15話 BOY MEETS GIRL
今日は土曜日で学校も休みなので朝からコンビニバイトに勤しんでいる。
バイト中に失踪したタメ口やる気ナシ男の後にバイトに入って来た人はコンビニバイトの経験もあるフリーターで大して教える事も無くて平穏なバイト時間を過ごしていた。
「すいません」
「はい」
「えっと・・・Vtuberのウエハースの・・・」
「あー、はい、そちらにまだ在庫があったかと」
「あ、いや、店頭の分だけじゃなくてまだ在庫ってありますか?」
「あー、どうだろ。ちょっと見て来るんで少々お待ち下さい」
「はい、すいません」
Vtuberとコンビニがコラボしたお菓子でビックリしたマンチョコのVtuberバージョンだ。
在庫を見に行く途中で店頭分も見たがまだ結構な数が残っていた。
あれじゃ足りないくらい買うって事?確か1個150円くらいしてたから恐ろしい金額になりそうな気が・・・。若そうな女の子だったけどやっぱりVtuberって人気なんだな。
「20個入りの未開封が3つありましたけどどうされますか?」
「全部買っても大丈夫ですか?」
「あ、はい。制限は無いんで大丈夫ですよ」
「それじゃあ、店頭の分とその未開封の3つもお願いします」
「はい、ありがとうございます」
マジか・・・。
「1万1550円になります」
「はい」
「って、あれ?もしかして伊達さん?」
「えっ?石神君???」
ウエハース爆買い少女の正体はクラスメイトの伊達さんだった。
「伊達さんってVtuber好きなんだ?」
「え、あ、うん、最近ちょっとね」
「そうなんだ」
「うん・・・」
「450円のお返しになります」
「あ、はい、ありがと」
伊達さんは大人しそうな雰囲気で休み時間はいつも本を読んでいる。
偏見だけど、スマホじゃなく紙の本をいつも読んでいるからもっと真面目な趣味というかお嬢様っぽい趣味なんだろうと勝手に思っていた。
「そ、それじゃまた学校で」
「うん。って伊達さん!」
「!?」
「忘れてる忘れてる」
「え?あっ、ごめん」
爆買いしてる所を同級生に見られてテンパったのか買った物を忘れて帰ろうとしていた。
そして、Vtuber好きという同じ趣味なのを知って妙に親近感を覚えた。
「「ありがとうございましたー」」
「!?」
「知り合い?」
「いつから居たんですか?店長」
「石神君が裏に在庫見に行った時から?」
「戻った時居なかったのに・・・」
「なんとなく隠れちゃった」
「なんでっ」
「なんとなく。で、知り合い?」
「クラスメイトですよ」
「青春って感じ?」
「普通のクラスメイトですよ。挨拶はするけど別に親しくはない感じです」
「ふ~~~~ん」
「発注済んだんですか?」
「終わってるよー」
「くっ・・・」
「そろそろ休憩行って来ていいよ」
「あ、はい。それじゃ、休憩頂きます」
「はーい」
まさかまさかまさか・・・わざわざ学校からも家からも離れてるコンビニに買いに行ったのに・・・なんで石神君がっ・・・。
事務所の近くのコンビニが全部売り切れてたから・・・。
私、伊達ごっこが所属する事務所ケモライブがコンビニとコラボしたお菓子の開封配信をしようと思って大量に買わないといけなかったんだけど・・・あんなに買ったらVtuberオタクだって思われちゃう・・・。
いや、まぁ・・・VtuberだしVtuberオタクなんだけど・・・。
よし!!切り替えて・・・開封配信だからカメラの準備もしないとだし、掃除もして片付けもして絶対に事故だけはしないように気をつけて・・・。
「それじゃあ開封配信やってくねー」
カメラの画角は・・・大丈夫。
「カメラつけるねー」
長袖も大丈夫、手袋も大丈夫。
「見えてるー?」
保険としてマスクとサングラスもしたから大丈夫。
「何件も探し回って大変だったんだよー?」
クラスメイトにも見られたし・・・。
「それで、70個くらい買えたから開けていくねー」
1万5000円も使って買い占めて・・・何て思われただろ・・・。
次から次へとお菓子の袋を開けていき、中に入ったカードをカメラに映していく。
「おぉーーーーーーいたち出たよーーーーーーー。いたちのキラキラ!サイン入り!!」
やっとSRが出た・・・Rはちょっと出たけど、UCばっかりで全然盛り上がらなかったから助かった・・・。
「これはちゃんとスリーブに入れて大事にしないとっ」
これで配信が成立しなかったら石神君に文句の1つも言いたくなってたかも・・・。
完全に八つ当たりだけど。