38話 きしん なのか きじん なのか
「座って」
「「はい・・・」」
「は?誰が椅子に座って良いって言った?」
「「はい・・・すみません・・・」」
鬼の形相というには生ぬるい。怒り狂った鬼神の様な形相で僕の妹が仁王立ちをキメている。
何がどうしてこうなったかと言うと・・・。
鏑木さんがディスコから去った後。母親と2人でケーキとコーヒーで今回の打ち上げと打ち合わせをしていた。
ケーキを食べ終え、残りのコーヒーを呷った。
ちょうどそんなタイミングで2階の部屋が音を立てて開かれ。ドスドスと怒りに満ちた音と共に階段を下りてきてリビングの扉が力任せに開かれた。
そして、今に至る。と、いった感じだ。
「主犯はどっちっ!?」
「「鏑木さん」」
「アイツかー!」
これが打ち合わせの結果だ。
とにかく平謝りして全部鏑木さんの所為にしてしまおう。
それが僕とお母さんの出した結論。なんて親子だ・・・。
バタン───。
めるとは先程の逆回しの要領で2階へと駆け上がっていった。
「どうなるかな?」
「まぁ、タレントを宥めるのもマネちゃんの仕事でしょ」
「それもそう・・・なのかな?」
「まっ、私もフォローしとくから望は心配しなくて良いよ」
「うん。それじゃ、ごちそうさま」
「はーい」
それから僕はめるとに見つからない様に気配を殺しつつ部屋へと帰った。
春夏冬中 (@ataru_akinai)
事後報告になりますが、ぬいぐるみぃさんと石倉先生との親子コラボにサプライズ出演させて頂きました。
URLを貼っておくのでアーカイブチェックして貰えたら嬉しいです。
「これで、よし・・・っと」
エッキスに投稿して、スマホをベッドに放り投げ、自分もベッドに倒れ込もうと思ったが目を疑う様なモノを視界の端に捉え硬直した。
「え・・・?」
これまではフォロワーの数なんて2桁だったが今見ると1.2万フォロワーという謎な表記になっていた。
そして、固定コメントの返信欄にはスクロールしてもスクロールしてもまだまだコメントがあった。
「お義兄さん妹さんを僕に下さい」
「みぃちゃんを紹介して」
といったコメントが多数。
「石倉ママは俺のだ!」
というちょっと意味の分からないコメントまであったが・・・これは見なかった事にしよう。
まぁ、僕に関するコメントは無く、ほぼほぼみぃに関してだったけど自分のエッキスがここまで賑わったのは初めてだったから嬉しくて涙が出そうになった。
そして、ダイレクトメールは開放しているけど活動者から以外は返信出来ないと注意書きしているにも関わらず大量のDMも送られてきている。
軽く流し見をしたがどれもみぃ関連のDMっぽい。
と、思ったら・・・Vtuberの元祖とも言うべきVtuber三銃士の1人、兎合シュウさんからDMが届いていた。
「いやいや、まぁ、名前だけなら誰でも同じ名前付けれるし・・・」
しかし、名前からホームに飛ぶと・・・。
「本物じゃん・・・」
DMの内容はというと。
以前から配信は視聴していたのに挨拶が遅くなって申し訳無い。
親子3人コラボの成功おめでとう。
私ともコラボしない?
クソ長文だったけど要約すると3行で済んだ。
「僕が兎合シュウとコラボ・・・?マジ?」
善は急げというし、悩んでる間にスケジュールが埋まってしまう可能性だってある。
このチャンスを逃すまい。と、即座に返信した。
後からそのDMを見返すと文章も無茶苦茶で誤字だらけだったけど、本当にテンパってたんだからそれも仕方ない。
何度かDMのやり取りをした後にディスコに招待された。
「お誘いありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそ快く引き受けて頂けて嬉しいです」
「でも、本当に僕なんかで良いんですか?」
「ずっとね?」
「はい」
「だいぶ前からあきなちゅとコラボしたかったの」
「え?そうなんですか?」
「あ、今更だけどあきなちゅって呼んでも良い?」
「全然、呼んで下さい!」
「私の事もシュウちゃんって呼んでね」
「ちゃんは流石にちょっと・・・」
「えー」
「シュウさんじゃダメですか?」
「皆と同じだから面白く無いなぁ・・・でも、今の所はそれで良いよー」
「ちょっと思ってたんですけど」
「うん?」
「前から僕の配信観てくれてたって書いてありましたけど」
「観てたよー」
「あきなちゅって呼び方知ってるって事は本当に観て貰えてたって事ですか?」
「疑ってた?」
「社交辞令かと。親子コラボでバズったからこのお話を頂けたのかと思ってました」
「配信では言えない事だからここで言うね」
「はい」
「T-中って私なの」
「え?」
「ビックリした?」
「冗談じゃなく?」
「うん。冗談じゃなく」
「ウソじゃなく?」
「うん。ウソじゃないよ」
マジかよ!!!!!!
と、叫んでしまったけど・・・ここが防音室の中で良かった・・・。
自分的には きしん です(`・ω・´)