表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/108

37話 爆弾

「おおーっと、みぃがあたるくんの部屋に凸したみたいですねー」


と、兄も妹も配信者としてかなりの窮地に追い込まれているはずなのに母親はケラケラと笑っている。


「お?ちゃんとミュートになってますね」


と、呑気な声がヘッドフォンから聞こえてくる。


「めると・・・落ち着けっ」

「え?のぞむがあきなちゅ・・・?どういう事・・・?」

「僕が春夏冬中なんだよ。分かる?分かる、な?」

「分かる・・・」

「とりあえず配信中だからお前も部屋に戻れ」

「え、あ、うん・・・分かった・・・」


まだ全然冷静では無いのは一目瞭然だけど、とりあえず部屋に戻らせた。


「す、すみません。ちょっと事故りました」

「いやぁ、リスナーさんは大喜びみたいだよ?」

「だろうねっ」

「どうだった?」

「なにが?」

「みぃの様子」

「あー・・・とりあえず部屋に戻らせたけど、どうだろ・・・」

「フリーズしてるみたいだねー」

「さて・・・チャンネル主不在のまま配信を続けさせて頂きますが」

「お?進行する?」

「石倉先生がしてくれないから僕がするしか無いじゃないですか」

「台本だと、それ私のセリフだったもんね」

「台本とか言わなくていいからっ」

「はいはい。それじゃ、進行よろしくー」


で、結局、自分でやらないのかよ・・・。


「みぃがフリーズして使い物にならなくなるのは想定通りですが。いつ戻ると思いますか?」


コメント欄に目をやり、適当に気になったコメントをピックアップしていく。


「ふんふん。配信中は戻らない。家を飛び出してる。探さないで下さい。って、家出してるコメが多いですねぇ」

「あたるくん。一応、見て来て」

「え?今?」

「うん」

「石倉先生にこの場を任せる方が怖いんですけど・・・」

「だいじょーぶだいじょーぶ」

「う、うん・・・では、ちょっと離席します」



コンコン───。


「入るぞー?」


へんじがない。ただのしかばねのようだ。


ガチャ───。


「うおっ・・・」


後ろ姿でも分かる精気の無さ・・・。

そして、効果音を付けるとするならばギリギリギリだろうか。実際は無音だけどギリギリギリと首だけでこちらへ振り返った。

かなりホラーだ・・・。


「だ、大丈夫か・・・?」

「うん・・・」

「まだ配信続いてるけどマイクは?」

「うん・・・」


ダメだ・・・。


「ちょっと防音室入るぞ」

「うん・・・」


2畳のタイプだろうか?かなり大きくて、体感としては部屋の半分を占めている。

その防音室に入りマイクをミュートにした。


「と、とりあえず・・・座ったら?」

「うん・・・」


返事はあるけど全然反応が無い。

なので、肩に手を添えてベッドに誘導して腰掛けさせた。


「落ち着くまでゆっくりしとけ」

「うん・・・」

「それじゃ、行くけど。何かあったら言いに来いよ?」

「うん・・・」


そして、めるとの部屋を後にした。


「戻りました」

「おかえりー。どうだった?」

「完全にフリーズしてたから向こうのマイクはミュートにしてきた」

「お、良い仕事するねー」

「コメ欄ではブーイングが飛び交ってるけどね」

「あ、そっか。事故った方が面白いか」

「十分、事故ってるから・・・」

「それもそっか」

「それでは気を取り直して。チャンネル主不在のまま進行させて頂きます!」

「はーい」



それから台本通りに進め、予想通りぬいぐるみぃが戻る事無く配信を終了した。


「お疲れ様でした」

「お疲れ様ー」

「お疲れ様でした。あんな感じで大丈夫でしたか?」

「はい。全然okです!」

「良かった・・・」

「緊張した?」

「そりゃするだろっ」


配信前の待機中ですら4万人以上居て、配信が始まると同時にどんどん視聴者も増えエッキスのトレンドでも1位になって同接で20万人を超える配信になったんだから。


「みぃがお兄さんの部屋に行った時は焦りましたが・・・」

「あれは僕もビックリしました」

「あれ以外はほぼ想定通りの進行でした」

「僕的には石倉先生の方が怖かったですけどね」

「なんでよー」

「あー、でも。石倉先生がお兄さんをみぃの部屋に行かせてくれたのは助かりました」

「ミュートした時ですね」

「こちら側からもミュートには出来るんですが、みぃの様子が一切分からなかったので」

「様子見に行った方が良い?」

「別に良いんじゃない?我に返ったら自分で文句言いに行くでしょ」

「怖ぇ・・・」

「ガチ恋の推しがお兄さんだったと知ったんですからね」

「「え?」」

「え?先生もご存知なかったんですか?」

「知らな・・・ぷっ・・・あっはっはっはっは」

「マジですか?」

「あー・・・要らない事言っちゃったみたいですね・・・では、作業が残ってますので私はこれでっ」

「あ、ちょ、鏑木さんっ」



どエラい爆弾を投下して鏑木さんは逃げる様に去って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ