕には対処法が浮かばない。
「先日、@の祭りプロダクションさんから発表がありましたが。あまりに酷い暴言や荒らし行為に対して発信者情報開示請求を行うそうです」
鏑木さんから言われたのが、この事を告げる時はあまり言い過ぎない方が良いらしい。
あまりキツく言い過ぎると、それ自体が脅しと捉えられてしまうそうだ。法律って難しい。
「なので行き過ぎた発言には気を付けつつ配信をお楽しみ頂ければ。と、思います」
因みに、コメント制限を5年にしたのはちゃんと理由がある。
5年前はこのチャンネル自体存在していないから誰もコメントが出来無い。
あの3人だったり、他にも若干名居る前から僕のチャンネルを登録してくれてる人達がコメントしてしまうと厄介なヤツに目を付けられてしまう可能性があるから皆を守る為にもコメント出来無いようにした。
まぁ、その結果・・・。
過去の動画やアーカイブに丁寧に低評価の山が築かれ、まとめサイトでは盛大に炎上し、悪意ある切り抜きも大量に投下されてしまった。
「お力になれずすみません」
「いや、しょうがない事ですから」
様子を見兼ねて鏑木さんからディスコが飛んで来た。
「所属タレントであれば全力で全員ぶっ潰しに掛かるんですけど・・・」
「激しいな・・・」
「お兄さんは個人なんで弁護士の先生を紹介するくらいしか・・・」
「いやいや、いざとなったら紹介して下さい」
「あ、今からウチに入るとかどうですか?そしたらウチの法務部も動かせるんで」
「え?僕が@の祭りにですか?」
「はい!」
個人から大手事務所への移籍・・・夢のような話ではあるけど・・・。
「いや、それも何か違う気がするんで・・・」
「そうですか・・・みぃとの兄妹売りも面白いと思ったんですけど・・・」
「そこですよ、そこ。妹と一緒に配信とかやりたくないですっ」
「えー・・・」
「この間のコラボ以降、目も合わせなくなりましたよ。リアルで」
「そうなんですか?」
「ご飯の時も一言も喋らなくなりましたし」
「でも、相変わらず春夏冬中さんの配信は観てるみたいですけどね」
「え?マジですか」
「あ、ナイショでお願いします。バレたら怒られるんで」
「それは別に良いですけど・・・」
ここにもあったな・・・複雑怪奇な乙女心め・・・。
「今回みたいな炎上は・・・まぁ、ままある事なんで」
「傍から観てるとそうですよねー」
「そうですね。常にどっかしら燃えてますから。この業界」
「そんなんで良いんですか?V事務所のマネージャーさんが・・・」
「まぁ、事実ですから・・・どうしようも」
「確かに・・・」
「まぁ、それでですよ」
「はい」
「時間が経てば減っていきます」
「そりゃまぁ・・・」
「それでも残ったしぶといゴキみたいなヤツを細かく丁寧にブロックしていけば完全に鎮火します」
「時間も手間も掛かりますねぇ・・・」
「そこはしょうがないです!」
「ですかぁ・・・」
「こちらからも声明は出すので。それで、一旦様子見という感じで」
「はい。ありがとうございます」
「1匹見たら50匹は居ると思って下さい」
「それはどっちの話ですかっ」
「Gもアンチもどっちもです!」
「わ、分かりました・・・気を付けます・・・」
「では、失礼します」
「はい。ありがとうございました」
さて・・・どうなる事やら・・・。