26話 割引
予てから悩んでいた事。
そして、防音室や諸々の絡みでちょっと先延ばしにはなってしまっていた・・・。
「石倉先生にご相談があるのですが・・・」
「ん?なぁに?」
「新衣装の依頼をする場合、身内割引みたいなものはあったりしませんか・・・?」
「新衣装作るの?」
「時間掛かるからそろそろ動き出したいなー。って、思ってて」
「んー、まず」
「うん」
「身内割引って言うなら石倉先生じゃなくて、ママって呼ばないとじゃない?」
「呼んだら割引あり?」
「いやいや、まずそこがスタートラインでしょ」
「スタートラインかー」
「ほれほれ、マーマ」
「石倉ママお願いします」
「他人行儀だなー」
「くっ・・・ママお願いします」
「これから配信観ても文句言わない?」
「それとこれとは、話が違っ・・・」
「じゃー、この話は無かった事に」
「観ても良いよ・・・」
「やったー」
「でも、コメントはしないで欲しい」
「んー、なるべく控える」
この辺りが落とし所なんだろうか・・・。
「おk」
「お?意外と早く折れたね」
「いや、でも!!」
「うん?」
「いくらになるかによるっ!」
「そうだねー、親子だからって無料って訳にはいかないし」
「そりゃね」
「半額でどう?」
「マジ?良いの?」
「うん、その代わり」
「え?なに?怖いんだけど・・・」
「1つお願いを聞いて欲しいかな」
「なに?マジで怖いんだけど・・・」
「まだナイショ」
「ずるくない?」
「いやぁ、まだまだ先の話だし?お願いするかどうかも未定だから」
「ふーん・・・まだ固まってない話って事か」
「そそ。だから、なんでも言う事を1つ聞く権って感じ?」
「マジで嫌な事だったら断るよ?」
「いいよ。そこまで無茶な事は言わないし、望にもメリットはある話だから」
「メリットって言われても怖さしか無い」
「はっはっは、震えて眠れ」
「マジ勘弁」
「んじゃ、デザインの方向性とか希望送っといて」
「分かった」
「見積もりはそれからね」
「うん」
「毎度ありがとうございまぁす」
「スケジュール的には大丈夫そう?」
「ま、なんとかなるんじゃない?」
「楽しみにしときます」
「ういうい」
半額といえども安くは無い。
更にはLive2Dの依頼料も含めると考えたくなくなる金額になる・・・。
とは言え!半額になったら結構な金額が浮く。
正直、家族とは言え10%とか20%引いて貰えれば御の字だと思っていた。
まぁ、その分・・・何をやらされるのか本当に怖い。
あぁ・・・本当に頭が痛い。
みぃはヘソを曲げるし、石倉先生からはアドバイスを貰えないし・・・。
実母なんだからもうちょっとみぃのあやし方を知ってるはずなのに。
ただでさえ私が担当するタレントぬいぐるみぃは厄介で仕方が無い。
ウチの事務所が抱えるタレントの中でもトップクラスの人気を誇りあちらこちらから引っ張りだこでスケジュール調整に忙しい。
しかも、それが現役の中学生で週間の労働時間の調整や未成年ならではの諸々もさることながら・・・見た目は女児だけど中身はおじさん。という体のVtuber。然してその実態は本当に中身も女児。
この事実は事務所内でも最重要機密事項で他のタレントさんは誰1人として知らない。
運営スタッフでさえほとんどの人が知らされていない。
そう、スタッフもタレントもほとんどがみぃの事をおじさんだと認識している。
いずれカミングアウトする予定ではあるがまだまだ先の話で当分は隠し続けなければならない。
たまにワガママな時もあるけど、中学生の女の子と考えればそんなものはワガママのウチに入らない程度のしっかりした良い子だ。
でも、そのしっかりした部分・・・口も達者で私では簡単に言い負かされたりするのも厄介だったりする。
ピロンピロン───。
そんな事を考えているとほぼ同時にみぃと石倉先生からにメッセージが飛んできた。
また厄介事が・・・と思ったが・・・うん、これは面白いかもしれない・・・。